謝罪・(第玖拾捌弾)
おはよー
うぉおおお!
紗枝どうした?何?その格好
今日は何んか大人っぽいじゃん
ノースリーブのシャツとか持ってたんだね
紗枝が襟の付いたシャツを1番上までボタン閉じてるとか
しかも黒のガウチョとか、路線転身したの?
これ、紺なんだなぁ
ぃあね、昨日の帰り際に敦子ちゃんだけデケぇ紙袋渡されてたじゃんかぁ
中身は帰ってから見てくれとか云われてたヤツだよ
キミとタケシくんが帰った後にさ、一緒に中身を見たんだよ
たぶん偲ちゃんから聞いてたんだろうな
敦子ちゃん昨日も制服だったしさ
偲ちゃんのお父さんのコトがトラウマで私服を一切着てねぇのを悪ぃと思ったんだろ
良い感じの洋服がいっぱい入っててさ
気に入らなかったら好みの洋服を買ってくれって手紙と一緒に商品券まで入っててよ
あ、紗枝はその商品券で自分の洋服も山口に買って貰ったんだ!
まぁ良いんじゃない?似合ってるし
紗枝、そー云う大人っぽいのもイケるんだね
髪を下ろしてるのも新鮮だしさ
やめろよ、そんなんじゃねーよ
この服は元々あたしが持ってたんだよ
中学ん時に買って貰ったんだけどよ、全然着てなかったのがあったんだよ
人聞きの悪ぃコト云うなよな
敦子ちゃんはさ、ずっと自分の私服を着たりしてなかったからさ、制服以外の服装で外を歩くのが小っ恥ずかしいんだってさ
で、いつもの格好のあたしとじゃ自分だけ浮いちゃってるみてぇに成りそうだとか云うから
今日の敦子ちゃんの服装に合いそうな服を探して着て来たんだよ
あー、なるほどね
その髪、中学ん時の紗枝を思い出すね
ちょっと俯くと髪の毛で目が見えないの
3年間ずっとクラスが別だったからさ、学校で紗枝を見掛けると目で追ったり眺めたりしてたんだよなぁ
あ、そう!だからさぁ、紗枝が放課後に図書室に通ってるって知った時は「ラッキー!」って思ったんだよ!
懐かしいなぁ
けどさ、卒業して別々の高校に進学したけど、こうやってまだ会ったり出来てるって、なんか良いよね
キミはさぁ、前髪が目に架かる程伸ばしたコト無ぇから分かんねぇかも知れねぇんだけどさ、髪の毛ん中からは見えてるんだぜ
だから顔を上げなくても図書室にキミが入って来たのとかキミが勉強してるフリをしながらノートにお絵描きをしてたのも見えてたぜ
けど、まさかキミがあたしの絵を描いてたとは思わなかったな
あん時の絵、まだ部屋に飾ってあって寝る時に敦子ちゃんと観ながら喋ったりしてるよ
敦子ちゃんもあの絵ぇ好きだって云ってたしな、あたしの宝物の1つだよ
照れる話だなぁ
けど、そんな風に誉められちゃうと恥ずかしいから外せとも云えないしなぁ
で、今日の山口はどんな服装で来るの?
やっぱり紗枝みたいな大人っぽい感じ?
大人っぽいって云うかさ、エロい感じだぜ
何着かあったんだけどな、今日が私服デビューだからって云って1番エロいのを選んでやったよ
今日の服装はキミも観るからな、キミにも敦子ちゃんの初の私服を観て貰うからには1番エロいヤツしかねぇだろって云ってさ
キミ、チューブトップって知ってるか?
あたし知らなくてさ、腹巻きかよ!とか云って笑ってたんだけどな
パッドみてぇのが2つ付いててさ、敦子ちゃんと2人して「あっ!」とか声出してよ、試しに敦子ちゃんに着せてみたんだよ
すんげーの!もぉマジですんげーの!
敦子ちゃんめっちゃセクシーなの
ほら、敦子ちゃんはボッ!キュッ!ボーン!じゃんかぁ?
腰のくびれのラインとか、マジで観てるだけでゾクゾクするぜ
しかもデコルテから二の腕までキミが彫ってるタトゥーじゃん?
