第18話



席替えをして間もなく、課外授業に行くことになった。


席で班を決めたから、伊吹くんとは同じ班になってしまった。


桃々とも同じ班になれたことが唯一の救いだけど。


課外授業の行き先は水族館・植物園・裁判所・城から選べる。


私たちの班は水族館を選んだ。


桃がペンギン好きで、ゴリ押ししたのだ。



「水族館、初めて来た」



ぼそっと、そうつぶやく伊吹くん。



「まじで?デートとかで来ねーの?」


「そうやって俺にふっておいて、自分が彼女ときたことがあるから俺に自慢しようとしてるな?」


「ばれたー?実は最近ここにきてさ「いや、聞いてねーから」



水島くんと伊吹くんの会話は聞いたらダメなような気がするのに、楽しそうに大きな声で喋ってるから聞こえてきてしまう。


確かにあーやって水島くんに自慢されてたら、焦って自分もデートしてみたくなるのかも。


伊吹くんなら、私に頼み込まなくてもすぐ実現できるはずのにな。



「あれ、新奈も水族館だったんだ?」



後ろから声をかけてきたのは渉。


どうやら渉も水族館を選んでいたらしい。



「懐かしいよな、ここ」


「昔、おばさんに連れてきてもらったよね」


「なー、覚えてる?あの時、確かヒトデを…「もう、それは忘れて!」



渉は私の黒歴史を喋ろうとしたから、すぐに止めた。


クラスメイトに聞かれていたら恥ずかしい。



「ほら、もうすぐ時間だから渉は自分の班に戻りなよ」


「はーい。あ、そうだ。今日部活ないから久々に一緒に帰らない?」


「そうなんだ、分かった」



渉に返事をすると、渉は自分のクラスの方に戻って行った。



「相変わらず渉くんと仲良しだねー」



そう言ってニコニコしてるのは桃々。



「普通だよ」


「ねー、知ってる?渉くん最近サッカー部に入ってから、女子に人気あるんだよ」


「へ、渉が?」



桃々はテニス部で、サッカー部が使っているグラウンドのすぐ隣にテニスコートがあるから、たまに渉情報を私にくれる。



「新奈はそばにいすぎて、感覚が麻痺しちゃってるんだよ。身長も高いし優しいし?かなり優良物件だと思うんだけどな」


「そうかなー」



今までずっと近くにいたから、よく分からなかったけど、桃々が言うならそうなんだろう。


そういえば、今まで渉に彼女がいるとか聞いたことがない。


もしかしたら私が渉の恋愛邪魔してる…?


そう思うと、渉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



「私、渉と一緒にいるの、もっと控えようかな」


「なんでそうなるのよ」


「渉の恋愛、邪魔したくない」


「え?本気で言ってる?」



なぜか桃々は呆れ顔をした。



「渉くんが不憫ね」



そう付け加えて。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る