47.滞在の間
そうして食事をする。これは自分で作るようにしている。一人の時がほとんどだ。笠原拓らと滞在しているわけだが、特に日常生活の家事にあたるものを当番制にしているわけではない。各々好きなように過ごしている。過ごしているというよりは、経過のなかに身を置いて時期を待っている、といったほうが近い。
午前中のうちに、身の回りの掃除をする。いつここを離れてもいいように物は最小限にしているから散らかることはさほどない。掃除をしながら端末を起動させ、音声案内に琴平からの進捗連絡やらメトロシティに関連しているニュースを読ませて聞く。
琴平とはテグストル・パールクでの一件以来、端末上で連絡を取るだけでまともに口を聞いていない。これは、自分と琴平(そして日向)が受けていた仕事が、まったく真逆の内容だったことが原因である。自分と同じデザイナーベイビーに関する仕事なのだが、方や保護命令、方や破壊命令がでていたおかげで連携がとれなかったのは言うまでもない。その結果自分は負傷し、希少な血液素材が流出し、著しい機能低下を引き起こしたため、ここにいる羽目になった。
当初はほとんど動けず、頭も回らなかった。恐らく、自分が誰なのかも数日間は忘れていただろう。それほど曖昧だ。最後に見た景色は打ち上げられる花火と、目前から姿を消したエルリの姿だ。
今は、素材不足を補えるサプリメントを飲用しているので、回復はしているし、動けるようにはなった。休暇というほどのんびりする余裕は無く、待機といわれても何も起こらない状態が続いた。
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