流石に教会にはフリンジのカーディガンを羽織って出て行ったけどよ、ココに来る頃には蒸し暑くて肩ぁ出して来るんじゃねーかなぁ
マジで楽しみにしてろよ
下は結局何を履いてったんだっけな
昨日の夜から2人で散々迷ったんだよ
デニムのスカートだったかハワイっぽい長目の巻きスカートのどっちかだったと思うんだけどな
それにしても偲ちゃんのお父さんも良いセンスしてるわ
どの服もお洒落で敦子ちゃんに似合ってるんだよ、偲ちゃんが選んだのかなぁ
いや、たぶんあのセンスは偲ちゃんではねぇな、お父さんのセンスだよ
大人の香りしかしねぇもんよ
そっか、楽しみにしてるよ
昨日偲さんのお父さんが山口に頭を下げたのを見てた時にも思ったんだけどね、その山口へのお詫びの洋服だとかもそうなんだけどさ
狂臣会の組長だとかヤクザだとか、そう云うの関係無く、ちゃんとお詫びの出来る大人の人って格好良いよね
格好良くない?
云い方悪いけどさ、相手がヤクザだったからって感じでこっちも「仕方ないね」って受け流す様な話でもあるじゃん?
けど、わざわざあんなご馳走を振る舞ってくれてさ、山口にはお土産まで持たせて、明確なお詫びだよね?
大人って、お詫びとか出来ないイメージだったからさ
たぶん俺の親父が口先だけで世間を渡り歩いてて反省も何もしてないのにその場しのぎに容易くすみませんすみませんって口にする職業だからそんなイメージなのかも知れないけどね
悪いと思ったらちゃんと反省して謝罪を形にして表せるのって、凄い格好良いと思ったんだよね
あーね、そーだな
偲ちゃんのお父さんは漢だよな
たぶんそー云う漢だからあれだけの組織のトップに立てたんだろ
この人にだったら着いて行きてぇって思えるだけの器量とか男気があるもんな
あぁ、偲ちゃんが云ってたヒトの上に立ちてぇと思ってるウチはヒトの上に立てる器じゃねぇみてぇな話、そー云うコトなんだろうな
後はさ、敦子ちゃんのコトぁ偲ちゃんが恩に着てるのとかもあんじゃね?
ほら、ウチ等2人も呼ばれてたワケじゃん?
偲ちゃんが恩人だってお父さんに話したメンツだったんじゃねぇのかなぁ
で、末永く仲良くしてやってくれって話でさ、それでタケシくんも該当して追加でお呼ばれした感じだと思うぜ
別にお父さんに頼まれなくったってあたしは偲ちゃんともずっと仲良くするツモリだけどな
そうだね、仲良くも何も、ご縁みたいのがあって一生繋がってるコトにはなりそうだよね
中学までの紗枝を思うとさ、紗枝はあの自由な校風が売りのあの高校に行って明るくなったよね、良かったんじゃないかなぁ
友達とかも全く作ってなかったもんね
学校に行っても誰とも喋らずに帰ってたんでしょ?
あの高校で仲間みたいのも出来たしさ
雛沢先輩や奈緒さんみたいに話し掛けて来てくれたり慕ってくれる様な人も居て、酒巻や加藤くんとか、あと山岸って人とかも学校で会えば話とかするんでしょ?
中学の頃とは全然良くなったよね
完全に殻に閉じ籠ってたもんね
確かに変わったかも知んねぇけどさ、ソレってキミの所為が大きい気がするぜ
キミがサッキーと仲良くなったりウチの高校に顔出す様になってなきゃあたしだって前の裏生徒会長に生徒手帳切られてもジュースとかシカトしてたと思うしな
あとは敦子ちゃんの存在がデケぇよな
敦子ちゃんが親友になってくれてなかったらたぶん相変わらずあたしは人付き合いとか毛嫌いしてたと思うぜ
あ、ほら、敦子ちゃんと親友になったのだってキミがキッカケじゃねぇか!
キミの所為だよ、所為って云うか、オカゲだな
そー云やさ、この前山ちゃんと会ってさ
会ったって云っても廊下で擦れ違い様にちょっと話し掛けられただけなんだけどな
「加藤、同じクラスだったよな?」って訊いて来てよ
ほら、山ちゃんも情報とか疎い方だからさ、たぶん撮影会の噂とかは耳にしてても内容とかに興味を持つタイプじゃねぇじゃん?
