都合のいいマシーン

博士 「吉川くん! 空前絶後世紀の珍発明じゃ!」


吉川 「はぁ……」


博士 「ズコ~! テンション低っ!」


吉川 「博士が無駄に空回りしすぎなんですよ」


博士 「なに? 今日あの日?」


吉川 「なんでそういう迂闊なことを言うかな」


博士 「父の七回忌?」


吉川 「そんなわけないだろ。不謹慎だ」


博士 「わしの」


吉川 「知るかよ! なんであんたのお父さんの七回忌に俺が振り回されなきゃいけないんだ」


博士 「まぁ、七回忌のことはおいおいと言うことで」


吉川 「いいのか、おいおいにして」


博士 「そう言ってられるのも今のうちじゃ!」


吉川 「まだ何も言ってない」


博士 「すごいもん発明しちゃった」


吉川 「博士が自信を持っているときほど、はた迷惑なことは無い」


博士 「吉川くん、人は好き嫌いがあるよねぇ……」


吉川 「まぁ、ありますね」


博士 「なんと、好き嫌いが治るという都合のいいマシーン。略して都合のいいマシーンじゃ!」


吉川 「大事な部分略しちゃってるな」


博士 「吉川くん。好き嫌いというのはどういうメカニズムで起こるかわかるか?」


吉川 「そりゃ、嫌いなもんは嫌いだし……」


博士 「シャーラップ!」


吉川 「自分で聞いておいて」


博士 「好き嫌いは、脳が物を認識した時に、過去の記憶と照らし合わされて嫌な記憶を持つものにとって嫌いな反応がでるのじゃ」


吉川 「なんか、それっぽいな」


博士 「だから、その過去の記憶を参照する部分でちょっとした可愛いいたずらを仕掛けてやる」


吉川 「言い方を可愛くしてもやってることは結構すごいな」


博士 「例えば、吉川くんゴキブリ好き?」


吉川 「好きなわけないじゃないですか」


博士 「まぁ、彼は結構嫌われ者じゃからな」


吉川 「博士と通じるところがありますね」


博士 「まぁ、面白くない低脳な冗談はさておき」


吉川 「クッ……。ムカツク」


博士 「このマシーンを飲んでみろ」


吉川 「えっ!? これ飲むの!?」


博士 「飲むのが嫌だったら被るんでもいいけど」


吉川 「なんでそんなところがフレキシブルに対応してるんだ」


博士 「そして、吉川くんの好きな……例えばワシとかを思い浮かべる」


吉川 「絶対に思い浮かべません」


博士 「なに思い浮かべた?」


吉川 「ブナシメジ」


博士 「微妙な好物じゃな。まぁいい。そして目の前にゴキブリをゴキブる!」


吉川 「そんな動詞ない!」


博士 「どうじゃ!」


吉川 「あ! ブナシメジだ!」


博士 「成功じゃ!」


吉川 「わぁ! このブナシメジったら、足が生えてて高速でカサカサと移動するぞぉ! お~いしそ~♪ ってなるかー!」


博士 「わぁ! 乗りツッコミ」


吉川 「ブナシメジに見えたけど、動いてるじゃないか!」


博士 「そういう諸般の事情はゴキブリの方にいいたまえ」


吉川 「あやうくブナシメジの魔力に惑わされるところだった」


博士 「もうちょっとでゴキブリをくわえる吉川くんのお宝ショットが拝めたのに」


吉川 「どっちみち生では食べない」


博士 「しかしどうじゃ? これさえ使えばゴーヤだろうが、ゴキブリだろうが、セロリだろうが、ゴキブリだろうが、ゴキブリだろうが、お手軽に食べられる」


吉川 「ゴキブリの占める割合多いだろ」


博士 「なんと、味も美味しいと判断させる機能つき」


吉川 「へぇ。まぁ、好き嫌いを無くすのはいいことかもしれませんね」


博士 「でしょ? ビックリした? ビックリして耳が大きくなった?」


吉川 「ならないですよ! なんでそんな小ネタ用意してないといけないんだ」


博士 「さぁ、吉川くん。なんでも嫌いなものを言いたまえ」


吉川 「えー、でも急に言われても……」


博士 「大丈夫。このマシーンさえあれば全て解決する!」


吉川 「しいていえば……変な発明の実験台にされるのが嫌いなんですけど」


博士 「……という、都合のいいマシーンは置いといて。吉川くん! 新発明の……ブナシメジじゃ!」


吉川 「わぁい! ブナシメジだぁ!」


博士 「ふぅ……実験成功」



暗転

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