第14話 珠姫の呼び声

「なに、長野に行きたいだと。牛にでも引かれたか?」

 ぺこりがよくわからないことを言う。それに対して、足利義照は、

「善光寺に行くわけではありません。日本アルプスを見てみたいのです」

 と答えた。

「義照くん、君はニュースを観ていないのかね。この冬の日本アルプスは立ち入り禁止だよ」

「わかっております。山脈のよく見える温泉に浸かって、自然の雄大さを満喫したいだけです」

「そうか……おいらはエゾヒグマの怪物だから、温泉には興味ないんだ。飛び込むなら川がいいね。まあ、義照くんが自ら積極的に行きたいと言うのなら、行ってらっしゃい。ただし、絶対にここに帰ってくること。約束だ。そうでなかったら、土佐鋼太郎を監視役で同行させちゃうよ。あいつは闘牛ではなく闘犬だな」

 ぺこりは、将来の後継者候補に義照を上げているので、逃げられたら困るのである。本人にはおくびにも出さないが。

「必ず帰って来ますので、土佐さんの護衛は不要です」

「そうか。じゃあ、つつがなく」

「ありがとうございます」


 さて、義照は考えた。北陸新幹線に乗り、長野駅で降りれば早く着くだろう。しかし……義照は懐から緑色の珠を取り出した。その珠からは目の粗い画像と途切れ途切れの音声が聞こえる。

『緑の珠を受け取られし若者よ。北岳の頂上に参り、わたくしを助けておくれ。わたくしが全精力をかけて祈るから、雪崩、突風の心配はない。安心して来てたもれ……』

「ふーん、『スターウォーズ』episode4みたいだな。しかし、この着物を纏った女性は美しい。一見の価値ありだな。抜刀先生はこういう見聞を広めろとご指導してくれたのであろう。行くぞ、北岳!」

 そういうと義照は歩き始めた。北岳まで徒歩で行こうということだろう。さて、何日かかることやら。


 数日後、ぺこりが惰眠を貪っていると、ネロがやって来た。

「どうしたの?」

 ぺこりが尋ねると、

「我が軍の監視班からの報告によると、日本アルプスの北岳頂上付近に、強烈な「気」が集まっているようです」

「北岳は登山禁止だろ? 動物か? 怪獣か?」

「それがどうも、人間のようなのです」

「ふにゃ、人間がいくら集まろうと、レーダーに映るほどの気は出ないだろう? 相当にできるやつらの集まりだな。ところで、その「気」は安全か? 危険か?」

「残念ながらかなり危険なものです」

「そうか。仕方ないな。北岳の標高を少し下げさせてもらおう。爆撃機五台を出撃させよ。山頂にいる人間が何者か知らぬので少々かわいそうではあるが、悪い「気」の持ち主ならば消えてもらおう」

 ぺこりは久しぶりに冷たい表情を見せた。


『悪の権化』の飛行城は横浜市鶴見区の『獅子ヶ谷市民の森』の奥にある池の下にある。戦闘機、爆撃機は縦にストックされ、発射時は『マジンガーZ』のように池が両端に開き、『サンダーバード1号』のように垂直に発進する。この方法のデメリットはいっぺんに何機も発射できないことだが、秘密の飛行場を作るための広い場所が確保できなかったのだ。天熊寺の境内は参拝客がいるので、突然地面を開けたりできない。その他、水道、ガスなどのライフラインを傷つけて近隣の皆さんにご迷惑をかけられないので、やむなく不便なところに作ったのである。


 さて、早くも爆撃機は北岳上空にたどり着いた。しかし、厚い雲がかかって肉眼では、なにも見えない。ただし、レーダーには物凄い「気」が集まっているのが見て取れる。

『キャプテン、どうします?』

『セカンド・リーダー、もう闇雲に爆撃してしまおう』

『ラジャー!』

 その瞬間である、北岳頂上付近から複数のグリーン・レーザーが高速で飛んできて、あっという間に爆撃部隊は全滅した。ただし、パイロットはパラシュートで脱出。北岳山腹にビバークした。だが、この状況だと、敵が追跡してくる可能性がある。寒さもひどく、命に関わる。

 その一報を聴いたぺこりは、

「十二神将のうち、ネロ、悪童天子、聖寅試金牙、猛禽飛王を至急現場に向かわす。パイロットを助け、ついでに敵の首級を獲れ。情け無用。悩み無用だ!」

 と喝を入れた。ああ、ここで「檄を飛ばした」って書く人がいるけど、意味が違うから気をつけてね。

 

 とにかく、ぺこりが自ら指揮をとった。このあと、珠姫と何が起こるのか? 義照は珠姫の軍門に降ったのか? 以下次回なり。

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