第21話 チョイドはどこへ行く

「さてと、緑の珠は先生方のご命令通り確保しましたよ」

 そう言うとチョイドはニヤリと笑い、

「命令はこの珠を、ぺこりさまという、くまさんに渡さなければいいんだな。じゃあ、これを僕のものにしちゃってもいいんだ。そうだ。ついでに、舞踊先生と仲木戸先生が僕を監視しているレーダーと僕の自由を拘束している自爆装置を壊してっと、これで思い通りにやれるぞ! まずは、この緑の珠の美人さんを拝見しに日本の北岳というところへ行こう。ああ、ここは空気抵抗があるから、ワープではいけないな。じゃあ、ジェット噴射で飛んで行こう。フライアウェイ!」

 チョイドは『鉄腕アトム』みたいに空へと飛んで行った。


 アンダルシアの水沢舞踊の元に『悪の権化』の仲木戸科学技術庁長官から緊急電が入った。

『舞踊さん。チョイドがレーダーから消えました。最終地点はインド北西部です』

『うーん、ちょっとチョイドを精巧に作りすぎちゃったかな? バイオ3Dプリンターで作った人工脳細胞が思った以上に本物に近づいてしまったみたいですね。チョイドは強烈な自我を持ってしまったらしい』

『やはり、ハイスペックAIに留めておいた方が無難でしたな』

『そうかもしれないです。でも、それでは宇宙連邦にたやすく、アンドロイドだとわかってしまうでしょう』

『さて、どうしましょう?』

『それなんですが、いま工房の方で、人工脳細胞搭載アンドロイド二号を作成中です。今日、明日にはできるでしょう。そのアンドロイドには絶対服従機能をつけ、悪戯をしないよう制御しましょう。さらに、チョイドとの同期化をできるようにして、レーダー無しにチョイドの位置を把握できるようにします』

『相変わらず、素晴らしい能力だ。で、二号はなんと言う名前にしますか?』

『ぼくは名付けが苦手なんですよ。うーん。チョイドに似せて『マイド』にでもしましょうか?』

『ふふふ、チョイド・マイドですか。お笑いコンビみたいですね』

『だから、言ったでしょ。名付けは苦手なんですよ。もう、回線を切ります!』

 舞踊は少しムッとしたようだ。


 チョイドはインドから日本に向かって、戦闘機くらいの速さで、蛇行しながら遊ぶように飛んでいた。

「うーん。真空の宇宙を高速でワープするのもいいけど、地球の空気の中をゆっくり飛ぶのも、乙なもんだ」

 戦闘機並みのスピードもチョイドにはゆっくりと感じられるらしい。

 しかし、ゆっくりとはしていられないのは各国の空軍だ。突然レーダーに未確認の高速飛翔体が現れ、騒然となった。アメリア軍、中華軍、インド軍の戦闘機がスクランブル発射し、日本の自衛隊も戦闘機の発射準備に入った。

「あっ、いけねえ。虫けらどもに見つかっちゃった。あんなやつら、お腹に内蔵されている、チョイド・ボンバーで全滅させてやろうか……いや、余計な騒ぎを起こすのはよそう。海中に急降下して、やつらの目をくらまそうっと」

 そう言うと、チョイドは垂直に海へ突っ込んだ。各国の戦闘機は目標を見失い、右往左往している。

 その間に、チョイドは深海を超速で進み、あっという間に日本の新潟あたりに上陸し、そこからはのんびりと電車やバスを使って、日本アルプスに近づいた。お支払いは『悪の権化』が提携しているクレジットカードのリボ払いである。しかし、チョイドはあまりにも調子に乗り過ぎた。クレジットを使ったことで、自分の現在地が舞踊や仲木戸に知られることに気がつかなかったのだ。まだまだ、未完成の人工脳細胞である。


 それに比べ、後発機のマイドはより性能が上がっている。舞踊が、

「チョイドは改良が必要だ。破壊しないように連れて帰ってきてくれ」

 と命令すると、

「イエッサ!」

 と言って舞踊の工房から出発した。あれ、大丈夫か?


 まっすぐと日本アルプスに向かう、マイドに向かって、突然、なにかが飛んできた。

「エイッ!」

 マイドはその物体を地面に向かって叩きつけた。物体はものすごい勢いで落下し地面にめり込んだ。

 近くにいた一匹のロバが近づいてきて、地面を掘り起こしてその物体を咥えた。それは例の緑の珠だった。

「ヒヒーン!」

 ロバは突然、二本足で立ち上がり、その体が光った。そして、あっという間に、伝説の騎士、ロバート・オリオンになった。

「Go to JAPON!」

 ロバート・オリオンは天を仰いだ。巨大なドラゴンが現れ、ロバート・オリオンはドラゴンに跨った。ドラゴンは悠々と空へ飛び立った。


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