稀なる一瞬。
- ★★★ Excellent!!!
- 濱口 佳和
あたりまえのことだけれど、文字には、文字自体には色も、匂いも、味もないのだけれど、ふとした拍子に、その文字と音の列なるイメージと呼吸に、自分の記憶と絡まり合って、音や色や匂いや、そして雲からさす宗教画のような陽のひかりであったり、そんな在るはずのない何かをかいま観ることがある。
誰もが異なったなにかを想起しているのだけれど、こころ(がどこにあるのかはさておいて)を包む幾層もの襞をかいくぐって、とてつもなく大切な何か、美しい何かに出会えることがある。
私は「美しい」とよく口にしてしまうのだけれど、この「美しい」は真円でない。なにかしらの欠落といびつさを持つ。ひたすら高みを希求し、恐ろしく真摯であるがゆえに「美しい」。
何を言いたいかというと、そんな稀な美しい一瞬に出会える作品です。
ぜひ、ご一読ください。