第9話 前世は未亡人
俺はミヤスコの真の姿を明かすことを決めた。そうしなければ、俺の名誉が落ちるだろうし、俺への誤解も解けないままだろう。
「みんな……俺の話を聞いてくれ。ここにいる六条ミヤスコはだな、
それで、こんな性格になったんだよ。『遠くのイケメンより近くにいる手ごろな男』が彼女の
俺はミヤスコにとって、手ごろな男だろうな。
「おいおい、本当なのか?」とあわてて教師がミヤスコへ聞いた。
ミヤスコがけらけらと笑う。
「やだなあ、もう。ヒカル君。人の年齢を明かさないでよ。47歳なんて、年齢を明かすと、男が寄り付かなくなっちゃって、ミヤスコ、困るわ。37歳で
その言葉に、教師がぽかんと口を開けた。
クラス全員から、血の気が引いていくのが俺には分かる。
その気持ちは、俺にはよく理解できるつもりだ。
ミヤスコの見た目は16歳の女子高生だが、中身は47歳の未亡人なのだ。これから老いていく身だった女が、
俺だって、この事実を彼女から初めて聞かされた時は、困惑したものだ。
彼女は恋愛の甘いも
俺は父の実家へ
彼女の一人で生きてきた人生には同情してやってもいい。
「――だからさあ、
だからと言って、俺へ
俺ははっきりと言ってやった。
「ミヤスコ、俺はそんな遊びにはもう興味がないんだ」
そう言われたミヤスコは、さっそく、大人ながらの割り切りの早さで、隣の席に座っていた男子高生に声をかけた。
「へい!そこの彼氏。私と遊ばない?」
「喜んで。なら、今夜、俺と一緒にドライブに行きませんか?」と男子は、
だが、彼は運転免許も車も持っていない。
「あはは」とミヤスコは笑った。「やっぱり、生の男子高校生はいいわあ。いきがいいもの。転生した
「生と言うな。生と」と俺は苦言を
すっかり、彼女はご機嫌が良い。
気を取り直した教師がコホンとせきばらいをして、何事もなかったように授業を始めた。ただし、授業の終わりになって、
「氏原……お前、六条に使ったほれ薬は、合法なんだろうな?」と真顔で俺に向かって聞いてきた。
大人が転生の話を信じてくれないのはわかっていた。
それはそれでいい。
問題なのは、アオイだ。
仮に、アオイがこの超常現象を信じてくれたとしても、それで俺の浮気が帳消しになると言うわけでもないのだ。今度また、ミヤスコが俺のことを好きだと言ってみろ。
俺が転生するはめになる。
助けが必要だ。そう考えた俺は、昼休憩の時間になると、急いで、友人の遠野の所へ走っていった。
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