第17話 卒業と別れ

カーン、カーン。

訓練場に剣の音が響く。 

「おやっ、陛下いらっしゃたんですか?」

ダリルはクリストファーに気づき声をかける。

「吹っ切れたようだな。」

「はい、白馬に乗った王子様じゃなくてが励ましてくれたおかげですよ。」

にやりと笑うダリル。

「また、ハルクだな。

立ち直ってくれて良かった。」

歓声が上がる。

リーラが勝ったようだ。

クリストファーは安堵あんどの表情でリーラを見つめた。


 リーラは順調に勝ち進み、5回戦をむかえる。

 正面をみる。

 相手はにかっと笑う。

 リーラもにかっと笑い返す。 

 相手はアデルだ。


「第5回戦目を行う。呼ばれたら前にでろ。シャルケ組リーラ、シャルケ組アデル前へ。」


お互い向きあい剣を合わせる。

「第5回戦開始!」


アデルが最初に打ち込みをいれる。

カキン。

「くっ。」リーラは受け止めながらアデルの力の強さを感じとる。

2人は離れ距離を取り向かい合う。

力が強い奴の打撃をまともに受けてはいけない。

キャサリン隊長の助言だ。

私の利点はスピードと打撃力の正確さ。

アデルは剣を大きく振るが素早いリーラはその振りを避けて行く。

シュッ、シュッ。

「逃げんな、リーラ!」

アデルは剣を上から振り挙げ、リーラを狙う。

にやりと笑うリーラを見たアデルはしまったと感じる。横に避けたリーラは振り下ろされた瞬間を見て剣を横から思い切り打ち込み、さらに打つ!!

アデルはバランスを崩し倒れた。

「負けたー。」

アデルが地面を叩く。


「勝者、シャルケ組リーラ!」

歓声が湧き起こった。 


「だからいつも剣を振り上げ過ぎだって言ってるのに。人の助言聞かないんだから。」

「ちぇっ。」

2人はそう言いつつ握手する。


 他の対戦を見るとキース組のロバートとベンジャミンだ。

 昨年はベンジャミンに軍配は上がったが今年はどうなんだろうか。

 歓声が上がる。

 ロバートが勝ったようだ。互いに握手と抱擁を交わしている。


「最終決勝線に進めるのは、3名。勝ち数が多い者が優勝だ。

シャルケ組ルマンド。キース組ロバート、シャルケ組リーラだ。

すぐに始める。

呼ばれたら前に出ろ。シャルケ組リーラ、キース組ロバート前へ。」


あの事件以来に顔を合わせる。


2人は構え合う。

開始の掛け声の合図と同時にリーラは後方に一旦下がり、ロバートの右側を狙うように打ち込みを入れる。

カキン。

「はやっ。」

ロバートは剣を受けるが、次から次へとリーラの攻撃が続く。



「リーラのスピードが上がったわね。」 

キャサリンの褒め言葉に会場に来ていたオースティンが「あぁ。」と同意する。


ロバートも負けじと打たねばと剣を大きく振る。リーラが剣を受け止めるかと思われたが避けられバランスを崩してしまう。

「おっとと、えっ!!」

リーラに足も引っかけられ転倒する。ロバートは素早く立ち上がるがリーラの剣が喉元のどもとにくる。

「うわっ。負けました。」

手を挙げるロバート。


「勝者、シャルケ組リーラ。」

うわぁーと大きな歓声が上がる。


リーラはにかっと笑い、

「私のかち〜。」と言うとロバートに手を差し伸べ2人は握手する。

「リーラ嬢、私も1番隊配属なんだ。これからもよろしく!」

「本当!よろしくね!」


「決勝戦二回戦目。

すぐに始めるぞ。

呼ばれたら前にでろ。

シャルケ組ルマンド、キース組ロバート、前へ。」


ロバートが絶叫する。

「えっ?!続けて戦うのですか?」

敗者は続けて戦うらしい。


2人は向き合い戦い始める。

剣が重なる音が響く。


「勝者ルマンド」

歓声が大きく聞こえなかったが、握手を交わす時にルマンドとロバートは何かを話をしているようだ。


次は、私だ!

「決勝戦3回戦目。

すぐに始める。

呼ばれたら前にでろ。

シャルケ組ルマンド、シャルケ組リーラ、

前へ。

始め!!」


お互い構えのまま相手の動きを待つ。

やはり、ルマンドからは動く気がないことを察したリーラは自らが先手で右、左へと何度も打ち込みを入れる。

カキン、カキン。

お互い素早い動きには慣れているのだろう。リーラの打ち込みをルマンドは流していく。

「くそっ、軽い。全て流されている

カキン、剣が合わさりあいギリギリとなる。

 くすりと微笑むルマンドは楽しんでいるように見える。余裕顔されしゃくさわったリーラは激しい打ち込みを入れる。打ち手を読まれていると判断したリーラは流れを変えようと剣を大きく振り挙げルマンドに渾身こんしんの一撃を与えようと飛び上がり思い切り振り上げる。

