公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

第50話 助けてくれる人

　私は、プリネさんを追って、校舎裏に来ていた。

　そこでは、数名の貴族達が、プリネさんを罵倒していたのだ。

　私が出てきたことで、とりあえずそれは止めることができた。

　貴族達は、皆怯えたような表情をしている。公爵家の人間である私が、出てきたからだろう。

「な……何を」

「えっ……」

　しかし、一人の貴族は表情が違った。

　それは、彼女達の中心にいた貴族だ。彼女は私に対して、怒りの表情を向けてきている。

「あなたのような田舎の弱小貴族に、何ができるというのよ！」

「なっ……！」

「急に成り上ったからといって、調子に乗らないでもらえるかしら？　あなたなんて、公爵家の人間ではないのよ！」

「そ、そうだわ。あの人は、所詮田舎の貴族よ」

「私達より上な訳ではないわ！」

　彼女の一声で、周りの貴族達も再び調子づきだした。

　これは、私が恐れていたことだ。私は、フォリシス家の本当の子供ではない。そのことにより、彼女達がこうなるかもしれないということはある程度予想できていた。

　やはり、レティを呼びに行った方が、よかったのかもしれない。レティがいれば、この人達も絶対にこのようなことは言えなかったはずだ。

「あなたもそこの平民も、貴族に相応しくないのよ……」

「うっ……」

　私は、貴族達にゆっくりと追い詰められていく。

　この状態では、何をしてくるかわからない。下手に刺激しない方がいいだろう。

「ルリア様……」

「プリネさん、大丈夫……」

　そんな私に、プリネさんが不安そうな声を出す。

　助けに来たのに、彼女を心配させるのは、少し申し訳ない。

「あなた達は、絶対に許さない……」

「待ちなさい！」

「え？」

　そこで、ある声が響いた。

　その声は、私がよく知っている声だ。

　私達の視線が、声の方向に向く。

「あなた達、何をしているのですか？」

「レ、レティ様……」

　そこには、レティが立っていた。

　上の階を探して、プリネさんが見つからなかったため、こちらに来てくれたのだろう。

　その存在は、とてもありがたいものだった。私と違って、レティは正当なるフォリシス家の人間だ。その地位は、ここにいる貴族達にかなり効いているだろう。

「レ、レティ様、これは違うのです……」

「違う？　何が違うというのでしょう？」

「そ、それは……」

　私とプリネさんが、壁際に追い詰められており。数名の貴族で囲んでいる。

　この状況では、彼女達もいい訳がしにくいのだろう。かなり焦っている。

「まあいいですよ。この場には、私より相応しい人に来てもらっていますから……」

「え？」

　レティの言葉に、私は驚いた。

　この場で、レティより相応しい人物など、いるのだろうか。

　そう思った私の目に、ある人物が現れる光景が入ってきた。その人の登場に、その場にいる全員の表情が変わる。

「リ、リクルド・フォリシス様……」

「……ふん」

　現れたのは、私達の兄であり、この学園の学園長であるお兄様であった。

　そこで、私はやっと理解した。レティが上の階に行ったのは、お兄様を呼びに行くためだったのだ。

　プリネさんが何かがありそうだったため、お兄様に伝えたのである。その判断は、恐らく正解だろう。お兄様に、直接この光景を見せることで、彼女達に言い訳する暇を与えなくしているのだ。

「あ、あ、あ……」

「そ、そんな……」

　貴族達の表情が、絶望の表情に変わる。

　それもそのはずだろう。学園長であり公爵家のお兄様に、自分達がしていたことが伝わったのだ。その意味が、彼女達はわかっているのである。

「お前達の行いは、許されることではない。他者を愚弄し、大勢で詰め寄るなど、貴族としての誇りもない行為だ」

「うっ……」

「そして、俺の妹に言った言葉を、俺は絶対に許さない」

「ひっ……」

　その言葉により、貴族達は崩れ落ちた。

　こうして、この場はレティとお兄様のおかげで、収めることができたのだった。