第2話 風の精霊ぺぺとの出会い


ノーザンランド帝国暦319年 秋

 

 昼の皇宮門の交代にスタンバイする2人の騎士。

 1人は銀色の髪を一つに編み込みで結い上げている少女。もう1人は短い黒髪に前髪はしっかりとあげて後ろに流している少年。


「あぁーー。今日お前が一緒なのか。あの外野なんとかしろよ。うるさいんだよ。」 


「あっ、ロバート!あれっ?今日前髪あげてるの?なんだか大人っぱいよ。」

ロバートは腰に手をあて髪を触りながら、嬉しそうに話す。


「ふっ、まぁな。そろそろ私も大人のように身嗜みだしなみを整えようと思ってな。」


「あっそう。」

 まぁ、そんなこと言う自体子供っぽいのではとリーラは思いつつ聞き流す。 


「自分で聞いておいて相変わらずつれない奴だな。」


カァーン、

カァーン、

カァーン。

広場の鐘が鳴る。


「ほら、行くよ。」


 2人で間隔を作り、歩方を合わせ中央まで進む。中央に着くと左右に別れ、朝から駐在している騎士と交代する。


「第1番隊リーラ・ハントン、交代に参りました。」



外野からの歓声が湧く。

「きゃー、今日は、リーラ様よ!」


「素敵!今日もお美しいわ!」


女性達にニコリと笑顔で笑いかける。


「こちらも見てくださったわ!」


「今日はひとつに結い上げていらっしゃるわ。」

このヘアスタイルはリーラファンと称するエリザベス殿下の侍女が結い上げてくれたのだ。


「お前も大変だな。」

交代する騎士が声をかける。


「本当、勘弁してほしいです。」


 この皇宮前広場に衛兵の交代式を見ようと平民から貴族の女性がお目当ての騎士を見にやってくる。特に貴族の女性にはなぜか交代表がばれているらしく必ずお目当てを狙ってくるらしい。

 リーラが第1番隊に所属してからは流星の如く現れた美しき女黒獅子騎士とかとにかく女性達がつけるネーミングセンスはすごい。

 リーラはなぜか平民女性に人気があり、女性騎士を愛する会と称するファンクラブのリーラ部門でファンが増えているそうだ。1番人気は断トツ、キャサリンだ。

 

 リーラは3時間立ちっぱなしはつまらないので、たまにニコッと女性達に笑いかけると、どこからが「きゃー!」と声が上がり反応を面白がっていた。

 それをいつも横で見ているロバートは自分に一切の声援がない事にいら立ちギロリとリーラをにらむ。


周りの女性達は「あの騎士様も人相がよければモテるのにねぇ。」と同情されている。女性達のひそひそ話をきこえ、リーラは笑うのを必死に堪えながら3時間を過ごしているのだ。

 これが二人が皇宮門の担当になった時のいつも光景である。


「あの女達どうにかならないのか?

うるさいんだよ。」

仕事が終わり、ロバートがプンプン怒りながらリーラに文句を言う。


「周りがうるさくてもちゃんと集中して仕事しないと。」


「言うことはもっともらしいが、おまえこそ仕事してないだろう。わざと女の子達に笑いかけてるくせに。

 最近、ようやくおまえのことがわかってきたよ。あいつもなぜこんなのがいいんだろうか?」


「はぁ?何?なんか言った?

 聞こえないよ。」


「なんでもない。じゃあ、お疲れ。」


「じゃあね、お疲れ様。」


今日は早番(朝早くから出勤)なので、門の警備が終われば仕事は終わりなのだ。


「やっと、仕事が終わったー!

 さぁ、帰って家でゴロゴロしよう。」

リーラはルンルンと家路に着いた。



青い鳥がパタパタ飛んで来て枝に止まる。


(あの娘が光の継承者ピヨねぇ~、あっ足滑らしてしまったピヨ。)


木から滑って青い鳥が落ちる。

ポテ。


「あれっ?こんな所に鳥が死んでる?」


(死んでないピヨ。)


「癒しの力かけちゃえ。」


リーラの手から出た白銀色の光が青い鳥を包みこむ。


「やめろピヨー。死んだふりしてただけピヨ。」

鳥がいきなり起き上がりしゃべりだす。


『この気配は…おまえ、ぺぺか?』


「おまえ、エクストリアピヨ?

