第15話
電車に乗り込むとすごい混んでいて、いつも以上に車内はぎゅうぎゅうだった。
私と渉は扉付近に立つことになった。
なのに、私は全然苦しくない。
渉が私をかばってくれてるんだ。
渉はいつも優しい。
「私は大丈夫だからもっと寄っていいよ?」
「俺は大丈夫だよ」
「いいから」
そう言って渉の腕を引っ張った。
渉は私を心配するくせに、渉自身のことはおろそかになっているのを知っている。
「なにすんの?」
「寄りかかっていいよ。ちょっとは楽しなよ」
私は渉が心配だからそう言ったのに、渉はなぜか眉間にシワを寄せた。
電車を降りて、いつもの帰り道を渉と一緒に歩く。
「こうやって一緒に帰るの、久しぶりだね」
「そうだな」
「そういえば渉、部活はどんな感じ?」
「ブランクあるから結構きつい。けど楽しいよ」
渉は最近、サッカー部の練習に出るようになった。
先生からサッカー部に入らないかと何度も言われていたけど、ずっと断っていた渉。
今回は怪我人が出て、どうしてもと言われて仕方なく参加しているようだった。
渉は小学校の頃からサッカーをしていて、高校に入っても続けるものだと思ってた。
だけど辞めてしまったから、どうしてだろと思っていたけど、嫌いになったわけじゃないみたい。
「楽しいならそのまま続ければ?」
「うーん、それはないかな」
「なんで?」
「まあ、色々あるんだよ」
そう言って眉を下げながら微笑む渉。
サッカーを辞めた理由を私に教えてくれないのが少し寂しかった。
私にも言いずらい何かがあったのかな。
「いつもこんな時間まで部活なの?」
「そうだな、だいたいこの時間かな」
「毎日大変だねー」
「てか新奈こそ、こんな時間まで遊んでちゃダメだからな?」
「渉ってホントお父さんみたいなこと言うよね」
「心配なんだよ」
そっか。
さっき、渉が不機嫌そうに見えたのは、私がこんな時間まで遊んでたからか。
渉が私のことを心配するのには理由がある。
私がまだ中学生の頃、帰るのが少し遅くなって、不審者に襲われそうになったことがあった。
心配して私のことを探していた渉が発見してくれて、私は助かったんだけど。
それ以来、渉は過保護なまでに私を心配する。
クラスが離れても迎えに来てたのは、そのことがあったからだと思う。
「ねえ、ちゃんと分かってる?新奈は隙が多いんだよ?」
「分かってるよ!そのために護身術も学んだし、防犯グッツも持ち歩いてるもん」
「そういうことじゃなくて。はー、心配すぎる」
「え、なんで!?」
今防犯対策の話してたよね?
渉はなんの心配をしてるの?
「なんででしょう」
渉はそう言いながら私のほっぺたをつねった。
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