誰と誰が居ただとか気にもしてねぇんだと思うんだけどな
加藤が最近になって良いオーラを出し始めたとか云っててさ
山ちゃんは今までサッキーくれぇしか眼中に無ぇって云ってたのにさ、対抗馬現るって感じでさ
まぁ、自分やサッキーにはまだまだ及ばねぇけど加藤が本気ぃ出して来てるのは感じるみてぇなコト云ってたぜ
「撮影会で」とは云わなかったけどさ、偲ちゃんやキミと話してるって云ったら謎に凄ぇ納得してんの
山ちゃんはさ、自分から喰い付いて来てキミと会いてぇだとか話してみてぇだとか云う様なタイプじゃねぇけどさ、人知れず偲ちゃんやキミのコトは認めてるんだなってぇのは激しく伝わって来るぜ
お、今回は大分紗枝と山岸って人とで会話が成立してたっぽいじゃん
いつもチグハグで会話としては成立してないのにお互いには意思の疎通が出来てるって云ってた山岸くんだよね?
酒巻とも直接は会話したりしないんでしょ?
今回加藤くんがオーラを出して来てるって、何んで紗枝に云ったんだろうね
紗枝と加藤くんが同じクラスだからって別に紗枝から加藤くんの情報を聞き出したかったワケでもなさそうじゃん?
俺や偲さんの名前を出したら納得してたってソレ、たぶんなんだけどさ
その山岸って人には見えてるんだと思うんだよね
自分や酒巻のよりも大きな紗枝のオーラが
ぶぁはははは!やめろ!ぶぁはははは!
んなワケねーだろ!
あたしはそんなオーラ出してねーし!
他人のオーラすら見えもしねぇのによぉ
キミはたまにあたしをネタでジュースに担ぎ上げようとする様なコトぉ云うけどさ、ねーよ!絶対ぇねーから安心しろよ!
山ちゃんやサッキーよりもデケぇオーラとか、マジでウケるんだけど!
確かに学校じゃさ、今キミと話してるのとは全然違って「気安く話し掛けてくんな!」って感じでクールな顔はしてるぜ?
けど他人を威嚇したり、ましてやジュースとか、全然そんなんじゃねーよ
大人しくしてるぜ
あ!加藤くんと会ったって話まだしてなかったよね?
菜々美とスポーツ・センターのボクシング・ジムに行った時に加藤くんと会ったんだよ
俺の前で格好付けて隠し事しても仕方ないとか云ってさ、酒巻のトレーニングの様子を偵察に来たって云ってたよ
あ!いよいよキミもボクシングを始めるんだな
もう申し込んだの?週何回にした?
あ、悪ぃ、加藤の話だったな
加藤がサッキーの偵察にボクシング・ジムに来てたんだ
うん、ボクシング・ジムに行ったら加藤くんがジムの外からガラス越しに酒巻をじっと観ててさ、とりあえず俺は挨拶だけしてジムの人と話しに中に入ったんだけどね
その間は外で菜々美と少し喋ってたみたい
俺は火曜日と木曜日の週2回で基本的なトレーニングでってお願いしたんだけどね、前にジムで酒巻とやり合ったのとか見てて「本格的にボクシングやらないか?」って執拗に勧められたよ
ポテンシャルが高いとか体力作りだけだなんて勿体無いだとか散々おだてられたけどね、とりあえずは週2回で
そっかぁ、やっぱ週2回なんだぁ
ま、けどこれから増やしたりするコトだって出来んだろ?
で?その後加藤と喋ったの?
うん、しばらく喋ったね
色々と考えてるみたいでさ
入学した時はとにかくジュースを獲る為にと思って片っ端から人数を集めて大きなチームを作るコトだけを考えてたって
で、実際に学年で1番デカいチームになった頃にはメンバーなんて加藤くんの顔すら知らない様な連中まで混じってて
メンバーも学年で1番デカいチームに入ったからって満身してるだけでヘッドが誰だろうが構わないって連中の吹き溜まりになってたってさ
まぁ、そーだよな
そんな感じでデカいチームだから新しいメンバーが入って新しいメンバーが入るからチームがデカくなってって感じで雪ダルマ式に膨れ上がった感じはあるよな
加藤の顔すら知らねぇって云うのはオーバーだと思うけどよ、それでも学年で1番デケぇチームを作って伸し上がったってぇのは一応加藤の実績っちゃあ実績だよな
加藤くんさ、偲さんと話してて目が覚めたって云ってたよ
自分は学年の半分って云うメンバーの人数の上にあぐらをかいてふんぞり返ってただけだったってね
人の上に立つとか人を束ねるってコトはそれだけの人数のメンバーの一人一人が自分の名前の看板に誇りを持って掲げる様じゃなきゃダメなんだなって
メンバー全員が「俺は加藤のチームだ!」って胸を張って云える様なヘッドに成ってなきゃいけなかったんだなって云ってたよ
メンバー全員分のプライドとかを自分一人で背負い込むのがヘッドでありリーダーなんだって
山岸って人に助っ人を頼むとか、そんなみっともないコトを考えてる場合じゃないなって思い直したんだって
「俺はこの拳で酒巻を倒さなければならないんだ」って云ってたよ
マジだぁ!
