★★★ Excellent!!! たまには長文レビューを書いてみる あきかん 人には書き上げろ、と言っておいて今作を読んで初期案は放棄しました。これを読んで満足してしまったので。 青春を煮詰めると何が表れるのか、と問われれば敗北の歴史であると答えます。結果でなく過程。その道は負けた無念で舗装されています。 さて、本作品の感想ですが、先ずもって絵画のデッサンについて語らなければなりません。 私は絵は書かないのですがたまに見に行きます。その経験から語るのならば、写実的な絵のデッサンは形と空間の模写につきるかと思います。 風通りが悪い絵に対して、一筋の光のラインを引く。その本質は空間の描写につきるでしょう。 例えば、借りようとする部屋の写真があるとします。その写真に映る窓から日射しが刺しているのかいないのかは重要だとは思えませんか?今作のデッサンについても同じ事が言えるでしょう。 光源を意識させることでそのモチーフの外の空間を伝える事ができます。一筋の光を描く事でその絵に風が吹いた、というのは良くわかります。絵の外から風が吹いて来るような、ありきたりな表現で言えば命が吹き込まれるのです。 さて、主人公の絵の道はまだまだ初歩の所で留まっています。しかし、それが青春の始まりです。きっと彼はこれからも描き続けるのでしょう。隣の彼女に負け続けながらも。その風景が青く輝いた物になるかは人それぞれですが、それを青春と私は呼びます。 レビューいいね! 2 2020年9月21日 19:27
★★★ Excellent!!! 「のろい」と「まじない」(あと「ねがい」) 姫乃 只紫 身近にある才能への嫉妬はしんどい。 この場合、「身近にある」というのがミソでして。というのも、距離感が近い分、才能だけではないことがわかってしまうのである。その人が陰ながら積み上げている姿を垣間見てしまうから、「自分には才能が足りないのだ」ではなく「自分には何もかも足りないのだ」と。云われているようで、突き付けられているようで。 息が、できなくなるのである。 それゆえ、飾らず云ってしまうと「自分には才能"だけ"が足りないのだ。彼の人は100%才能の塊なのだ」と思い込んでいる奴の嫉妬の炎なんぞ小火すら起こせぬ──気がする。 「才能とか、無いよ。どれだけ描くかじゃないの」 結局のところ、持たざる者は持てる者に憧れるのではなく、そんなものを拠り所としなくたって生きていけるでしょと強く断言できる者に憧れたいのかもしれない。 ──ええ、憧れ"たい"というのがミソでして。そこのところを憧れると云い切れぬ、そのあり方を生来の「のろい」とでも云えばいくらか恰好はつくのでしょうが、自らに嬉々として課した「まじない」であるようにも思う。 さて、かく云う私は件の作者の作品に随分入れ込んでいるのだけれど、非常にらしい作品だなぁと思った。いつぞやの言葉を借りるのであれば、「我」が出ていた。 そう、あなたは以前どこかで自分の作品には余計な「我」が出ている──と云ったけれど、それは決してマイナスではないと私は信じているよ。 レビューいいね! 3 2020年9月21日 12:54
★★★ Excellent!!! 斬り付けられるような青春の美しさ 偽教授 美術のことはさっぱりわかりませんが、これがアオハルだということは分かります。コーチ!青春って何ですか!それは青い春だ!なぜ春が青いんですか!俺は色盲だ! レビューいいね! 2 2020年9月20日 19:04
★★ Very Good!! 独特な世界観 吉城カイト 受験期を前にした男女二人のお話です。 絵画という独自の世界で、二人の「友愛かつ良いライバル」における心情が丁寧に表現されている作品だと思います。 専門用語が出てきますが、意味が分からなくても作品を読むうえで支障はほとんどありません。それよりも、描写が細かく想像しやすいことで補っているように感じます。 タイトル「Line」の伏線もきれいに回収されていたと思います。 後味がすっきりとした作品を読みたい方にお勧めです。 レビューいいね! 2 2020年9月20日 17:16
★★★ Excellent!!! あ、光が見えた。 盛舌 美術のことなんて知らないし用語もそこまで分からなかったけど、それでも。 主人公と同じタイミング、同じ目線で「光」が見えた。そんな気がした。 文章が適度な重さを持っていて、文字を読んでいるはずの目にその光景が鮮明に写るのはこの人の文章力の高さだと思った。 短めな作品です。興味が湧いたのなら一見の価値あり!! レビューいいね! 3 2020年9月4日 19:05
★★★ Excellent!!! 文章の端々に見えるのは僕たちの思っている"境界線"ではない。 ミヤシタ桜 この作品には、様々なところに境界線がある。 境界線と聞くと、マイナスなイメージを持ちがちだが、そんな固定概念を崩す衝撃作! 是非読んで見てほしい! レビューいいね! 2 2020年9月4日 18:40
★★★ Excellent!!! 稀なる一瞬。 濱口 佳和 あたりまえのことだけれど、文字には、文字自体には色も、匂いも、味もないのだけれど、ふとした拍子に、その文字と音の列なるイメージと呼吸に、自分の記憶と絡まり合って、音や色や匂いや、そして雲からさす宗教画のような陽のひかりであったり、そんな在るはずのない何かをかいま観ることがある。 誰もが異なったなにかを想起しているのだけれど、こころ(がどこにあるのかはさておいて)を包む幾層もの襞をかいくぐって、とてつもなく大切な何か、美しい何かに出会えることがある。 私は「美しい」とよく口にしてしまうのだけれど、この「美しい」は真円でない。なにかしらの欠落といびつさを持つ。ひたすら高みを希求し、恐ろしく真摯であるがゆえに「美しい」。 何を言いたいかというと、そんな稀な美しい一瞬に出会える作品です。 ぜひ、ご一読ください。 レビューいいね! 2 2020年9月13日 11:31