「おぉー!」周りから歓声が上がり

一撃を与えられると思いきや避けられ、ルマンドはリーラの後ろに周りこむ。

「あぁーー。」の周りの残念そうな声が響く。

「逃げられた。」と思うと同時に不安定な体勢であったリーラの背中が軽くポンと押されてしまう。

「わぁ!わぁ!わぁ!」

不格好に腕を振り回して地面に顔をぶつける!と思ったその瞬間にルマンドはリーラのお腹に手を回し起き上がらせてくれた。

「勝者ルマンド!」


何やってるんだと野次か飛ぶがいい試合だったと周りから歓声がドッと上がる。


「私の勝ちだね。」

「あー負けた〜。」

「2年間一緒に練習したからリーラの剣はわかってるつもりだよ。」

「……。」

悔しくて言葉がでず、さらに精進せねばと心に誓うリーラだった。



「リーラ、惜しかったね。」

ルディがなぐさめてくれた。

「でも、リーラ強くなったよ。一年生の頃と違うよ。」

よくやったと褒めてくれた。


「リーラ、まだ言うのは早いが売れないからな。」

アデルが耳元でボソッと話す。

「はぁ??」

「リーラ!」

「「「きたァー」」」

振り向くとルマンドだった。

リーラは、はっと一年前を思い出した。

あれか…

「良かったよー、今年も勝てたから。

はい、カフスボタン。

これで替えの上着にも使えるよね。」

「あはは、ありがとう…」

ルマンドが耳元でボソッと話す。

『皇室から献上された物は売れないからね。』

えっ!そうなのって顔をするとルマンドは意地悪が成功したように嬉しそうな顔をした。

その光景を見ていた3人が思う。

ルマンド、今年もか…


 


     騎士学校卒業式


 リーラ達は剣大会を無事終了し、翌日卒業式を迎えた。

 黒い上下の騎士服を着用し、足元には黒革の編み上げブーツ、腰には帯剣をした78名が訓練場にずらりと並ぶ。横には同じ騎士服を着用した教師陣と各隊長が控える。


ロビンソン学校長が祝辞を述べる。

「君達は二年間よく努力し、騎士の真髄を学んだ。騎士達は立派なノーザンランド帝国を支える騎士となった。陛下、帝国に忠誠を誓い、清い心と高き志を持ち、帝国の盾となり、これからも自身を高めるんだ。剣を高く掲げろ、我ら黒獅子に栄光あれ!!」

剣を抜き、空に掲げる。

「我ら黒獅子に栄光あれ。」



リーラ達は最後の別れを忍ぶ。


「じゃあ、みんな元気で。」

ロックと別れ抱擁をする。

「今までありがとう。」

サザリーと握手を交わす。

「リーラ、今までありがとう。」

うん、ありがとうとピーターと抱擁を交わす。

ルマンドがリーラの前にやってきた。

2年前比べてグッと背が伸びたルマンドを見上げる。

「今まで、ありがとう。

あと、カフスボタンもありがとうね。ルマンド。」

「こちらこそありがとう。

リーラ、お願いがあるんだ。

僕も君の上着のボタンがほしいから交換しよう。もらっていい?」

「いいよ。」

ルマンドは自身の第1番目のボタンを引きちぎりリーラの手に乗せる。

ルマンドはリーラの第1ボタンも引きちぎり、自身がポケットに入れる。


ルマンドはリーラの耳元でささやく。

『私のこと忘れちゃいやだからね。

私はリーラの事忘れないよ。

君に必ず会いに行くからね。』

ルマンドは優しくリーラの耳元に口付ける。

「はい…」

リーラは顔が赤くなるのを感じた。


『とうとう実行に移したぁー。』

アデルがボソッとつぶやくとロックがバシっと叩いた。2人は向き合い笑い抱擁を交わした。

「「じゃあな、元気で。」」


「若いっていいわね。」

くすりとキャサリンはオースティンに笑う。

「まだまだ、俺達だって若いだろ。」


「フォールドのガキ、リーラに何してやがる!殴ってこようか。」

鬼の形相ぎょうそうのダリルをガシッとハルクが押さえる。

「ダリル、落ち着け。体罰になるぞ。」

フォールドのせがれなかなかやるなとハルクが関心していると、

義妹いもうとに悪い虫がついたら嫌だなぁ。殴ってきていいかなぁ」

「馬鹿やろう。パワハラになるぞ。」

とビルもガシッと止めるハルクだった。

青春する若者にうるさい大人達である。



皆が学校から1人、また1人去って行く。



「リーラ、少しいい?」

サザリーに呼び止められた。

「何?」

「ルマンド様がリーラに親密な態度をとるのは君を仲間、妹のように思っているからだ。

だから…勘違いしないでほしい。

あの方には、幼き頃から婚約者もおられから…」

「はっ??……わかってるよ。

友達だからね。」

「じゃあ。」

「じゃあね。」

去りゆくサザリーの背中を見ながらリーラの心はなぜかずきりと少し痛みを感じた。


「勘違いなんかしない…私は恋なんてしないから…」





帝国暦319年 夏 

リーラ達は騎士学校を卒業した。



 

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