第17話

 リアムは表情を改めて私を見た。


「『ソキウス』の中でも元魔獣で、更に上位以上の個体には特殊な力が有る。これを利用しようと思っているのだが、何か質問はあるか?」


 私は今までのリアムの言葉を思い返す為に、ウィルから視線を外して目を閉じ考える。



 えっと、言語だけなら何とかなるんだよね?

 それでリアムはウィルを呼び出した。

『ソキウス』には魔獣からなるものと普通の動物からなるものがいて、魔獣から『ソキウス』になったものの中でも上位以上? の個体には特殊な力が有ると。

 その上位以上の個体の特殊な力を利用する、で良いんだよね。



 ちょっと気になった事があるから訊いてみようかな。


「あの、魔獣から『ソキウス』になった個体の内上位? の個体には特殊な力が有るという話でしたけど、どうしてかとかは分かっているんですか?」


 私の問いに、リアムは肯く。


「そうだな……分かっているといえば分かっている。『ソキウス』も魔獣も強さで区分けかあるのだが、これは双方十に別れていて、一般的に魔獣の同ランクよりも『ソキウス』の同ランクの方が強い。何故かといえば元々の存在から変質してしまっているのが魔獣で、それから解放され更に力が増したのが『ソキウス』だからだ。魔獣になると元々の存在から変質した事で力が増してはいるんだ。だが、代わりに失った力もある。それが『ソキウス』になる事で、失った力を取り戻した上に魔獣の状態の増した力も手に入れる事になるからだそうだ。魔獣の区分も話しておこうか?」


 リアムの話は理解できたと思う。

 要するに、『ソキウス』になった事で魔獣は元々の存在よりも力を増した状態で、更に魔獣になってしまった事で失った力も得られるって事だよね。

 うん、大丈夫。

 この世界の事は何も分からないんだから、リアムの話は咀嚼してしっかり覚えておかないと。



 だったら、魔獣の区分とかも知っていおいた方が良いのかな……?

 どういう基準で分けてるんだろう?

 草食獣とか肉食獣とかの違い……?


「あの、魔獣の区分けって一般的に知られている事なんですか? あの、どういう基準で分けてるんですか?」


 リアムは眉根を寄せつつ腕を組む。

 もしかして、答え辛い質問だったかな……?


「難しい問いだな……知っている者は知っているし、知らない者は知らない。とはいえ知っていた方が良いとは思う。役に立つ場面もあるだろうから。それから分け方は純粋に強さだ。それぞれの強さに応じて分けている」


 そっか……

 純粋に強さ、なんだ。

 それって、元の世界の獣より強いって事、なのかな……?



 ちょっと考えた。



 確か、お父さんが言っていたんだ。

 知識は知っておいて損は無いと。

 知らなければ選択さえ出来ないのだから、学ぶ事は大事だって。



 なら、知っている人もいるんだし、役に立つこともあるっていうのだし、うん、決めた。


「話してくれると嬉しいです。お願いします」


 強さで決まるという区分け。

 なら知っておかないといざって時に困ると思う。

 私がそう思って言ったら、リアムは優しい表情で肯いた。


「分かった。なら話そう。その方が良いと思えるしな。『ソキウス』や魔獣には十の区分があるとは言ったな? 一番上から、空位、最高位、高上位、高位、上位、中位、下位、低位、初位、微位となる。この中で空位は伝説上の存在とも言われていて、まずお目に掛かる事はないだろう。事実上区分で一番上なのは文字通りの最高位だ。微位クラスになると『ソキウス』や魔獣としても普通の獣とそう変わらないとも言えるな。とはいえ『ソキウス』や魔獣の方が獣よりも強力なのは確かだ。微位の魔獣に襲われて実際に死ぬ場合もあるのだから、注意するに越したことは無い。大体において普通の獣と言えるのは草食獣ばかりだな。肉食獣は基本的に魔獣だ。だからこそ攻撃力も高いといえる。こんな所だが、大丈夫か?」


 心配そうなリアムに微笑んで答える。


「大丈夫。今はこれで十分です。また分からない事があったら聞いちゃうと思うけど、その時はよろしくお願いします」


 うん、一番上の空位は伝説上の存在だから除外と。

 それで実質の一番上は最高位?

 何だか最高位なのに一番上じゃないって変な感じ。

 でもきっとそれだけ空位が凄いって事なのか、それともいないけど神話や伝説の中には居るって事なのかな?



 納得してから肯いて、ペコリと頭を下げると、リアムは微笑みながら肯いた。


「気にしなくて良い。この世界の生まれではないのだし、知らないのは仕方がない。また何かあったら遠慮なく聞いてくれ。私も気が付いたら言う様にする」


 私は肯いてから、スープをすくって一口。

 うん、やっぱり美味しいし温まる。

 ゆっくりじっくり何度も噛んで、じわっと飲み込んで、息を吐く。

 もう一口いけるかな?


「ミウ。話を続けて良いか? もう少し待った方が良いのならそうするが」


 リアムが心配そうに言うのを聞いて、慌てて飲むのを止め、彼を見る。


「大丈夫です。ゆっくり飲んだ方が良いんだろうし、少しずつ飲みますから。話を続けて下さい」


 お腹はもっともっとと欲しているが、急いで飲んだらダメなんだから、一口飲んで間をおいた方が良いに決まってる。


「了解した。さて、話がだいぶそれていたが、話を戻そう。言語を手に入れる方法だな。それには上位以上の『ソキウス』を使うのが一番楽だと思う。とはいえ中々上位以上の『ソキウス』など手には入らない。シビュラ大陸でもそうだ。ましてやこのエトルリア大陸では言うに及ばずだな。だが幸いウィルは上位以上。だから大丈夫だ。安心して欲しい」


 魔獣って言う位だから、とても強いんだろうなあと思ってしまう。

 これが素直な感想だ。

 それの上位以上ってどれくらい凄いのかな……

 特殊な力が有るのも納得って感じだ。

 やっぱりウィルって凄かったんだと思いながら、リアムの話に耳を傾けた。

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