第63話 増える仲間たち
Cランクにダンジョンがランクアップして、特異種のトレントであるウドリーを創った後、俺達は何事もなく過ごしていた。
ダンジョンの魔獣としては一番外側にいるせいか、トレントが狩られることがしばしばあるが、ウドリーが毎日2~5体くらい生み出しているので、正味ではむしろ増えている。たまに、ダンジョンエリアである上層エリアに踏み込んでくる冒険者もいたが、カーバンクルのルビーとゴブタロウ率いるゴブリン軍団で難なく対応できていた。ルビーいわく、
「(なんや、張り合いないな~。ゴブリンいらんとちゃう?ワイだけでじゅ~ぶんやで)」
だそうな。もちろん、本丸の地下空間である下層エリアにまで冒険者を寄せ付けたことはない。
「さて、どうするかな……」
俺は悩んでいた。
これから、この深緑のダンジョンをどう強化していくか。
もともとはダンジョンエリアの外側である外周部に冒険者が増え始め、魔獣が狩られ始めたので、焦っていたところもあるのだが、ここに来て、冒険者が減っているのだ。どうやら、トレントは狩られてはいるものの、奇襲で冒険者にダメージを与えてもいるので、それで冒険者の数が減ってるようだ。やられているのだから、やめればいいものを、なぜかそれでも冒険者はトレントを狙っているようにみえる。不思議だ。
……それに、トレントがダメージを与えているにしても、最近、ちょっと妙なほどに冒険者が減っている気がする。みんなで一斉に休みでもとっているのだろうか?
当面の危機がなくなったことで、割と自由にダンジョンの強化を考えられるわけだが、逆に悩んでしまっている。
ついこの間、Cランクにランクアップしたばかりなのだ。Bランクへのランクアップは当面ないだろう。DランクからCランクへのランクアップに3ヶ月くらいかかっているのだから、Bランクになるのは半年以上先かもしれない。もちろん、強化にどれだけ魔力を使うか次第でもあるのだが。
となると、ひとまずはランクアップに期待せずに仲間を増やすか、罠を設置するとかダンジョン自体の強化をするか、ということになる。
何をするのが一番いいのか。
一人悩んでいると、ルビーが声をかけてきた。
「(旦那、悩んでます?)」
「あぁ、ダンジョンをどうやって強化しようかと思ってな」
「(そやなぁ、魔力つこうてへんのに、なんや魔族の数だけは増えてるみたいやしなぁ)」
そうなのだ。うちには《魔族創造》を使わずに増えていく魔獣が多い。トレントはウドリーの《同化》スキルで増えるし、スライムも狩られないのに分裂はするものだから、ガンガン増えている。ゴブリンもちょっと見ぬ間に増えている気がするし。。。
現時点のダンジョンの魔獣はこんな感じだ。
Sランク:俺(デーモン)
Aランク:ティナ(獣人)
Bランク:なし
Cランク:ルビー(カーバンクル)
Dランク:ミズク(オウル)、ヘッジ(ディグホッグ)、ウドリーをはじめとしたトレント約50体
Eランク:ゴブタロウをはじめとしたゴブリン約150体、スラポンをはじめとしたスライムたぶん500体くらい、モール10体
随分と増えたものだ。スライムなんて、もう数を数え切れないくらいになった。500という数字もスラポンに聞いた数字でしかない。しかも、その時のやりとりは……
「スラポン、いまスライムはどのくらいいるんだ?」
「(ん~いっぱい?)」
「いや、数字で教えてくれ……」
「(じゃぁ~500くらい?)」
というものだ。まったくもってアテにならない。
配下登録してあれば、こっちでも分かるのだが、数の多いトレント、ゴブリン、スライムは一部しか配下に登録していない。もっともスライムは偵察部隊として、150体くらいを配下登録して《交信》のスキルを使えるようにしてある。
しかし、なんでゴブリンは増えてるんだろうな?
俺が知らぬ間にまた、どっかの集落から連れてきたのか?
「ゴブタロウ、ちょっといいか?」
「(うん、なに?)」
「どうしてゴブリンは増えてるんだ?またどっかから連れてきたのか?」
「(ここ、ごはんたくさんある。みんな頑張ってる)」
「ん?頑張ってる?何を?」
「(子作り)」
……おぉぅ。そうか。それはいいことだ。
それじゃなにか?うちにいるゴブリン達は空前のベビーブームってことか?
……いや、待て。以前から50体くらい増えてると思うが、そんな子どもだらけってことはなかったぞ。だいたい冒険者にやられてるやつもいるから、実際はもっと増えてるだろ。
「(ほら、カイン、この子覚えてない?)」
そういってゴブタロウは通りがかったゴブリンを呼び寄せる。
「ゴブ~」
「……いや、ちょっと覚えてないな」
というか、ゴブリンの違いなんざ分かるか!
さすがにゴブタロウの見分けはつくが、その他大勢のゴブリン達まで覚えてやしない。
「(この子、ここに来たばっかりのときにダンジョンコア取っちゃった子)」
「!?」
思い出した!
いや、ゴブリンの事を思い出したわけじゃないが……。
確かに、ゴブタロウがゴブリン達を大量につれてきたとき、ゴブリンの子どもがダンジョンコアを取ってしまって、騒ぎになったことがある。しかし、あのときのゴブリンは明らかに子どもと分かるくらいに小さかったが、ここにいるゴブリンはゴブタロウとさほど変わらない。
「なぁ、ゴブリンって、どのくらいで大人のサイズにまで成長するもんなんだ?」
「(ん~生まれて3ヶ月くらい?でも、ここはいいところだから、もっと早いかも)」
なるほど。ベビーブームに加えて、ゴブリンは早熟と。
ゴブリン達が大量に引っ越してきてから、3ヶ月くらいたつのだ。確かにそれならこれだけ増えるのも納得だ。
……今後もこのペースで増えるのか?
ウドリーのスキルでトレントが増えるようになって、やっとこのダンジョンの主力が入れ替わると思ったが、もしかすると、ゴブリンだらけなのはこれからも変わらないのか?
いや、別に魔力使って創ってるわけでもないからいいのだが。
「(いいやん。タダで増えるんやから。それにゴブリンゆーてもこいつらはなかなかの戦力やで)」
そうなのだ。ゴブリン達はあれからも訓練を続けており、なんと部隊の平均レベルは40を超えているのだ。低レベルのDランクの魔獣なら、1対1でもゴブリンが勝ててしまう。
ゴブリンだけじゃない。あれから、みなレベルは上がってきている。主要メンバーのレベルはこんな感じだ。
ティナ:19、ルビー:5、ミズク:7、ウドリー:3、ヘッジ:17、ゴブタロウ:52、スラポン:35
注目すべきはやはりゴブタロウだろう。訓練もそうだが、実践もこなし続けているだけはある。ルビーやミズク、ウドリーなんかは創ってから日も浅いから仕方ないが、伸び悩んでいるのはティナだ。ここに来たときにはレベル15。たったの4しか上がっていない。まぁ、Aランクのティナの相手をできるようなのが少ないからな。本人も頑張ってはいるんだが、なかなか上がらない。
そんな事を考えていると、ティナがやってきた。
だが、なんだか少し不安げな様子だ
「カイン兄」
「どうした?」
「ちょっと気になる場所があるの、一緒に来てくれない?」
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