第20話
午前中はクラゲとかチンアナゴとか色々見てまわった。
その間、桃々とずっと喋っていたけど、桃々と反対側の隣にはいつも伊吹くんがいた。
別に何を話すわけでもないけど。
たまたまかもしれないけど。
そんな事に意識を向けてしまっている自分がいやだ。
ちらっと伊吹くんの方を見てみれば、目があって「ん?」って顔をされた。
私ばっかり意識してるみたいで、やっぱり居心地が悪い。
お昼の時間になって、ご飯を食べるスペースでお弁当を食べる。
やっぱり私の隣には伊吹くんがいる。
「伊吹の弁当、いつもうまそうだよなー!」
水島くんはそう言いながら、伊吹くんのお弁当から卵焼きを1つ取った。
「いただきっ!ん!うまー」
水島くん、めちゃくちゃ美味しそうに食べるな…。
伊吹くんの卵焼き、どんな味がするんだろう。
甘い系かな、しょっぱい系かな。
「井上さんも卵焼き、食べる?」
「へ?」
「だって、めちゃくちゃ卵焼き見てくるから」
え?!
気がついたら班のみんなの視線が私に集まっていた。
私、そんなに卵焼き食べたそうな顔してた!?
え、めちゃくちゃ食いしん坊みたいになってない!?
「いやいや、いいよ!私こんなにたくさんお弁当持ってきてるから大丈夫!」
そう言いながら男子並みにでかいお弁当を伊吹くんに見せる。
テンパりすぎて、自分で追い討ちをかけた気がする。
「ごめんねー。新奈、食べ物には目がなくて」
「ちょ、恥ずかしいからやめてよ」
すかさず桃々がサポートしてくれた。
フォローにはなってないけど…。
伊吹くんは私と桃々の一連の流れを見た後、私のお弁当箱の上に卵焼きを乗せた。
「いいよ、食べなって」
「あ、ありがとう」
心して伊吹くんからもらった卵焼きを食べてみる。
みんなに見られている気がするけど、もうここまできたら手遅れだ。
私の大食いキャラは定着してしまっただろう。
そう開き直って、思いっきり口を開けて食べた。
「ん!美味しい!!」
伊吹くんの卵焼きは甘い系だった。
「こんな卵焼き初めて食べた!」
「えー、井上さんがそこまで言うなら俺も食べてみたいんだけど」
「私もー」
班のみんなが私の食べる表情を見て、次々にそう言った。
「井上さんって、すげーうまそうに食べるんだな」
ボソっとそう言った水島くん。
水島くんも私と負けないくらい美味しそうに食べていた気がするけど…。
「水島くんだって…」
私が水島くんに喋っている途中だったのに。
伊吹くんが前屈みになったせいで、水島くんの顔が見えなくなった。
「蓮、これも食っていいぞ」
「お!まじ?」
伊吹くんは私に背を向けたまま、水島くんと話し始めてしまった。
ま、いっか。
私も自分のお弁当を食べよう。
午前中、色々歩き回ってお腹が空いていたから、あっという間に食べ終わった。
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