第139話 王妃はウザい報告書を読む
~~ここまでのお話~~
人を魅了する妖しい魔道具をスラム出身のダメンズ「ロウラ」に与え、王都を混乱させた仮面の魔法使いアラハ・ウィがウザードリィ領にダンジョンを作って立て籠もった!
それに挑むのは───
ウザ絡みのルイード率いる王朝皇女にして稀人のレティーナ、同じく稀人のアモスとチルベア、そして程よく鍛えられた豹頭人身の戦士シンガルルの【
ノーム種のシルビス率いる熱血のガラバ、クールなビラン、元気なアルダム、元間者のシーマの【シルビスとゆかいな仲間たちパーティ】
王都の衛兵隊長ミュージィ(仮のウザードリィ領主)に一目惚れした冒険者のトライセラ率いる、ゾンビロード、スケルトンアンドロイド、オークロード、カイザーゴブリン、コボルトキングの【雑魚改め、恋するモンスターパーティ】
さらに! 王朝からはレティーナの旦那の座を狙ってアホな公爵子息たちがやってきたぞ!
子息たちの参謀役でもあるミラ・アラガメ公爵令嬢は、王妃に与えられた犯罪奴隷ロウラと街にしけこんだ! 悪役令息だったロウラをミラがどう操るのか期待が持てるところ! ちなみにミラは根っからのダメンズメーカーでロウラは生まれついたダメンズクズ男ときてる! 最高のカップリングがここに誕生か!?
選民思想の塊リュウガ・エリューデン公爵令息は、ギャル稀人アイラを仲間にしようとしたら、逆に捕まって夕方から朝まで足腰立たないくらい調教された模様! 彼の貞操はもうゼロよ!
傾奇者のセルジ・アラガメ公爵令息は、なんと王家第三序列だった元王女であるエチル・キャリング公爵令嬢と出会った模様! 過去の素行のせいで王国ではけちょんけちょんに陰口を叩かれているエチル元王女だけど、うまくいけば王朝の公爵家に迎えられるか!?
残るは、ミラの兄で腹黒なセルジ・アラガメ公爵令息。どんな仲間を見つけるのか、乞うご期待!
ウザードリィのダンジョンを攻略し、仮面の魔法使いを倒すのは誰なのか! 次の報告を待て!
追伸:
そうこうしているうちにウザードリィ領には冒険者や彼ら目当ての商人がたくさん集まり、そんな人々に風光明媚な観光ツアーが組まれたり、娯楽施設も充実してきて、今や税収は王国で三本指に入る勢いだ! いまなら御伽衆が温泉ツアーにご招待! レッツ・エンジョイ・ウザードリィ!
「………」
自分専属の密偵集団「御伽衆」からの愉快な報告書に目を通した王妃は、御伽衆の御頭であり専属メイドでもある女を冷たい眼差しで見た。
「確かに妾はもう少しマシな報告をしろとは言ったが、こうじゃない」
「お気に召しませんでしたか」
「勢い付けて書けばいいというものではないぞ」
王妃は目頭を押さえた。
「次から気をつけます」
メイドは表情を変えず淡々と返答する。
「……お前には伝えておくが、王朝から速達が来た。内容は『皇女レティーナの代わりはいない。なにがなんでも保護をお願いする』ということだ。どうやら王朝皇王の血筋はレティーナが死ぬと絶えてしまうらしい」
「左様ですか。しかし、なぜそれをわたくしごときに?」
「お前たち御伽衆はアラハ・ウィとも懇意にして立ち回っているそうだからな。上手い具合にダンジョンにいるレティーナを守れるのではないか?」
アラハ・ウィが作った「攻略不可能で面白くもなんとも無いダンジョン」をリニューアルさせ、たくさんの冒険者を呼び込んだ御伽衆の活躍は聞いている。彼らならなんとでもしそうな気がしたのだが、王妃の読みは正しかった。
「はい、多少は手心を加えられるかと」
「ならば、そうしてくれ」
「しかし王妃様。その御方にはルイード様が同行されているので、心配ご無用ではないでしょうか」
「ハッ、あいつがいるから心配なのだよ」
王妃は執務机に頬杖をついて悪態を見せた。
「まったく、いくつになっても人の世の常識が身につかない男だ」
「……そういえば報告書に記載はいたしませんでしたが、ルイード様はウザードリィ領で新たなビジネスを始められたとか」
「ん? あいつはまだなにかやってるのか」
「はい。スペイシー領のわくわくゴブリンランドに対抗して『ウザ過ぎる場』略して
「待て。いろいろ待て。不穏な名前だな! それに、そのこじつけたJはなんだ!?」
「きっと名前を考えるのがめんどくさくなったのかと。その施設の内容を申し上げますと、人の世の喜怒哀楽を全て味わえるスーパー
「あー、もうよい。要するに遊園地ということであろう?」
「今の内容を聞いてそれで済ませてしまう王妃様もよっぽどだと思いますが」
メイドはため息交じりに呆れたように言ったが、王妃は全く意に介さなかった。大天使ミカエルにとって人間相手の娯楽施設の内容など、些末なことなのだ。
「ちなみに、その娯楽施設目当てに各国の冒険者ギルド受付統括者がこぞって席を空けておりまして、あちこちで業務が滞っているという話です」
「は? カーリーたちのことか?」
「はい。我が王国はエルフ種のカーリー様。帝国は
「あいつら、役目を忘れおって……」
王妃は若干瞳を金色に輝かせたが、直ぐに目の色をもとに戻した。
「それともう一つご報告が」
「まだあるのか? なぜ報告書に書かないのだ」
「それはとても書けませんでした」
「申せ」
「はい。王朝の……大陸の東を支配下に置いているあちらの『神』の使徒が、此度の騒動の謝罪に訪れたいという内々の打診がございました」
「天照神の使徒ということは妾と同格ということか」
「左様かと存じます」
「ううむ、面倒な。今こちらはあれこれ忙しい。落ち着いてからにしてもらえ」
「もう遅いかと。王妃様に匹敵するかなりの神格が暗黒連山を超えましたので」
「もうやだ……」
王妃は執務机に突っ伏した。そんな上司の姿にメイドは「おかわいいこと」と微笑んだ。
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