第15話 迷いの先には…
帝都 ユーリアム公爵邸
リーラはまだ意識が戻らないユーリアム公爵邸を訪れる。小さな花束を侍女に渡すと
夫人はラディリアスの発見が遅く命はなんとかもったが大量出血のため未だに意識が戻らないと教えてくれた。
「お見舞いに来てくれてありがとう。登山訓練ではごめんなさいね。あの子ね、あれ以来気持ちを入れ替えて頑張るって言ってね、本当に生き生きしてたのよ。なのに信じていた子に裏切られるなんて…
うっうっう。
ごめんなさい。お茶でも用意してくるわ。どうかあの子に話かけてあげて。」
涙を堪えきれない公爵夫人は部屋から出て行った。
リーラは眠るラディリアスに近づき手を握り光の力を流し込む。
白銀色の光が手から身体へ広がる。
ラディリアスの手がピクリと動く。
「ラディ…」
「うっ…あれっ?リーラ様?」
ラディリアスは目を覚ます。
「駄目だよ。完全には直してないから動いちゃ。」
「身体が痛い…」
「ずっと寝たきりだったんだよ。」
「はっ!ジェフ!!」
ラディリアスはリーラの顔を見ると安堵する。
「リーラ様!無事でよかったー。ジェフはどうなったんですか…」
「私が
あの子、同郷の子だった…」
ラディリアスはリーラの手を握り、
「すみません…
あなたを守れなかった。
僕は、本当に弱い…。」
「弱くないよ。身体張ってくれたんでしょ。あの子、最後にラディリアスを刺したこと謝っていたよ。謝って許されることではないけどね。」
「ジェフ…おまえは馬鹿だ…。」
必死に泣くのを我慢するラディリアスの手をリーラは握り返す。
公爵夫人が侍女と共に部屋に入るとラディリアスが起きているのを見て驚き駆け寄る。
「ラディ、ラディ!お医者様を呼んで。」
公爵夫人はラディリアスの側で泣き崩れる。
リーラはラディリアスに目線で帰ると伝えて公爵邸を後にした。
リーラは共同墓地に向かう。
ジェフという名を偽って使っていたルーカスを
別の家族が先約でいたようだ。
その家族はよく知る相手だった。
あちらもこちらに気づく。
「お久しぶりです。リーラ様。」
ローズの侍女であるジャスミンとその家族だった。
「お久しぶりです。」
「立派になられましたね。」
ジャスミンの夫はリーラに話す瞬間、リーラはケリーに頬を打たれる。
パシン。
「人殺し!!どうしてルーカスを殺したのよ!!」
「やめなさい!」
「やめろ!」
ジャスミンと夫はケリーを押さえる。リーラは頬を押さえケリーを
「ノーザンランドの一騎士としてゾーンの密偵を殺すのは当然です。」
「ルーカスはゾーンの密偵じゃないー。この悪魔ー!!」
ジャスミンはケリーの頬を打つ。
パシン。
「いい加減にしなさい!ケリー!
あなたが報告をすれば怪我人出なかった。
ルーカスも死ななかった。
リーラ様、ケリーが申し訳ありません。
お許し下さいませ。
私達が報告を
ジャスミンは涙を布で押さえながらリーラに頭を下げた。
「私共も侯爵様からを
リーラ様、どうかお元気で。」
ジャスミン一家は再び頭を下げて墓地を去る。
リーラは小さな花束を共同墓地に置き石を見つめる。
ただ、静けさだけが残る。
『リーラ、おまえは悪くない…』
『……』
「私はあの国なんて好きじゃなかった…
母も私も捨てた癖に、私なんていない存在にしてた癖に…
都合いいよな。
利用したい時だけ王女だなんて…」
雨が降り始めた。
ルーカス、あなたが泣いてるの?
空を見上げる。
おじい様、本当に亡くなられたのですか?
おじい様、わたしは騎士になったのに民を救えなかった…
一度も会うことのなかった私の本当の父、そして兄。あなた達は本当に呆気なく死んでしまったの??
あの時を思い出す。
ルーカスがリーラに手を伸ばし
『リーラさまぁ、サムをたすけて…
ラディ、さしてごめ…』
リーラは、首を振りしゃがみこむ。
「でも、私には力がない。
民なんて助けれない。
この手で人を殺した…」
手に冷たい雨と暖かい涙が落ちる。
ふと温かな
「力がないならつければいい。
民は、いつか…いつか助けれる。
リーラ。
その手は自分を守るためだろう。
強くなれ、リーラ。」
振り向くとクリストファーが横にいた。
「えっ?陛下なんで。」
「おまえにつけている護衛がおまえのことが心配で伝令を送ってきてな。」
クリストファーはレン達を指差した。
「さぁ、このままでは風邪を引く。
帰ろう。」
クリストファーはリーラを軽々と抱きかかえる。
「へ、へいか、お止めください。歩けます。」
リーラの顔は少し赤らむ。
クリストファーは馬に向かいながら口を開く。
「初めて人を斬った時、自分自身が違うものなったように感じた。
けれど、この役目は私しか出来ないもので自分が逃げだしても別の者がやるだけだ。自分がやることで被害を最小限に抑えるようにすればいい。民が幸せになれる数を増やす為に頑張ればいいとハルクが励ましてくれてな。」
クリストファーは思い出すように語る。
「私にはその力ある。
上に立つ者として生を受けた時から与えられた物だ。
足りなければ力をつければいい。
自分が頑張れば、気づけば私を支えてくれる仲間がいた。
リーラ、おまえは、1人じゃない。周りにすでにたくさんいるだろう。
一応、私もその1人のつもりだ。」
「…はい…うっうっ」
リーラはクリストファーの胸で涙を流す。
木の影に隠れる3人。
「ありりゃ、ダリル父さん…
ひと足先に白馬の王子様がきたなぁ。」
「うるさい、ハルク。
たまには飲みに行くか…。」
二人は顔を見合わせ笑う。
「珍しいな…真昼間から飲むのも悪くないか…。」
肩を組みながら別方向に歩き出す。
「レン、ありがとう。呼びに来てくれて。」
「はい…。」
(陛下がまさか来るとは思わなかったレンだった。)
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