129 side:アエーシュマ

「……ぅうん……あれ……? えっと……確か兄様あにさまとダンジョンに行って……魔法が使えなくなって……あぁ、そっか……」


 あの一つ目の言うことを信じるなら、魔法刻印による自動回復魔法リジェネの効果も無くなったはず。

 つまり、私の体は損傷するしかなくなり意識を失ったのね。


 ……うふふ、なかなかいい体験ができたわ。

 でも──


「ここは……? それに……」


 ──なぜかウラジーミル先生によって椅子に縛り付けられている。

 魔法のアヴェスターグ模造本・レプリカも無いし、思ったより縄が頑丈で自分では解けない。


「僕が一番シュマちゃんを愛してる! だからシュマちゃんも、僕を愛してほしいんだな!」


 少し困っていた私に、先生が提案してきた。


 うふふ、私を愛してくれるの?

 嬉しいわ。

 じゃあ、私も先生を愛してあげようかな。


 でも、折角愛してあげようかと思ったのに、先生は無茶なことを言ってきた。


 "ウラジーミルのものになる"


 あぁ、それは無理よ。

 絶対に無理。


 私は兄様あにさまの物なの。

 髪の毛の一本から足の爪先まで。

 皮膚に滲み出た汗の一滴から体の奥の魂まで。

 全部、全部、全部、私の全部は兄様あにさまの物なの。

 先生の物にはなれないわ


「ななななな、なんで!? なんでなのシュマちゃん!? おかしいよ! 愛してくれるって言ったじゃないか!!」


 私の否定の言葉を聞いた先生は、とても怒っているようだった。

 どうしたの先生? ちょっと怖いわ。

 こんなに怒られたのは小さい時以来だわ。

 少し……少しだけ不安になるわ。



 ──ばちぃぃぃん


 先生に思い切り叩かれた。

 あれ? どうして?


 ──ばちぃぃぃん


 なんで? 先生?


 ──ばちぃぃぃん


 あぁ、そうなのね。


 ──ばちぃぃぃん


 うふふ、やっぱり愛してくれるんじゃない。


 ──ばちぃぃぃん


 嬉しい、嬉しいわ先生。

 とても、とても気持ちいいわ先生。


 最近は愛することばっかりで、愛してくれることはなかったの。

 こんなに愛してくれるなんて、本当に嬉しいわ。


 ──ばちぃぃぃん

 ──ばちぃぃぃん

 ──ばちぃぃぃん


 フォルテ達がやってきた後は、更に先生は情熱的に愛してくれた。


 先生、もっとして。


 いいわ、もっと、もっとして。


 もっとおねだりをしたいけど、舌が切れててうまく喋れないわ。

 それでも、私の想いが通じてるのか、先生がもっと強く愛してくれる。


 ──ばちぃぃぃん


 一つ打たれる度に、脳で甘い蜜が溢れだす。


 ──ばちぃぃぃん


 一つ打たれる度に、快感が電流となり体中を走り出す。


 あぁ、いいわ。

 とても、とてもいいわ。

 狂ってしまいそう。


 ──ばちぃぃぃん


 愛されるのはいいわ。

 濡れてきちゃう。

 うふふ、はしたないかしら。


 ──ばちぃぃぃん


 あぁ、でも無理。

 こんなに気持ちいいのに、我慢なんて無理無理無理。


 ──ばちぃぃぃん


 もっと、もっと私を愛して。

 もっと、もっと強く私を愛して。

 もっと、めちゃくちゃに、もっと、もっと!


 ──ばちぃぃぃん


 もっと私を気持ちよくさせて!

 もっと私を濡れさせて!

 私に、快感をちょうだい!


 ──ばちぃぃぃん


 私は、私達は永遠なの!

 私は、永遠に愛し、愛されるの!


 ──ばちぃぃぃん


 足りない、まだ足りない!

 もっと愛して! もっと頂戴!


 ──ばちぃぃぃん




 世界中の快感を私に頂戴!!






『告 アエーシュマ・ザラシュトラの魂に”色欲の大罪人”の烙印が押されました』








 うふ、うふふ





 あは、あははは!





 あははははははははははははは!





 気持ちいい! 気持ちいいのぉ!


 これよ、これこれ!

 いいの! すっごくいいのぉ!


 もっと、もっともっと!


 ──ばちぃぃぃん


 あは、あははははは!

 足りない足りない、そんなんじゃ満足できないの!

 ほら先生、その手を握って?

 強く握りしめて、私を愛して!!


 ──ごすっ、ごすっ


 あははははははは!!

 いいわ! その調子ぃ!!

 もっと! もっとぉ!

 強く! あははは、強く強くぅ!











「その後はあのふざけた黒髪の糞ガキも殺すんだな! 偉そうにしやがって! シュマちゃんは僕のものなんだな!」


 ──────


「今ならあの糞ガキにも勝てる気がするんだな! 何がSランクだ! 何が死の神だ! 馬鹿馬鹿しい!」


 ──────


「そうだ! あいつの手足を千切って僕達が愛してる姿を見せてやるんだな! うひょひょひょひょ!!」


















 ぁ?








 駄目よ、駄目駄目。





 豚が人間の言葉を喋っただけで奇跡なの。

 何か意味のある言葉を発したことを褒めるべきだわ。




 でも、やっぱり駄目よ。

 豚が喋ったとしても、その言葉は駄目よ。





 あぁ、興ざめ。


 ロアロア、ずっと私を食べるのも飽きたでしょ?

 今度はあの豚にしなさいな。


 うふふ、やっぱり豚ね。

 ロアロアが手の中に入っていったのに、なにも気付いてないなんて。




 神様に背いた豚なんて、死んじゃっても仕方ないわよね?

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