卒業式@顔が赤くなる言葉

「今日、あなた達は旅立ちます」


 生徒代表の言葉よりも長い時間をかれている校長の話と共に式は終わり、俺達は順番に体育館から教室へと向かい始めた。

 朝は教室へ行き、教室から体育館へ移動してまた教室へと戻り、僅かな荷物を持って校庭へと向かい解散する。

 今日は中学最後の日。

 卒業とか別れとか言われても結局は同じ地域に住む奴らばかりで俺にはと来ない。

 現に明後日は仲間同士で遊ぶ予定になっている。


「…ちょっといい?」


 校庭へと向かう最中、不意に名前も知らない女子から声を掛けられた。三年間通っていてもまだ名前すら知らない奴らが何人もいる。この子もその一人だった。


「なに?」


「あの……」


 照れた様子に俺はときた。

 卒業式に告白されても困る…

 そんな事を考えていた時だった。


「チャック空いてるよ」


 俺は顔が赤くなるのを感じた。

 卒業証書を受け取った壇上でもチャックは開いていたらしい。


 なんで誰も教えてくれなかったんだよ!



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