第31話 公爵家の令嬢
私はレティとともに、家庭科室に来ていた。
そこで、私が村にいた時の友達であるトルカと会ったのだ。
「うん?」
「おや?」
「うん?」
そんな中、私達にある音が聞こえてきた。
それは、戸を叩く音である。
「お邪魔するわね」
「ええっ!?」
「うわあっ!」
その直後、戸が開かれ、一人の人物が入ってきた。
私とレティは、現れた人物に驚いていた。
なぜなら、その人物は私達も知っているとてもすごい人だったからである。
「ティアナ・ソラシア様……」
「そう言うあなたは、ルリア・フォリシス様、それに、レティ・フォリシス様」
その人物は、ティアナ・ソラシア様という人物だ。
ソラシア家は、フォリシス家と同じ公爵家である。ティアナ様は、そんなソラシア家の長女だ。
私達も、会ったことはあるし、お兄様の学園に通っていることは知っていた。だが、まさかこの家庭科室に来るとは思っていなかったのだ。
「トルカ、無事に再会できたみたいね」
「うん。ティアナのおかげで助かったよ」
「え?」
「は?」
私達は、再度驚くことになった。
なぜなら、トルカがティアナ様に砕けた口調で話しかけたからだ。
平民のトルカが、貴族のティアナ様にそういう口調を使うということは驚くべきことである。
「トルカ、ティアナ様と友達なの?」
「え? あ、うん。そうだよ」
私は、すぐにトルカに話しかけてきた。
すると、そんな軽い反応が返ってきた。
どうやら、トルカはティアナ様と友達であるらしい。
それなら、この態度もある程度納得できる。ただ、それにしても公爵家の令嬢と友達とはすごいことだろう。
「彼女とは、入学した時、隣の席だったのよ。不思議と気が合って、今では親友と呼べる存在になったわ」
「そ、そうなのですね……」
驚く私に、ティアナ様がそう言ってきた。
それは、なんの変哲もない仲良くなる流れだろう。しかし、身分の差を乗り越えているというのは、すごいことだ。
「トルカも、すごい人と友達になったね……」
「そう? ルリアだって、公爵令嬢だし、あんまり変わらないんじゃない?」
「それは……」
驚く私に、トルカはそんなことを言ってきた。
だが、元々友達だった私とティアナ様とでは、かなり違う気がする。
「私としては、あのフォリシス家の人間に友達がいると聞いた時の方が、驚いたけどね」
「あ、ティアナ様」
ティアナ様は、トルカの隣に座り、そう言ってきた。
確かに、トルカが私と友達なのは、驚くべきことかもしれない。
私の出自を知っていても、具体的な出身地は知らない人が多いため、そう思うのも当然だろう。
「あ、そんなにかしこまらなくてもいいわ」
「え?」
「ティアナ様なんて、言い方はしなくてもいいわ。ここには、他に誰もいないのだし、もっと普通にして」
そこで、ティアナ様にそんなことを言われてしまった。
どうやら、ティアナ様は固い感じが苦手であるらしい。
それなら、もう少し砕けていいのだろう。
「それじゃあ、ティアナさんでいいですか?」
「ええ、それがいいわ。レティさんも、それでいい?」
「あ、はい……」
ティアナさんは、私の返答に笑顔を見せてくれた。
そういえば、ティアナさんは、私達のことをさん付けしてくれている。だが、私達の方が年下なので、それもいらない気がしてきた。
「ティアナさんも、さん付けしなくていいですよ。私達の方が、年下ですから」
「それなら、ルリアちゃん、レティちゃんと呼ばせてもらうわ」
「ちゃ、ちゃん付けですか?」
「ええ」
ティアナさんは、そう言ってまた笑う。
なんだか、とても柔らかい雰囲気だ。
私が、前にあった時は、もっときっちりとしている人だった気がする。
しかし、今はとても親しみやすい。恐らく、これがティアナさんの素なのだろう。
「そういえば、トルカが頼んだのって、ティアナさんなの?」
「うん? あ、そうだよ。それが、一番いいかと思ったし」
そこで、私は思い出した。
トルカは、私に手紙を渡すために、貴族に頼んだと言っていた。その貴族とは、ティアナさんだったのだ。
公爵令嬢という地位に驚いたが、トルカは事前に貴族と友達だと言っていたのである。思えば、その時点でヒントは出ていたのだ。
「端から見たら、公爵令嬢から公爵令嬢への手紙だから、違和感はないよね?」
「確かに、そうだね……」
トルカは、本当に色々と考えてくれていたらしい。
ティアナさんから、私への手紙なら、違和感もないだろう。
「地位って、案外大変よね? 色々と、気を遣わないといけないし」
「あはは、確かに、教室でティアナと話す時は、敬語とか使わないといけないし」
トルカとティアナさんは、顔を見合わせて笑い合った。
二人とも、色々と苦労しているようだ。しかし、その顔は楽しそうだ。本当に、親しい間柄なのだろう。
こうして、私達はティアナさんと出会うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます