FILE150:産地直送!しなれフロストサーペント
「させない!」
グルマンの前身から放たれた激しい銀色のオーラが命中する寸前、アデリーンはビームシールド・ブリザウォールを持ち出してバリアーを展開する。
オーラ攻撃は拡散され、その威力は激減された。
「むむむ!? そちらがそうするなら、二度と再生できないよう、ミンチにしてやる」
「その人殺しみてーな物言い、そっちが本性だなっ!?」
「アサッシン崩れにだけは言われたくない! ワタクシはシェフだ。人呼んで料理の鉄人だッ」
先ほど「怒っている」と述べたとおりに感情を露わにしたグルマンが、武器を素振りして円を
「そこまでやるーっ!?」
「やって悪いかね」
回避に成功したアデリーンも驚きを隠せないが、カトラリーガイストは街路樹を巨大ナイフで斬った!
あたかも、「お前もこうなるぞ」と警告するように。
「これも幹部怪人の実力か……」
「ヘリックスとは長いこと戦って来たけれど。彼、やっぱり手強いわ」
「この程度でサティスファクションしてもらっては困る。ワタクシの怒りは、まだまだ収まりそうにないのでね……!!」
また持ち替えたグルマンは地面にフォーク型の武器を突き刺して、地響きを起こす!
遠くにいた市民も思わずたじろぎ、その場に倒れてしまうほどの力が働きかけた。
「きゃあ!?」
「くっ!!」
近くで食らった2人は吹っ飛ばされ、這いつくばらされてしまう。
無慈悲ににじり寄るグルマンの姿は、シェフというよりは殺人マシーンのようでもあった。
「やるだけやったわ。あれを使うしかない……」
状況を打破したいアデリーンはネクサスフレームを取り出して、パワーアップ変身を図ろうとしたが――。
敵はそれを見逃してはくれない!
「使わせませんよ!」
「うあっ」
目を光らせたグルマンが両手に持った武器から衝撃波を放つ!
ネクサスフレームははたき落とされ、アデリーンも付近に転がされてしまう。
「アデレードっ!?」
「トレビアンでファビュラスな友情もここまで。終わりにしよう……。ぜいたくな悪夢と悲鳴のフルコースのシメを飾るのは、君たちだ――ッ!」
その時、上空からテイラーグループのロゴがプリントされたドローンが飛来する。
何やら縦長の箱を抱えていた。
突然現れたそれに、その場にいた誰もが目を奪われる。
「誰もドローンの航空許可は出していないぞ!」
蜜月がその間にネクサスフレームを拾い上げ、アデリーンにパスした。
手際の良いパートナーに、サムズアップを送る。
「……テイラージャパンからね。オープンセサミ」
箱を開くと、その中には青みを帯びたメカニカルなムチが内蔵されていた。
もちろん手に取ってみたが、メタル・コンバットスーツ越しでも伝わってくるほど手触りが良い。
「これは……鋭意製作中だったフロストサーペント!」
「ウィップなのかビュートなのか……。テイラーグループの作ったおもちゃが何になる?」
「あなたを倒すのに役立つのよ。今から、カラダに教えてあげる」
張り倒されるも、起き上がったグルマンに対し、アデリーンが啖呵を切る。
ちょっとばかり女王様っぽく振る舞ってみただけ――なのだが、妙に様になっていた。
なお、ネクサスフレームは取り付けはしたがまだ使わない!
「やっ!」
「なにいっ」
果敢に立ち向かい、フロストサーペントを早速しならせて試すアデリーン。
彼女はぶっつけ本番でこのムチの使い方をマスターしようとしている。
いや、正確にはその手に握った時点で使い方がインプットされたのだ。
これぞ、テイラーグループ脅威のメカニズム。
「ほーら……♪」
空気を読んだ蜜月が見ている中、敵の攻撃を避けたアデリーンは反撃としてムチを伸ばしてグルマンが持つ巨大ナイフに巻き付けた。
手放そうにも拘束力が強く、グルマン自身も引っ張られている。
「ホビーが悪いぞ、アブソリュートゼロッ!?」
「わかってないわね。気取ってみたくもなるのよ」
「きゅ、キュイジーネに影響されてなーい……!?」
サディスティックながらも優雅で気品のある女王のごとき振る舞いを見せるアデリーンに戸惑いながらも、相方を支援すべく蜜月はWスピアーを手にしたまま、前方で高速回転させて急接近。
しばらくグルマンとの打ち合いが続いたが、状況はアデリーンと蜜月にとって有利な方向へ傾きつつある。
「食らえソーサー!」
拘束から抜け出すも、間髪入れずにムチで叩きつけられたグルマンはどこからともなく皿を投げて反撃。
客に出すものではなく攻撃用のものだ!
