Line

作者 辰井圭斗

たまには長文レビューを書いてみる

  • ★★★ Excellent!!!

 人には書き上げろ、と言っておいて今作を読んで初期案は放棄しました。これを読んで満足してしまったので。
 青春を煮詰めると何が表れるのか、と問われれば敗北の歴史であると答えます。結果でなく過程。その道は負けた無念で舗装されています。

 さて、本作品の感想ですが、先ずもって絵画のデッサンについて語らなければなりません。
 私は絵は書かないのですがたまに見に行きます。その経験から語るのならば、写実的な絵のデッサンは形と空間の模写につきるかと思います。
 風通りが悪い絵に対して、一筋の光のラインを引く。その本質は空間の描写につきるでしょう。
 例えば、借りようとする部屋の写真があるとします。その写真に映る窓から日射しが刺しているのかいないのかは重要だとは思えませんか?今作のデッサンについても同じ事が言えるでしょう。
 光源を意識させることでそのモチーフの外の空間を伝える事ができます。一筋の光を描く事でその絵に風が吹いた、というのは良くわかります。絵の外から風が吹いて来るような、ありきたりな表現で言えば命が吹き込まれるのです。

 さて、主人公の絵の道はまだまだ初歩の所で留まっています。しかし、それが青春の始まりです。きっと彼はこれからも描き続けるのでしょう。隣の彼女に負け続けながらも。その風景が青く輝いた物になるかは人それぞれですが、それを青春と私は呼びます。

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