浅野の場合-18-
浅野の話の後、喫茶店の中は静寂に包まれた。四人は各々が様子を伺っているのであろう。言葉が出ない理由は明確であった。それは、全員の頭の中に一つの考えと言葉が浮かび、脳内を支配しては発言することを遮っているのだ。
――もしかしたら本当に上手くいくかもしれない
その考えが四人に共通して浮かび、また他の者も自身と同じことを考えていることが解っていた。そして、
――セカイを壊す
浅野が言った、この言葉も全員の心に甘く響いていたのである。
「ちょい待った!!」
耐え切ることの出来ない沈黙を破ったのは白井であった。
「どうしたのですか?」
沈黙の後に破裂するような大きな声だったので、皆が驚いた。そして、その言葉は浅野に向かって言われたので、彼は問い返す。
「お前の言いたい事はなんとなーく解った。けどな、その話は一旦置こうや」
そう言って、白井は両手で箱を退かすようなジェスチャーをした。
「はい、置きましょう」
浅野は微笑みながら白井と同様の動きをする。
「ホンマに今更やねんけど、俺等はお前以外初対面やねんけど?」
「あぁ、なるほど!! 確かに白井さんの言うとおりです。私を含め、まだ自己紹介が済んでいませんでしたね」
浅野が両手を叩き明るく言った。乾いた音が響くと、それを合図のように空気が変わる。そして、
「では、沢田君」
「は、はい!!」
浅野に急に名前を呼ばれて、沢田は驚いて姿勢を正した。
「君から自己紹介お願いします」
浅野がにっこりと微笑む。そして、遅すぎる自己紹介が始まった。
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