加藤のヤツ、サッキーとタイマン張ろうって腹ぁ括ってんだぁ!
しかも勝つ気でいるんだな、凄ぇな
加藤、あの撮影会で覚醒したんだな
けど相手がサッキーじゃ勝つのは厳しいよなぁ
加藤くんはさ、36期生を束ねてジュースを獲れるかなんて分からないって云ってたけどね、最終的に卒業する時に自分に着いて来てくれた学年の半数のメンバー全員に「加藤の下に着いて良かった!」って云わせる様なヘッドに成るって決めたんだって
結果は実力に伴って出ちゃうモンだけど、やる前から負ける気で挑んでどうするんだって思ったって云ってたよ
撮影会の時に他校の俺でさえ加藤くんは酒巻に既に気持ちで負けちゃってるって見抜かれたくらいだから、同じ学年で、ましてや自分の下に着いて自分を見てる連中には見透かされてるんだろうなって思ったってさ
「気付かせてくれてありがとう」とか云っちゃってさ
今は酒巻を倒すコトだけを考えて全力で準備してるって云ってたよ
けどさぁ、ボクシング全国大会の優勝候補相手じゃ勝ち目が無ぇだろ
それでも本気でサッキーとタイマン張るツモリなのか?
一皮剥けて漢になって来てるのは分かるしさ、山ちゃんが云ってた「良いオーラ」ってぇのとも繋がるけどよ
キミから見て加藤がサッキーに勝てるって可能性ってある?どんなモン?
どうだろうね
皆無では無いと思うよ
加藤くんの観察力とか分析力ってやっぱり思った通り凄くてね、自分が目で見た動きは大抵同じコトが出来るって云ってたからね
あ、だからあの椅子に座ったまんま腕を折っちゃうの、酒巻の真似だったんだよ
ジムでね、酒巻の動きをじっと見てるんだけど速や過ぎて見えないんだって云ってた
普通は軸足を前に出して体重移動をしながら打ってくるパンチが右か左かで何発パンチが来るのか読めるんだって
右足を出して来ながら最初に右フックが来たら右、左、右ってワン・ツー・スリーで3発パンチが来るのを想定するらしいんだけどね、酒巻の場合パンチの手数が決まって1発多いって云ってたよ
しかも目では見えない速さで、ミットに当たるパンチの音の数を耳で聞いてると4発パパパパン!って鳴ってるんだって
そっかぁ、右とか左とか細けぇコトぁ分かんねぇけどさ、やっぱサッキーのスピードは桁違いでハンパ無ぇってコトだろ?
目で見えれば何んとかなりそうでも、目にも止まらねぇ速さじゃ為す術無ぇもんな
けど加藤の観察力とか分析力が凄ぇのも解ったよ
いや、それがさ、俺も冗談かと思って最初は笑っちゃったんだけどね
酒巻のあの連打攻撃を巧みに捌いてるのを見たコトがあったなって思い出したんだって
あの撮影会の待ち合わせの時の俺と酒巻の挨拶
「見てたでしょ?あんなデタラメな避け方してたら足が縺れて後ろにコケるのがオチだよ!」って云ったんだけどね
「攻撃は最大の防御ってコトだよな?」って
あれだけのパンチを避けながら何発かパンチを打ち返してる俺を見て、パンチを打ち返す程の余裕があるのか!ってビックリしてたらしいんだけどね
あのスピードで連続して4発もパンチを打ち込まれたら絶対に避け切れないけど、3発目の前か後にこっちから1発パンチを入れるコトで酒巻の4発目を封じ込めれるんだなって
正直、そんなコト考えてる余裕なんて無かったから加藤くんにも「そんなんじゃねーよ」って返事したんだけどね
俺のオカゲで酒巻の連打パンチは何んとかなりそうだってお礼されちゃってさ
あのよー
今までは冗談半分で云ってたんだけどな
キミさぁ、やっぱマジにボクシングやれよ
サッキーだって初めてキミと会ってタイマン張った後にやり方が分かんねぇだけで覚えれば強くなれるって云ってたんだろ?
