告白討論

作者 大澤めぐみ

ポンポン進む掛け合いの気持ちよさ

  • ★★★ Excellent!!!

 放課後の部室、鈴谷さんと七原くんの、とりとめなくまたフリースタイルな掛け合いのお話。
 表題からも明らかな通り、対話の内容は愛の告白です。告白されてもいまいち乗ってこない感じの鈴原さんと、そこをどうにかとばかりに食い下がる七原くん。それが本当に対話オンリー、すなわち地の文ゼロのカギカッコのみで構成されているのだからとてつもない。なおキャッチコピーに『偏差値ゼロの』とある通り、お話そのものは非常にゆるくて愉快なコメディです。
 パッと見て、というか読み始めてすぐ思ったのが、もうびっくりするくらいに読みやすいという点。実は個人的な癖というか不得手として、カギカッコだけが連続する文を読むとすぐに混乱してしまう(一対一の対話でさえどっちのセリフだったか見失う)ということがよくあるのですが、でもこの作品はそれがない。まったく迷うことなくすらすら読めてしまう。もちろん話し言葉の使い分け(方言とか)の工夫もあるのですけれど、でも明らかにそれ以上のものがあるというか、会話だけで内容がすっきり理解できてしまうこと自体がもう異常です。
 地の文というのは会話分に比べて表現の自由度が大きいというか、結構いろんな無茶ができるからこそ使われている面もあると思うのですけれど、でもそれ抜きで物語が進んでいることの恐ろしさ。普通はできることではないと思います。どうやってるんだろうこれ……。
 内容は、というかジャンルではラブコメとなっていますが、でも実質ラブを題材にしたコメディのような、いやもっと言うなら「言うほどラブでもなくない?」みたいなところがとても好きです。そこが軸でありこのふたりの核、たぶん一番美味しいところ。ラブというにはあまりに世知辛い、この七原くんの見事なまでの袖にされっぷり。でも同時に放課後の部室、ふたりっきりでこんな長時間楽しそうに話して、「いやなんだかんだで仲良いよねこいつら」となるところ。言うほどラブではないし一見そこまで甘酸っぱくもないけど、でも勝手に見出す分にはいくらでももじもじもドキドキもあって、とはいえそれはそれで下世話な気がして申し訳なくもあるような、このふたりの絶妙な距離感が好きです。
 決してやりすぎず、といって淡白なわけでもない、しっかりそこに存在しているこのふたり。「好ましい」とか「好感が持てる」なんて言ったらなんか偉そうなんですが、でもそのニュアンスに近いところの「好き」感。安心して好きになれる空気が嬉しい、軽妙で楽しいお話でした。

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