第25話 作戦、決行
リーリスの話を聞いてみると、この街の騎士を軽くひねってきたらしい。多分、圧倒的な力でも見せつけたんだろう。
「では改めて、モーリシャス、
「そ、そうですね。我々としましても彼が不必要に傷つくのは望むところではありません。そのため、現在この街に滞在している冒険者に対してクエストを出し、選りすぐりの者を連れてきました」
そう言うと彼は廊下の方に向かって声をかけた。その言葉に答えるように入ってきたのは、金髪碧眼の男性を先頭にした四人の男女だった。男女二人ずつで構成されたそのパーティは、まさに僕が想像していた「冒険者のパーティ」そのものだった。
「初めまして、俺はこのパーティ『明星』のリーダーで剣士のレオンだ」
「ベッドから失礼します、ユウキ・ハヤトです。こっちはリーリスです」
「リーリスだ。よろしく」
レオンさんの紹介によると、黒い短髪を逆立たせた頬に傷のある男性が槍使いのガロ、ローブに三角帽子をかぶったいかにもといった様相をしているのが魔術師のシエラ、空色の髪をおかっぱにしている背の低い少女が
僕とそれほど年の変わらない彼らは、黒騎士討伐というクエストに一も二もなく声を上げた冒険者だったらしい。
リーリスやモーリシャスさんと共に作戦を詰めた後、彼は一人で病室に戻ってきて僕に彼らのこれまでの話をしてくれた。
「俺たちはやっぱり憧れで冒険者をやっているからさ、誰かを守るために戦うのってすごく嬉しいことだと思うんだ」
「すごいですね、レオンさんは。僕はまだまだ弱いので……」
「そのことに悩めるなら君は強くなれるさ。それを導くのも先達の務めだ。君は安心しているといい」
「頼もしいですね」
「それはそうさ、これから後輩になるかもしれないやつの前でカッコ悪いとこ見せられるわけがないだろ」
そう言って片眼をつむる彼の姿はとても様になっていた。この人なら信用できると、そう思えるぐらいには格好良かったのだ。
そして数日後。僕たちは街の外の森の前で最後の準備を整えていた。
「恐らく向こうはターゲットが森の近くに来ていることを察知しているはずだ。しかしいまだ動いていないということは、油断しているのか、絶対に追いつくことができるという自信があるかだ」
「だけど俺たちはあえて黒騎士に向けて進むつもりだ。相手がどんな手を持っていようと、ハヤト君を逃がすことが優先される」
「そうだな、主様がいることがここに留まる理由なら、
「さすがに俺たちも黒騎士そのものを見ていない以上、勝てるとは断言できない。だが君たちが逃げる時間を充分とるくらいには粘ってみせるさ」
もちろん死ぬつもりなんてこれっぽっちもないけどな、とおどけた調子で言うレオンさんに、硬くなっていた僕らの雰囲気が和らぐ。
僕は不安を隠すように靴ひもを結び直して、リーリスの隣に寄っていった。
「リーリス」
「どうした、緊張しているのか?」
「まあね。でも、冒険者の戦いを生で見ることになるからちょっと興奮してるかも」
「…………ハハ、主様はなかなか剛毅だな。それでこそだ」
「そろそろ時間だ、出発する!」
レオンさんの呼び声に僕らは歩き出し、森の中へと入っていった。
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