第46話

 エリックは楽し気な表情になる。


「つまり、魂に記載された魂本来の姿、とでも言えば良いのかな。魂が活性化された場合、魂本来の姿に成る場合があるんだ。神々の力を受けたりすると魂は活性化されやすいと思うよ。因みに、私も色が変わっている状態だ」


 また三人で顔を見合わせ、それからエリックを見る。


「……あの、それは……どういう事なのでしょうか……?」


 氷川先輩の言葉にエリックは首を傾げつつ楽し気に笑っている。


「ああ、魂本来の姿は姿だよ。魂には、能力とか、容姿とか、性格に性質が元々個々人で違って登録されている訳。能力、容姿等それ等は魂の発生時点で決まっていて、転生を続ける限り変更はないんだよ。普通の状態だと、生まれた国とか、両親の影響とか受けるんだけど、魂が活性化すると、本来の姿、能力、性格や性質が発現したりするんだ。あ、ちなみに、私の元々の色は……髪はくすんだ灰色がかった金髪で、それが今の純金みたいな金髪に。瞳は青かったんだけど、今はほら、深紅でしょ? こういう感じで変わったんだ。小さい時だから、慣れたかな」


 なんというか、驚愕の事態に頭はパンク状態だ。


「ほら、取りあえず食事にしよう。それから疑問は聞くから。カイもトーヤもサツキも今日は奥の間に来ると良いよ。食べたら一緒に行くかい?」


 かい、じゃなかった氷川先輩は真面目な顔で肯く。


「分かりました。よろしくお願い致します」


 中村先輩も藤原君も肯き、頭を下げる。


「分かった。それじゃ一緒に行こう。あ、食後はちょっと時間あるから、中庭で話しようか」


 それに氷川先輩と中村先輩、藤原君が肯いた。


「「「宜しくお願いします」」」


 エリックは鷹揚に笑って、この話題はひとまず終了となった。



 そんな私達を玻璃は静かに見つめていて、玻璃は知っていたのかなぁと密かに思ったりしつつ、食事に勤しんだ。




 昨日もエリックに色々聞いた中庭に到着。

 玻璃は私の肩の上にピンと尻尾を水平にしつつ立っている。

 エリックに連れられ、氷川先輩、藤原君、中村先輩、私の順に座りつつ、ちょっと食後の休憩。



 日向先輩、設楽君、鈴木君も疑問符を顔に浮かべていたが、彼等は私達より神官の素質がないから、出来得る限り神官の仕事をしていた方が良いだろうという事で、後で報告する事になった。


「あの、伺いたいのは、何故、我々三名だけが色が変わったのかという事と、何故今日なのか、という事です。神々の力を受けたのは一昨日です。ならば昨日の朝に変わっていてもおかしくないと思いますし、儀式に携わった中村と如月の内、如月だけ変わったのも謎です。家にいる皆の容姿が変わってしまったのかも疑問に思っている点です。それに本来の姿とおっしゃいましたが、それならば色が変わっただけで容姿が変わっていないの何故なのかも知っていらっしゃるのなら教えて頂きたいです」


 氷川先輩が意を決した様に質問し、藤原君も中村先輩も肯き、私も表情を改める。


「成程ね。了解。それなら一つ一つ答えていこうか。魂本来の姿になった人は凄く尊重されるからね。知ってた? ルナやカイ、トーヤを皆が注視していたの。いやあ、一度に三人もとか、ほんっとうにもの凄いんだからね。皆の注目の的だよ。さて、それじゃ説明しようかな」


 そう言って言葉を切るエリック。



 氷川先輩も藤原君も中村先輩も、勿論私も、じっと耳を傾ける。


「まず、何故三人だけか? という点については、三人が取り分け魂の力が強く、より一層影響を受けたから、だと思う。理由は知らない。ただ三人共、ちょっと普通とは違ったって事。ここまでは良い?」


 エリックも理由を知らないというのなら、仕方がない。

 異能力の関係もあるのかもしれないとはこっそり思ったり。


「何故今日なのか? というのは、これも想像でしかないけれど、三人が神殿にそろったから、じゃないかな。三人の魂は互いに影響を及ぼし合いやすいのだと思う。だから全員そろった今日、魂の本来の姿になったのだろうね」


 私達三人は、どうやら何か特別な関連性でもあるのだろうか……?

 異能力以外の共通点は、特に無いと思うのだが……


「サツキでなくて、何故ルナなのか? か……ルナは、能力が特別なのだと思う。そういう点ではカイもトーヤも同じだね。だからだろうとしか言えない。ごめんね」


 その言葉に、私は首を傾げるしか出来ない。

 自分が特別だとは到底思えないし、自信も無い。


「他の皆は……どうかな……変わっているかも……何せ魂を改造されたからね。変わっていてもおかしくはないか……人を向かわせて、確認させよう」


 氷川先輩が即座に頭を下げる。


「ありがとうございます。お手数をおかけしますが、よろしくお願い致します」


 それを見て慌てて、藤原君、中村先輩、私が頭を下げる。


「気にしないでくれて良いよ。優秀な人材に何かあっても勿体ないし。さて、最後の、色が変わっただけなのは何故か? という点については簡単だよ。魂本来の容姿がそれって事。つまり、生まれつき魂の本来の色ではないけれど、容貌は魂本来のモノだったって事」


 氷川先輩は悩みつつ口を開く。


「……それは、元々の国でも違和感が無く、この世界に来ても現地の人間に見えるという事にも何か関係があるのでしょうか……?」


 エリックは楽し気に笑いながら話し出した、


「関係あるだろうね。異能力がある事も関わっているかもしれないけど。簡単に言えば、三人の魂の容姿は、何処に行っても馴染む様に出来ていたって事じゃない? だけど生まれた国や両親に合わせて色は変えていたと。そういう事じゃないかな」


 私達四人は何度目か分からないのだが……また顔を見合わせ、無理矢理納得するしか、出来なかった。

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