告白討論

大澤めぐみ

強いていうなら、ちょっと嫌よりのどっちでもいいやな

「鈴谷なにしてんの?」

「勉強。他にやることないし」

「ないかな、やること」

「なんかある?」

「別にないけど」

「あそう」

「でもたとえば、トランプとか?」

「トランプ? ふたりで?」

「まあ」

「ふたりで盛り上がるゲーム少なない?」

「うーん、そうかもな」

「最低でも四人くらい必要やろ」

「そうだな」

「うん」

「あのさ、鈴谷」

「なに、七原」

「俺ら付き合わない?」

「え? なんで?」

「なんでって、わりと一緒にいるし」

「部活一緒やしな」

「郷土歴史研究部な。郷土の歴史は研究してないけど」

「ただの脱法部活やからな。うちの高校、部活加入強制やし」

「活動実態のない部活に籍だけ置くやつな」

「吹奏楽部をおさえて部員数ナンバーワンらしいで」

「部室に来てるのは俺と鈴谷だけだけど」

「事実上の帰宅部やな」

「それ部活加入を強制する意味あるのかな?」

「さあ? でもおかげで部室も広いし、ええんちゃう?」

「部屋は部員数で割り当てられるからな」

「風通しいいから涼しいし、居心地ええよ」

「校内では、相対的に言えばね」

「どういう意味?」

「校内に残ってる必要なくない? いくら居心地がいいって言っても、自分の家のほうがいいでしょ。なんで鈴谷は部室にきてんの?」

「塾あるから、一回家に帰るのも面倒やし、ここで時間を潰してるねん」

「あそう」

「七原は? なんで部室に来てるん?」

「それは……鈴谷がいるから」

「へー、そう」

「うん……。で、どうする? 付き合う?」

「え? せやから、なんで?」

「なんでって、つまり。俺は鈴谷が好きだから」

「あそう」

「付き合わない? 俺ら」

「うーん、どっちでもいい」

「どっちでもいい」

「うん、どっちでもいい」

「どっちでもいいなら、別に付き合ってもよくない?」

「まあ、でも強いていうなら、ちょっと嫌よりのどっちでもいいやな」

「ちょっと嫌なの?」

「嫌っていうか、めんどくさそう」

「付き合うのが嫌なわけではない?」

「たぶんそう / 部分的にそう」

「アキネイターかよ」

「別に付き合わんでも困らんし」

「まあそうだよな」

「付き合ったらどうなるんか謎やし」

「分かる」

「現状維持にインセンティブが働くんが自然ちゃう?」

「ものすごい論理的に囲い込んでくるじゃん」

「逆に訊くけど、付き合ったらなんのメリットがあるん?」

「それは……一緒にいられる、とか」

「いまも一緒にいるやん。七原、毎日部室来るし」

「でも、来なくなるかもしれないじゃん」

「付き合わんかったら来なくなるん?」

「いや、来るけど」

「じゃあ、このままでええやん?」

「でも、付き合ってなかったら、別の誰かと付き合うかもしれないし」

「七原が? 別の誰かと付き合うん?」

「いや、たとえばの話ね」

「売り切れ御免のタイムセールてきな感じで購買意欲を煽る作戦なん?」

「そういうわけじゃないけど」

「でもごめんな。ぜんぜん危機感わかんわ」

「まあ、そうでしょうね」

「七原、かっこよくないもんな」

「そうだろうけど。言い方」

「って言っても、ぶっちゃけわたし七原のことよく知らんし。ここでちょっと喋るくらいやもん」

「そうそう。これで意外とかっこいいところもあるかもしれないじゃん」

「たとえば?」

「え?」

「たとえばどんなところがかっこええん? いまいち購入に踏み切る要素がないから、自分のことプレゼンしてみて」

「え~……」

「ないの?」

「あるよ! いっぱいあるって、かっこいいとこ!」

「だからたとえば?」

「バドミントンけっこう上手い」

「バドミントン」

「中学のときバド部だったから」

「なんでバドミントンでいけるって思ったん?」

「え? バドミントンかっこいいじゃん!?」

「かっこ悪いやん頭もじゃもじゃで」

「それはバドミントンじゃなくて俺の個人的なかっこ悪いポイントだろ」

「でも、そういえばわたし、バドミントンってレクレーションでしかやったことないから、本気のバドミントンって見たことないわ」

「そうそう。本気のバドミントンはかっこいいよ。スマッシュの初速は時速300kmを超えるとも言われてるし」

「ちょっとやってみて」

「え?」

「バドミントンのかっこよさがいまいちイメージでけへんから、ここでちょっとやってみて」

「バドミントンを?」

「そう」

「でも、ラケットもシャトルもなにもないじゃん」

「そのへんはほら、エアで」

「エア」

「野球の投球フォームとかエアでやってもけっこうかっこええやん」

「そうか。じゃあ、ちょっと見てろよ……。ッシュ……フッ! ……ンフッ!」

「めちゃくちゃかっこ悪いやん」

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