第12話 ジェフの過去
ゾーン国が攻めてきた。
ローズ王女が急ぎ
私の父親はリヴァリオン国の騎士団長を務めており、私は父の後を継ぐために剣を磨いてきた。来年、16歳になればようやく入団できる。父と共に働ける希望に満ちていた。
「時間の問題で国が戦場になるかもしれない。国を出る準備をしろ。」
父が突然言い出した。
「あなたは、どうするの?」
母が聞くと、
「私は騎士だ。国に残る。まだ、占領されるかはわからない。問題なければまた戻ってこればいい。」
父は大丈夫だからと言った。
しかし、事態は急変する。
「すぐに荷物を詰めろ。ローズ王女が国を出た。すぐに国境トンネルに向かえ。」
私達は荷物をまとめトンネルに向かった。今思えば荷物など持たずすぐに国境トンネルに向かえば良かったのだ。
昼過ぎに家を出てトンネルに向かうと国境の関所に向かう馬車を待つ人の列が出来ていた。しばらく並んでるいると国境の関所の閉鎖時間となり馬車は止まってしまった。人々は誰一人家に戻らず待ち続けるようだ。私も朝まで待つことになり母と弟と3人で待ち続けた。夜に南の山手の街道から幾つの灯りが見えた。私は何かしらの恐怖を感じた。その恐怖は現実となる。街から大勢の人が逃げてきたのだ。私達もひとまず親戚のいる北西にある村に逃げる。親戚は快く迎えてくれた。
父を亡くし失意の母を支えながら静かな日々を送っているとゾーン国から10才から15才の男女を集めるよう通達がくる。親戚には抵抗すると殺されるので行くように頼まれた。母は行くことに反対したが弟とも話し合い親戚や母のために城に行く事に決めた。
そこからは地獄だった。
「兄さん!!」
「サムー!!」
「抵抗するな!」
バシっ。私は抵抗した為殴られ牢屋に入れられた。
集められた10才位の子達はゾーン国に送られたそうだ。
私のような15才くらいの男の子達は甘い匂いのものを嗅がされゾーンの兵士の言うがまま働かされる。
「この水どうぞ。ルーカスさん、ほとんど水を口にしていないでしょう。」
「ありがとう。なんだか身体を動かすのもしんどくてさぁ。ロンは大丈夫なのか。」
「はい、恐らくこの甘い香のせいなんでしょうね。私に効きにくいみたいです。」
そう話すロン・グリット。父の部下のリヨン・グリットの息子だ。父がよくリヨンさんを飲みに連れて帰ってきてたのですぐに名前から息子だとわかった。
「いつまでこんな生活が続くんでしょうか…」
「わからない。」
小さい鉄格子のある窓から見える三日月をぼんやり二人で眺めた。
ドカン。扉が突然開いた。
「おい!ロン・グリットはいるか!」
「はい。僕ですが…。」
「上の方かお呼びだ。来い!」
「ロン!」
「ルーカスさん!」
彼は引きずられるよう連れて行かれ2度と戻ることはなかった。
ある時、集められた子供同士、闘うように言われた。もし勝利できれば待遇がよくなると聞かされ顔見知りの者同士が戦う羽目になった。
その姿を薄気味悪い赤い口紅を塗った紫色の髪の女が笑いながら見ていた。何人か友人達は、死んで行きそろそろ私の番かと思った時にあの薄気味悪い女に呼ばれた。
王の間に呼ばれて気づく。この女は王妃サンドラだった。
父と母の話を思い出す。この国にゾーン国の将軍の妹が嫁いできてからこの国は変わり始めた。何も身分のない他国の平民の娘が嫁いだのだ。
この国の伝統を踏みにじり崩壊させた女だ。
女は、僕に言った。
「あなた達を置いて逃げた王女が2人いるのよ。そのうち1人を連れて帰ってきて。名前は、リーラ・リヴァリオン・ラクライン。銀髪に青色の瞳よ。殺さなかったらどんな状態でも構わないわ。もしできたら、あなたの弟を助けてあげる。成果をだしたら私の家臣にしてあげるわよ。」
ローズ王女以外に王女がいる事に疑問を感じたが、私は女に魂を売った。
「仰せのままに」
サンドラは足に口付ける。
私はゾーン国に入り港へ向かい船に乗った。陸地を離れて行く船からゾーンの街並みを眺める。この国のどこかにサムがいる。必ず仕事を済ませ迎えに行くと心に誓う。
船は半月かけてノーザンランドの南東部にあるザイデリカ領に着いた。
王女が潜伏すると言われる帝都グランディナに向かった。偽の身分証と2才の年齢を偽りノーザンランドの騎士学校に潜入する。もともと父から剣の指南を受けていたので
街で聞き込みをしていると、声を掛けられた。幼なじみのケリーだった。
懐かして涙が出そうになった。しかし同時に彼女に腹が立った。彼女の親は王女付きの侍女と護衛だ。私達を置いて逃げた王女の仲間なのだ。けれど彼女を憎めない。ずっと好きだった。幸せになれよと思い冷たくあしらう。
「ルーカス待ってよ!どうしてここにいるの!!」
「離せ、人違いだ!」
「嘘よ、待ってよ。一人でこの国に来たの?」
「お前なんか知らない。近づくな!」
私は、彼女から走った。
後から考えてみれば彼女を利用してリーラと言う女の情報を聞き出せば良かった。しかし、自分には彼女にあれ以上近づくことは出来なかった。
さようなら、ケリー…
ある日、鍛錬の練習の時思わぬ落とし穴に気づく。リーラと呼ばれている少女がいたのだ。まだ確証は得れていない。伝書鳥に該当なしと紙をつけて飛ばした後に赤髪の少年が私に接触して来た。この少年はなかなかお喋りで色々情報を流してくれた。私も少ししゃべりすぎたかもしれない。なんだか弟のサムとラディリアスが重なって見えたからだ。
ラディリアスの情報からすべての情報が一つの線に繋がった。ロン・グリットはリヴァリオン国の亡命者。そして、偽名と性別も明かしリーラと呼ばれている。あの女が王女だ。
あいつが王女だとわかると毎日間抜けずらで笑うあの女が憎たらしいくて仕方なかった。
ちょうど、野営訓練で街からでる。
父と呼ばれている護衛らしき男とも
離れるチャンスはこの時しかない。
私は伝書鳥に標的発見。襲撃場所と仲間の要請の連絡をした。
ようやく、サムを救える。笑いがこみ上げる。目立たないように黒装束の服に着替える。その時突然、扉が空いた。
「ジェフ、どこに行くんだ。」
「ちっ。」
「おまえの事、数日見ていたんだぞ。鳥に手紙をつけていただろう。」
くそっ、見られていたか。
「何か喋れよ。まさか、リーラ様を襲うんじゃないだろうな。」
私の瞳の動きをみたラディリアスは、
「させない。」
私を殴りつけた。
ふっ、かわいいパンチだよな。
私は持っていた刀を出しラディリアスを刺す。
「あっ、あっ…。」
ラディリアスは床に倒れこむ。
思わず急所を外してしまった。
なぜだろう?
どうしてなんだろう…
胸が痛い。
私は、騎士学校を後にした。
あの女をゾーンに連れて帰るために…
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