電話@過ぎ去りし時代の追憶(おもいで)

 現在いまの子には信じられないだろう…




 トゥルルルル、トゥルルルル。


 電子音が緊張を煽る。


 ドクン…ドクン…


 心音が受話器越しに届いてしまいそうだ。


 ガチャ。


 繋がった!

 俺は緊張しながら口を開いた。


「も、もしもし!わ、渡辺さんはご在宅でしょうか!?」


 声は裏返っていた。

 誰か聞いても裏声とわかるその声に対し、受話器の向こう側の人物が応えた。


「そう言われても。うちは家族全員渡辺ですけど?」


「あっ!す、すみません!む、娘さんは!あいや、お嬢はご在宅でしょうか!?」


 何度も練習して場合の対策も練っていたがそう上手く出来るものではなかった。

 架け直すしかない。

 と、思っていた矢先…


「…あはは、娘さんって。しかもその言い替えがお嬢さまって。緊張し過ぎじゃない?」


 受話器の向こうから聞こえてきたのは出来たばかりの俺の彼女の声だった。

 あの時代ころ男達俺達が彼女(の家)へ電話する時の緊張感は告白の緊張感にも匹敵していた。

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