第14.5話(レティ視点)

 ※この話は、レティ視点の話です。



 私の名前は、レティ・フォリシス。

 誇り高きフォリシス家の次女にして、神童と呼ばれている才能溢れる美しい天才です。


 私は、授業初日に終えて、家に帰っていました。

 後は、ゴロゴロして一日を終えるだけ、そう思っていた私でしたが、お兄様から呼び出されてしまいました。


 どうやら、私はゴロゴロすることなどできないようです。

 しかも、今回は私一人らしいです。お姉様と一緒ならともかく、私一人ということは怒られるしかないでしょう。

 なぜなら、私は褒められるようなことをしていないという自覚があるかです。こういう場合は、大抵怒られる。そんな考えが根底にあるのです。


「さて、今日、お前を呼んだ理由は、授業中の態度にある」

「は、はあ……」


 という訳で、私はお兄様の元に来ました。

 すると、お兄様がそんなことを言ってきます。


 そういえば、今日の授業中、卑劣にも教室の中を見てきていました。大方、お姉様の顔が見たかったとか、そんな理由でしょう。


「授業がつまらないか?」

「え?」


 お兄様の言葉に、私は驚いてしまいます。

 絶対に眠そうにしていたことを怒られると思っていましたが、意外にも質問されてしまいました。


「まあ、つまらないですね……」

「そうか……」


 とりあえず、素直に答えてみます。

 すると、お兄様は悩むような表情を見せます。そんな表情をしてくれるなど、思っていませんでした。

 一体、どうしたのでしょうか。もしかして、悪いものでも食べたのでしょうか。


「……人間は、時につまらない言葉にも、耳を傾ける必要がある」

「え?」

「故に、つまらないからといって、眠ることが許される訳ではない」


 しかし、すぐに説教のようなものが始まりました。

 やはり、いつものお兄様です。ここから、長い説教が始まるのでしょうね。とても嫌です。


「だが、これはお前が優秀過ぎる故のことともいえる。だから、俺はお前を説教するつもりはない」

「え? そうなんですか?」

「ただ、授業はできるだけ真面目に聞け。案外、新たな発見でもあるかもしれないぞ?」

「まあ、善処しますが……」


 そう思った私にかけられたのは、優しい言葉でした。

 今日は説教ではない。それだけで、私の心はとても気楽になります。


「……さて、今回俺が呼びだしたのは、それだけではない」

「え?」


 お兄様の言葉に、私はまたも驚いてしまいます。

 今日の用件は、一つではないようです。

 次は、一体何なんでしょう。早く部屋に戻ってゴロゴロしたいんですが。


「ルリアに、何か変わったことはないか?」

「は?」


 どうやら、次の用件はお姉様のことらしいです。

 この兄は口を開けば、お姉様のことばかり言いますね。はっきり言って、気持ち悪いんです。


「勘違いするなよ。俺はただ、フォリシス家の養子であることで、他者から色々言われているルリアを心配しているだけだ」

「ああ、その面もありましたね……」

「その面も、とはどういうことだ?」

「い、いえ……」


 口ではこんなことを言っているお兄様だが、それ以外もあるでしょう。

 大方、お姉様に悪い虫がついていなかとか、そんなことです。

 こういう所が気持ち悪いんですけど、まあ全部報告してあげますか。


「お姉様に対して、色々という人はいますね。でも、危害を加えようと思う人はいませんよ。フォリシス家のご令嬢様に手を出す勇気なんて、彼女達にはありませんから」

「ほう……ちなみに、そいつらの名前はわかるか?」


 私の言葉に、お兄様の表情が変わりました。

 それは、真剣な表情です。もし、私がここで覚えている人達の名前をあげれば、お兄様は何かしらの対処をするでしょう。

 お兄様は、お姉様を守るためなら、それくらいやる人です。そのため、名前を言うことはできません。

 私としてはそうしてもらって構いませんが、お姉様はそう思わないでしょう。


「それは言えませんよ。お兄様が、何かするでしょうから。そうすると、お姉様が悲しみます」

「……なるほど」

「それと、自分で知っても処罰してはいけませんよ? そんなことをしたら、お姉様に嫌われてしまいます。もし何かあれば、私からお兄様に報告しますから」

「ふっ……」


 私の言葉に、お兄様は笑いました。

 一応、それは了承ととっていいはずです。


「さて、話はこれで終わりですか?」

「ああ、時間をとらせたな」

「いえ。それでは、私は失礼します」


 それで、話は終わりでした。

 という訳で、私はゴロゴロしに戻ります。


「あ、そういえば……」

「む……?」


 そこで、私はあることを思い出しました。

 それは、お姉様にペンを拾われた男子生徒のことです。

 あの生徒は、恐らくお姉様の笑顔に落とされたような気がします。一応、これも報告しておくべきなのでしょう。


「男子生徒が一人、お姉様に惚れたような気がします」

「……そいつの名前を言え」


 その発言により、お兄様の表情が変わりました。

 それは、もしかしたら先程より怖い気がします。


 流石に、惚れただけで処罰は可哀そうなので、私はこの後お兄様を説得しました。

 本当に、気持ちの悪いお兄様です。

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