着弾と同時に火花を上げ、アデリーンたちを牽制する。
「味わいたまえ、ペッパーの煙幕!」
続いて、コショウを振ってばら撒く。
もちろんこれも戦闘用で、アデリーンと蜜月の視界を悪くしてやろうとしたのだ。
あまり効果は無かったが、しかし、本命は次の攻撃にある。
「このスキレットはどうだ?」
炎をまといしスキレットが勢いよく投げつけられ、大爆発!
2人を吹っ飛ばしただけでなく、グルマンはその隙にアデリーンを狙って今度はフライパンをブーメランのように投げた。
「きゃー!」
「炒めてやる!」
大きなフライパンに乗せられた――が、それも抜け出して、アデリーンは上空からムチを伸ばして反撃。
着地と同時にグルマンの片腕に巻き付けた。
「WHY!? クッ……油断しておったわ……」
「サユリ母さんやアヤメ姉さんたちをさらった罪は重い。成敗してやる! スパークル、ネクサぁぁぁぁ~~~~~~ス!!」
「いや竜平っちは~!?」
ネクサスフレームを起動し、強化形態・スパークルネクサスへと変身する!
アブソリュートゼロとしてのスーツには新たにピンクとエメラルドグリーンの配色が加わり、コート状の追加パーツも加わった!
そして冷たく光り輝く氷の翼を展開する――。
「草刈流槍術・
相手がムチで縛られた隙を突いての連撃の後、貫通してすり抜けるほどの速度とパワーで突進。
グルマンは拘束から解かれた代わりに転倒する。
「まだだ、侮るなレディース。ワタクシはルーザーにはならんよ!」
「ッ!!」
ジャンプして回転しつつフォークやナイフ、スプーンに小皿をばらまく。
いずれも着弾すると同時に爆発だ!
2人のヒロインは巧みに避けながらグルマンに近付き、打ち落とす。
「草刈流槍術・
しかし彼女たちは退かない。
精神を研ぎ澄ませて蜜月が
同じ風に乗ったアデリーンが追撃し、フロストサーペントで滅多打ちにする。
――その光景はある意味、
「ショッキーング…………す、ストロンゲスト」
「とどめッ」
アデリーンの手からフロストサーペントに冷凍エネルギーがエンチャントされた時、極彩色のまばゆい光が放たれる!
彼女の想いに呼応した、冷凍エネルギーのきらめきだ。
「パニッシュメントスノー!」
「ショッキ――――――ング!!」
滅多打ちにするのではなく、きつくて力強い1発を見舞う!
それはいともたやすく、カトラリーガイストと化したジャン・ピエール・グルマンを爆散させた。
敗北に焼けただれた彼は、地べたに沈んでもなお落としたマテリアルスフィアに手を伸ばすも、限界を迎えたカトラリーのスフィアは砕け散った。
「わ、ワタクシの負けだ。最後に……これを……」
罠か?
変身を解除しながらも、そう警戒した2人だったが、彼が懐から何かを出したのを見ると、敵意がないことを察して彼の手を取る。
「ワタクシの……秘蔵のレシピノートだ。多国籍料理や、君たちにごちそうしたカレーライスの作り方も、載っている……」
よく使い込まれていたその手帳は、分量から何から何まで1つ1つが丁寧に書き込まれている。
紛れもなく悪人ではあったが、少なくともジャン・ピエールの料理に対する情熱と愛情は本物であったことを、2人は改めて実感した。
「――これでチャラになんかしないわよ」
「ワタクシが悪かった。クリミナルを……償わせてくれ」
とくに卑怯なマネをするわけでもなく、ジャン・ピエール・グルマンは……死なず。
気を失っただけであったが、自分たちなりに敬意を示してから、アデリーンは氷の鎖を精製するとグルマンとセザールを1ヶ所に拘束して、罪状を記した雪の結晶マーク入りのカードを投げる。
【この者、武器密売・拉致監禁・殺人未遂犯。ヘリックス幹部とその側近につき要注意!】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます