第16話 リーラの決意

 居間の暖炉前にかかげる短剣を見つめる少女。

 

 季節は変わり初夏を迎える。また一つ歳を重ね14歳となる。

 

 右手にはリンダ王女の形見のネックレスを握る。少女はあの時を思い出す。襟を掴まれ殴られる時ネックレスが光ったのだ。

 

 リンダ様…

 あの時は助けてくれてありがとうございます。あなたは私の側にいてくれてるんですね。


 私は自分の手を見る。

 そして、生々しい人を殺した感触を思い出し、震え、目を固くつぶった。

 

 そして、亡き故人に語りかける。


リーリラ様…


 私は疑問に思っていた。

 こんな大きな力を持っていたのになぜ戦わなかったのか?

 敵と立ち向かえた筈だ。

 リーリラ様…

 あなたは戦えたけどこの力を手放す選択をされたのですね。あなたは戦いたくなかった。誰かを傷つけ愛する人が傷ついて死ぬかもしれない。そんなことをあなたは耐えられなかった。

 でも、私はあなたの選択は選べれない。

 私は戦う。

 私の選択は正しいかなんてわからない。けれど私の中で戦う意志が定まったのは明確だった。


 エクストリアはリーラの決意を感じ取る。

『ラクラインともリーリラとも違う。おまえは、強いよ…』




 少女の目には迷いはなくなっていた。


 

 リーラは学校に向かう為に家を出る。

 ダリルは学校へ向かうリーラの姿を見て安堵する。

そして、短剣を見る。

 

 君はここにいるんだな。

 

 そして、短剣に触れる。


 リンダ、必ず彼女を強くする。

 いつの日か、国は必ず取り戻す。

 我が命が枯れるまで必ず。


 短剣は2人の決意を見守っているかのようだった。


 

 ガチャ。

 扉を開けるとルマンドが立っていた。

「ルマンド…どうしたの?」


「今日から学校に来ると聞いたから。」


「ごめんね、しんぱ…」

ルマンドはリーラを強く抱きしめる。


「心配かけたね…」

リーラはルマンドの背中をポンポンとたたく。


「私、大丈夫だから。」

にこりと笑うリーラの姿ががいつも違う雰囲気に感じルマンドは胸が痛くなる。


"君は、一人で苦しみを乗り越えたのかい。私がもっと強くなってリーラの側で守ることができれば…"

思わずきつく抱きしめてしまうルマンドだった。


物陰から隠れて見ていたサザリーとロックは頭を抱える。

「ルマンド様、あなたには婚約者がいるんですよ…。」

「何、抱きしめてんだよ〜」



「ほら、学校行くよ。」


「あぁ。」

自分の事を心配してくれるルマンドに感謝するリーラだった。



 事件以来、騎士学校内は静まり返っていた。

「おはよう。」

クラスにいたものが振り返る。

皆、おはようと声を掛けリーラの顔を見て安堵する。


「おはよう。」

アデルがクラスに入ってきた。


「おはよう、リーラ。」


「おはよう。アデル…身体大丈夫?」


「おまえこそ大丈夫か?」

リーラはうなずく。

 アデルはじっとリーラを見つめ、沈黙を破るように話す。

「リーラ、あのさ…あの時、助けてくれてありがとう。あと共に戦えずごめん。俺、強くなるからさ。おまえの横で戦えるように。

もっと頑張るよ。おまえは、学校で最初に出来た友達、仲間なんだ。今度、戦う時は一緒だから。」


「うん。」

二人は堅く握手する。

「リーラ、僕達仲間なんだから1人でなんでも背負っちゃ駄目だよ。

僕も戦う時は君の横にいれるよう頑張るよ。

あー!僕も4番隊で心を入れ替えて頑張るぞ!」

ルディがガッツを入れる。


「ちょっとリーラとアデルの事心配してたのに〜3人で盛り上がらないでよ。リーラ、僕もいるからな!共に戦うから!」

ピーターは両腕でアデルとリーラを引き寄せる。


「おい、俺だって心配してたんだからな。」

ロックがアデルとリーラの頭を撫でる。


「俺じゃなくてクラスみんなが心配してたんですよ。」

サザリーが茶化しながらやって来た。


「リーラ、1人じゃないからね。君の危機があれば次は、必ず私が駆けつけるから。」

真剣な表情でルマンドはリーラを見つめる。


「あららっ、また告ってる?」

アデルがこそっとつぶやくとロックがアデルの額にチョップを入れた。


「あははは。ルマンド、みんなありがとう。

みんな期待してるからね。私もみんなが危ない時は駆けつけるよ。もっと、もっと強くなるって決めたんだ。」


「俺も」

アデルがリーラに手を重ねる。

「「僕も。」」

ピーターとルディも手を重ねた。

「俺も」

「私も」

「私もだよ。」

ルマンド達も手を重ねた。

それを見たクラス中が騒ぐ。

俺達も強くなるぞー!皆連呼する。


「子供達…強くなりますね。」

ロビンソン学校長が言うと教師達は頷いた。





       剣大会


 そして、騎士候補生2年の締めくくりの剣大会が行われた。


 午前の部の騎士候補生の1年優勝者はラディリアスとなった。


「ラディ、頑張ったじゃないか?!」

リーラをラディリアスを褒め称える。


「はい、このままじゃいけないとわかりました。リーラ様を守れる騎士になります。僕、1番隊に行きますから待ってください!」


「うん、待ってるよ。」


「いやぁ、無理だな、おまえは第5番隊だ。」

横から5番隊隊長のラモントが現れた。


「はぁ?なぜ勝手に決めらるんですか?叔父上!」


「そりゃ、私の跡を継いでもらいたいからだ。来年からしっかり鍛えてやるからな。がははは。」


「父上に交渉せねば…。」

多分無理だろうと思うリーラだった。


「リーラ。」

振り向くとキャサリンだった。

「キャサリン隊長!」

リーラはキャサリンに抱きついた。


「よく、頑張ったわね。」

キャサリンはリーラの頭を撫でる。


「配属の件は残念だったけれど、助っ人でお願いする時があるかもしれないからその時は頼むわよ。剣大会頑張りなさい。」


「はい!頑張ってきます!」

リーラはパタパタと走り去った。


「おい、助っ人って。リーラ王女はこのグランディナから出さないと決まっただろう。」

ラモントは心配そうに見る。


「ふふふ、大丈夫よー。」


「昔からおまえの大丈夫は、大丈夫じゃないんだけどな。」

 不敵な笑いが余計不安をあおられるラモントだった。


 午後、候補生2年目の剣大会が始まる。訓練場には剣大会を見ようと午前より多くの騎士が訪れていた。

 パブロ小隊長がリーラに手を振る。

 ガッツポーズを送られ、リーラもガッツポーズを送る。

 

 エクストリアをダリルに預け柔軟体操をして防具をつける。


「リーラ、落ちついて戦え。」


「わかった!頑張ってくるね。」



「第1回戦を行う。呼ばれたら前に出ろ。

シャルケ組リーラ、キース組マクセル」


「「はい!」」


両者剣先を合わせ構える。

「開始!」


「はぁー!」

と気合いの声を入れる。

右、左と打ち込んでいく。

カキーン、

カキーン。


「落とせー。はあー!」

マクセルの隙を見て再び左に打ち込む。

カキーン。

「あっ。」

とマクセルは剣を落とす。

「勝者シャルケ組リーラ」


歓声が沸き起こった。


「よし!勝てた!」


 私は勝つ!

 私はこの剣大会で1番を獲る。

 シュッ。

 

 青い空に掲げた剣を見つめるリーラだった。

 

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