キミさ、サッキーにジムで殴られた時もよぉ、あたしに何発パンチを避けて何発目のパンチを喰らったって、右とか左とかまでちゃんと正確に覚えてて話してくれたよなぁ?
サッキーに教わったのかキミが本能的に反応したのか知らねぇけどさ、加藤が云ってたみてぇに攻撃で防御するとか、そー云うのってセンスなんだろ?
ボクシング・ジムの人にも勧められたって云ってたけどよ、たぶんおだてとかじゃねぇよ
キミは絶対ぇボクシング向いてるぜ
いきなりサッキーみてぇに全国大会を目指せとか云わねぇからさ、とりあえずちょっとマジにボクシングやってみろよ
なぁ、おい、聞いてんのかよ
あれ?もっしぃ?
あ、ごめん
今中学の頃の紗枝を思い出しながら見取れてボーッとしてたわ、ゴメン
聞いてなかった
髪、下ろしてるのも良いね
で?なんだっけ?俺が酒巻にジムで殴られてどうのこうのって話してた?
ぶぁはは、ダメだこりゃ
良いよもう、真剣に話して損したわ
またそのうち話すかもな
けど加藤もキミにはそんな話までぶっちゃけて話すんだな
ところでキミと加藤がそんな話ぃしてる最中って菜々美ちゃんはどぉしてんの?
一緒に話に入って来たりしてんのか?
意味ぃ分かんなくて退屈だったんじゃね?
ああ、菜々美だけじゃないけど、俺も加藤くんも3人ともガラス越しに酒巻のトレーニングを見てたよ
スパークリングが始まったら菜々美も興奮して飛び跳ねながら見てたから、菜々美も楽しんでたと思うよ
そっか、なら良いんだけどよ
キミもボクシング強くなって菜々美ちゃんに飛び跳ねながら応援して貰えよな
いや、だから俺はスパークリングとかする程真剣にボクシングにのめり込む感じじゃないから
筋トレしたりサンドバッグを殴ったりする程度の運動で充分なんだ
うわぁ、キミ、照れ隠しとかで誤魔化したんじゃなくてマジでヒトの話ぃ聞いてなかったんだな!
ホント、時々キミの天然っぷりにはビックリするわ!
で、その日はサッキーとは会って話とかしなかったの?
ん?したよ
酒巻のトレーニングが終わってから4人でしばらくスポーツ・センターのロビーで話たけど、そこでは俺が週2回でボクシング・ジムに通うって話だけだったね
菜々美も着いて来て見学したいとか云ってて加藤くんも酒巻にまたちょくちょく見に来るとか普通に宣言してたよ
あ、山口が来たね
あ、ホントだ
って、オイーッ!!
な、何んでだよ!何んで敦子ちゃん制服で来てんだよ!!
朝あたしが家を出る時には確かに偲ちゃんのお父さんに貰ったセクシーな私服を着てタケシくんと出て行ったのによぉ!
なんだよ!敦子ちゃんひでぇよ!裏切りじゃんか
今日は敦子ちゃんに合わせて洋服を選んだのによぉ!
うん、気が変わって思い直したんじゃないの?もしくはタケシと相談して着替えに戻ったとかさ
ほら、上からカーディガンを着てても胸元のタトゥーは見えちゃうじゃん?
お袋さんの体裁とかも考えたらさ、俺がタケシの立場でも「教会にその格好はどうかと思うぞ」って云うと思うもん
そっかぁ、流石に教会にアレは無ぇかぁ
でもさ、教会からココに来る途中で家に寄って着替えて来ても良いじゃんか
だってあたしは敦子ちゃんに合わせてこんな格好して来たんだぜ?
ほら、山口、入って来たよ
文句は本人に直接云いなよ
ちなみに俺はその「こんな格好」も好きだけどね
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