 かなり久しぶりだピヨ。

 ずっと城の宝物庫に閉じ込められていたと思ってたピヨ。」


『うるさい。なぜ、ここにいる?』


「光の力を感じたから偵察にきたピヨ。」


「この鳥とエクストリアは知り合い?」


『鳥の格好をしているが、風の精霊で同じ精霊仲間だ。しかし、ぺぺ、なぜ鳥なんだ?』


「それはピヨねぇ~。話せば長くなるピヨ~。」


青い鳥はリーラの肩に乗る。

「精霊王さまと向かった北の泉でみんなと平和に暮らしてたピヨ。

僕達は人間や動物には見えないけれど、ある日突然やって来た一匹のじいさん鳥は僕が見えたみたいで仲良くなったピヨ。冬が来て南へ渡らないといけなかったけれど、もう渡る力がなくなったピヨ。

じいさん鳥は言ったピヨ、

「俺は死ぬけど、おまえがこの身体が欲しかったやるぞ。」

あいつは気付いてたピヨ。

 僕が泉の周りじゃなくてもっと広い世界が見てみたい気持ちを。

 僕は広い世界に出たがってたピヨ。あいつの消えゆく魂に僕の魂を融合する契約をしたピヨ。

 元々形を持たない僕達の魂と形を持つ生物の魂の融合は難しいピヨ。でも、じいさん鳥はきっと綺麗な心の持ち主で僕にこの広い世界に見せてやってほしいと願いを込めてくれたピヨ。だから今はじいさん鳥の体を使い色々なら景色も見れる。あいつは喋れたから人と会話も出来るピヨ。」


『今も青い鳥の魂と共存しているのか?』


「しばらくは一緒に共存したピヨ。でも老いゆく魂だったからかなり昔に深い眠りついたピヨ。」 


「素敵だね、鳥と精霊の友情!

 私、リーラ!よろしくね。ぺぺ!」


「よろしくピヨ!」 


『その、ピヨピヨいらなくないか?』


「うーん、わかってるピヨ、口癖ピヨ。許してピヨ。」 


「かわいいから許す!」

リーラはぺぺに頬を近づけてスリスリする。


「リーラ、気に入ったピヨ。今日からお前達の家で世話になるピヨ。」


『『?!』』



 ダリルが仕事が終わり家に帰ってきた。

「今帰ったぞ。」


「おかえり」


「おやっ?この気配は確かリンダのつがいピヨ?久しぶりピヨ!」


片方の翼を上げ挨拶するぺぺ。

呆然と立ち尽すダリルは、

「なんだ、この鳥?」


「昔から愛想悪いと思ってたけど変わらないピヨ。あれ?

でも、お前なんでこの時代にいるピヨ?幽霊ピヨ?」


「……リーラ、また変なもの、拾ってきたな。」


「失礼ピヨ!!」

ぺぺは翼をバタバタさせながら怒っている。


「この青い鳥、風の精霊らしいよ。青い鳥に身体を借りでるんだって。」


「精霊様?それは、失礼しました。」


「しばらくうちで暮らすらしいよ。」


「はぁ??」


「安心しろピヨ。僕はなかなか役に立つピヨ~。」


「なんとも賑やかになったな。」


ピヨ~ピヨ~とご機嫌に歌うぺぺを微笑みながら見る二人だった。






         深夜


パタパタ。


ぺぺは暖炉上に止まる。

暖炉上に掲げる短剣を見上げる。 


「難儀なものピヨねぇ。おまえもそこにいるのかよピヨ。」


短剣は何も語らない。


「わかってるピヨ。言わないピヨ。」


パタパタ。

居間に静けさが再び戻っていく。



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