第21話 お父様の秘密1
僕は、ロビン・テッド・ファインハルス侯爵家令息。
侯爵家に生まれ、9年…。とうとう僕にも婚約者が出来た。
僕の婚約者は、プリシラ・ブルー・ジェンキンス伯爵令嬢だ。彼女はプニプニの弾力体型で可愛らしい。
僕と初めて会った時はかなり、引かれた。何故?僕、一応美少年だよね?
それはそうと、僕のお父様とお母様についてだ。お母様はまだ普通ぽいけど、問題はお父様だ。
あの人はたまに、何故か口調が女の人みたいになる時がある。使用人達の前では普通だから謎である。
「あら、ロビンどうしたの?何か用事?」
とお父様の執務室に入ると沢山の書類の中からお父様が顔を出した。
黒髪の美形で、使用人達の若い女性達からモテていて、お母様がたまに嫉妬して機嫌が悪くなるくらいには美形だが、書類の山と格闘したのか、その目は死んでいた。
「お父様、プリシア嬢にお花を贈りたいのです。お金ください!」
と素直に言うと何故か、ゴンと頭を小突かれた。
「痛い、何するんですか?」
普通の親はこんな事しないよね?
「……ロビン、花は、いつか枯れるものよ」
「そうですけど、女の子への贈り物としては、最適ではないですか?本に書いてありました!」
と言うと死んだ目が一層近づく。
何この人。
「……ロビン、プリシアちゃんの体型を見て、花なんかで喜ぶと思ってるの?と言うか、この婚約本当に辞めないの?」
と言われる。僕はムッとした。
自分達が紹介しておいて、それは無いだろう?姿絵と違ったからと言って、僕の愛しいプリシア嬢を、いまさら体型のことで気に入らないとか。
「何でですか?プリシア嬢は素晴らしく可愛いではありませんか!!」
と強く言うと、ますますお父様の目が死んでいく。
「……うーん、どうして我が息子は、こうなったのかしら??デブ専とか、あり得ない!」
と嘆いた。
失礼な!プリシアちゃんはぽっちゃりだ!!
「とにかくお金ください!お花とお菓子贈るんで!」
と言うとお父様は横を向き
「嫌よー!大体男の癖に、親に金を|集ろうなんて10年早いわよ!自分で稼いだお金でプレゼントしたらどう?」
と言われた。
何と言う親だ!酷い!
貴族の子供が自力でお金を稼ぐなんて世間ではあんまり聞かないぞ!?
平民ならまだしも……。
ん?
平民……。
お父様、まさか、僕に平民に変装して、街でお金を稼げとか遠回しに言ってるのか?
ううん…。僕は悩み、今度はお母様に相談してみたんだ。すると……。
「……全く、ケヴィン様ったら意地悪ねぇ。まぁ、私もプリシア嬢の最初の姿絵には騙されたけど、ロビンが気に入っているなら別に文句は無いんだけどね」
「お母様!!理解者がいてくれて嬉しいです!」
やっぱり持つべきものは母親だ!
同じ栗色の髪だし、あんな変な父親とは違い、まともだ。
と、お金を強請ろうとしたら…
「庭師のカシオさんが、確か親戚に、街に靴磨きをしている叔父がいると言っていたわよ!」
と言った!
え!!?
まさか、お母様、お父様の意見を飲んでいる?
いや、これは、た、楽しんでいる!!
お母様は基本、お父様の言うことに、よほど変なことでなければ賛同するし、面白そうな提案なら興味を持ってしまわれる!!
「………あの、お花とお菓子代を……」
「ロビン?お父様の言うこと聞いてなかったの?お父様はね、貴方に社会の厳しさと、お金を稼ぐことの大切さを言っているのですよ」
「…はい……。わかりますけと、僕、まだ9歳ですし……」
「平民の子は9歳でも働きに出ているわ」
僕の目は死んだ。
どうあっても僕に靴磨きをしてこいと言っている。自力で金を稼げと…。
仕方ない、腹を括り変装するか…。
「お父様の子供の頃の服が、まだあったかしら?わざとボロボロにして平民ぽく見せるといいわよ!」
と楽しそうなお母様に対して、見る見ると僕の目は死んだ。変装にも手間がかかるとか。
仕方なく、お父様の子供の頃の服を探しに使用人達に聞いて、物置部屋へと探しに行った。
長年、使ってない物とかを置いてある部屋だ。定期的に使用人達が掃除してるから埃は被ってないし、丁寧に保管してるみたい。
古い子供用のクローゼットを見つけて、中を開けると、子供用の服があった。お父様の子供の頃のか。サイズも合いそう。
でもこれを今から、ちょっとボロくしなきゃいけないな。じゃないと街に馴染まない。
「……ん?」
ふと気付くと、大きいクローゼットも目に入る。そういえば、ここにはお母様のウエディングドレスがあるとか聞いたことあった。
興味本位で見てみたくなり開けた。
「おお、ちゃんと綺麗に保管されてる!」
純白の綺麗な花嫁のウエディングドレス……。いつか、プリシア嬢にも着てほしい!
と考えながらも、クローゼットの奥に、|何か箱に入ったものを見つける。
「ん?なんだろうこれ?」
箱は隠すように置かれていた。
不審に思い、僕は思い切って開けてみた…。
すると、そこにあったのは女物の服だった。
「なんだ?お母様の服か」
と思って広げてみると、どうも大きいサイズで、あれ?おかしいな?なんか大きい。明らかに違うサイズ。
「もし間違えて注文したのなら、仕立て屋に返品されてるはずなのに、どうして箱の中に隠すようにしまって……」
と、そこへ、血相を変えたお父様が、息を切らしながら入って来た。
「お父様!?」
仕事はどうしたのかと思っていたら、僕の持ってる服を見て
「きゃあああああ!!ロビン!!そ、それは……」
と絶叫した。
クローゼットの奥に、まだ|何着(なんちゃく)かの箱が見えて、僕はそれを|弄って(いじって)いるとバサリと女の人が付けるカツラが落ちた。
「………」
僕が固まりかけていると、お父様がパッとカツラを拾い、後ろに隠した。
僕は死んだ目になる。
僕の予想通りなら、
というかお父様の反応でもうわかった。この服やカツラは……
「それ、お父様の、ですか?」
と聞くと、お父様はもはや諦めたように死んだ目になる。
死んだ目になった親子が2人、しばし沈黙した。
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