狙撃
吉川 「グワッ!」
藤村 「吉川さん? どうしたんですかっ!?」
吉川 「どうやら……狙撃されたみたいだ」
藤村 「そんな! やろう……」
吉川 「待て! 下手に動けば相手の思うつぼだ」
藤村 「なんてこった」
吉川 「俺はもうダメだ」
藤村 「なに言ってるんですか!?」
吉川 「いや、こういうのは自分でわかるんだ。だって超痛いもん」
藤村 「超痛いって言われると、なんかあんまり痛そうに思えないんですが」
吉川 「実は、最期にお前に渡そうと思ってたものがあるんだ」
藤村 「最期なんて! そんなこと言わないで下さいよ!」
吉川 「これだ」
藤村 「こ、これは?」
吉川 「ヘソの緒だ」
藤村 「へ……」
吉川 「こんなもんしかあげられなくてすまんな」
藤村 「いや、本当にこんなものいらないんですけど」
吉川 「このヘソの緒を見るたびに俺のことを思い出してくれ」
藤村 「えー。常に携帯しなきゃいけないの? やだよぉ」
吉川 「あと実は……お前に打ち明けなきゃいけないことがある」
藤村 「なんすか?」
吉川 「お前の母親、行方不明だったな」
藤村 「えぇ。……まさかっ!? 知ってるんですか?」
吉川 「いままで黙っていてすまん」
藤村 「教えてください! 母は? 母は今どこに!?」
吉川 「……」
藤村 「吉川さんっ!」
吉川 「……大きくなったわね」
藤村 「え」
吉川 「……母さんよ」
藤村 「いや、全然違います。ヒゲボーボーじゃないですか!」
吉川 「うんと甘えていいのよ」
藤村 「そんなのこっちからお断りですよ!」
吉川 「ダメか?」
藤村 「ダメに決まってるじゃないですか! ちょっとでもいいと思ったんですか?」
吉川 「こんな状況だから、どさくさにまぎれて何とかなるかと……」
藤村 「いくらドサクサでもそこまで判断は鈍らない!」
吉川 「ぐわぁっ!」
藤村 「吉川さん!」
吉川 「どうやら二発目も貰っちまったようだ」
藤村 「やろうっ!」
吉川 「せめてどこから狙ってるのかわかれば……」
藤村 「ちくしょう! どこから狙ってやがるんだ!」
吉川 「俺はもうダメだ。超痛すぎる」
藤村 「超て……傷は? 傷を見せてください」
吉川 「傷は……ない」
藤村 「え?」
吉川 「超痛いだけだ」
藤村 「どういうことですか?」
吉川 「飛んできたんだよ。痛いのが」
藤村 「言ってることがわけわかりません!」
吉川 「だから狙撃されたんだよ。痛いの痛いの飛んでけ~! て」
藤村 「……」
吉川 「せめて相手がわかれば飛ばし返せるのに」
藤村 「じゃ、俺先にいってますんで」
吉川 「藤村! 待ってくれ! 置いてかないで!」
藤村 「あと、この気持ち悪いヘソの緒返します」
吉川 「気持ち悪くないぞ! カピカピだけど気持ち悪くないぞ!」
藤村 「それじゃ」
吉川 「藤村ーっ! 痛いの痛いの飛んでけ~!」
藤村 「ちょ……超痛い!」
吉川 「だろ?」
暗転
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