決闘

吉川 「いいか? お互いに背を向けて三歩歩いたところで振り返って……パンだ」


藤村 「わかった」


吉川 「覚悟はいいか」


藤村 「いつでもOKだ」


吉川 「1」


藤村 「2」


吉川 「3」


銃声 「パン!」


吉川 「……」


藤村 「……お前の……勝ちだ……ゲフッ」


吉川 「フッ……」


藤村 「……」


吉川 「……」


藤村 「っという感じでやるわけね?」


吉川 「そうそう。わかった?」


藤村 「わかったわかった」


吉川 「覚悟はいいか?」


藤村 「いつでもOKだ」


吉川 「1」


藤村 「2」


吉川 「3」


銃声 「パン!」


吉川 「……」


藤村 「……お前の……勝ちだ……よく父を超えたな……ゲフッ」


吉川 「と~ぅさ~ん!」


藤村 「……」


吉川 「……」


藤村 「っていうのどう?」


吉川 「どうじゃないよ! なんでいきなり父親気取りなんだ」


藤村 「自分だってのったくせに」


吉川 「余計なドラマいらないから。サラッといこうよ」


藤村 「わかったわかった」


吉川 「覚悟はいいか?」


藤村 「だいぶいいぞ」


吉川 「1」


藤村 「2」


吉川 「3」


銃声 「パン!」


吉川 「……」


藤村 「……お前の……勝ちだ……最期に辞世の句を……夕焼けが……夕焼けが……」


吉川 「……」


藤村 「ちょっと待ってね。今考え中だから。夕焼けが……負けたわが身を……いや、死にゆく我が……え~と」


吉川 「早くしろっ! いいよもう。辞世は」


藤村 「もうちょっと! いいの思いつくから」


吉川 「とっとと死んでくれよ」


藤村 「夕焼けが、消えるわが身を、赤く染め……ゲフッ」


吉川 「……」


藤村 「ってのはどうだろう?」


吉川 「長い! 今、辞世を考えるな」


藤村 「夕焼けが消えるってのと、血の赤と夕焼けをね、かけてみたの」


吉川 「それはいいから。サラッと死のうよ」


藤村 「なんで俺ばっかり死んでるんだよ。俺が勝つかもしれないじゃん」


吉川 「そうだけどさ」


藤村 「俺だって本気でやらせてもらうからな」


吉川 「わかったよ。覚悟はいい?」


藤村 「いい湯加減だ」


吉川 「1」


藤村 「2」


吉川 「3」


銃声 「パン!」


藤村 「バリアッ!」


吉川 「……」


藤村 「弾いた」


吉川 「いやいやいや、いくらなんでもバリアは……」


藤村 「すごい早くバリア張った」


吉川 「どこから出したんだよ」


藤村 「なんか……こう、空気中の成分を分子レベルで変換して」


吉川 「ない! お前にそんな特殊能力はない」


藤村 「あ、そういえばなかった」


吉川 「なんで今気がついたみたいな感じになってるんだよ。普通ないだろ」


藤村 「ないねぇ……願望だった」


吉川 「いいから。普通にやろう」


藤村 「本当にやるの?」


吉川 「うん。今度は本番」


藤村 「まじで?」


吉川 「本気で行くからね」


藤村 「う、うん……」


吉川 「覚悟はいい?」


藤村 「いや、ちょっと待って。本当に本番?」


吉川 「うん。いい?」


藤村 「うん……俺も本気だすよ?」


吉川 「いいけど、バリアないからね?」


藤村 「気をつける……」


吉川 「いくよ?」


藤村 「あぁ……」


吉川 「1」


藤村 「2」


吉川 「3」


銃声 「パン」


藤村 「……やっぱり……お前が……勝ったね……ゲフッ」


吉川 「藤村……」


藤村 「……」


吉川 「……」



暗転



藤村 「って感じで……」


吉川 「パン! パンパンパン! パン! パン!」


藤村 「……」



暗転

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