第11話 野営訓練に潜む罠
野営訓練とはどんな場所でも臨機応変に生き延びるための訓練だ。ノース山脈にある村に手紙を届け、集合地点に帰るまでに簡易天幕を張り一泊する。食糧は山中で確保して作って食べる。その村への道中は比較的な安全とされるが熊や狼が出ることもあり、動物と遭遇すれば戦う。先輩達の中でも狼に遭遇したケースもあったそうだ。
人数が多いと何か問題あった時に対応が遅くなるので二回に分けて実施される。前半の班は終了し、今日は後半の班の実施日だ。
ルマンド達は前半の班だった。夜はかなり冷え、食事は山菜をとるのが無難と教えてくれた。寒さを防ぐようにしっかりと着込む。護衛のレンさんとアンディさんも二人体制で隠れて付き添ってくれるしい。過保護すぎやしないかと思ったが敵がいつ現れるかわからないので備えておいた方がいいと父さんに言われた。
何かあれば救援信号の花火も
集合地点には何かあった時の応援騎士が沢山いた。皆口々にどうしてこんなに応援騎士が多いのだろうと話す。シャルケ組だけが真実を知る。山頂突き落とし事件があったからだろうと…
今回向かう村はノース山脈の山間にある村で山道は整備されており僕達はもくもくと歩く。ベンジャミン達とは会えて会話もしなかった。
村に着き村長に任務である手紙を渡す。村長さんは手紙のお礼にと僕達に塩をくれた。
「「「「??」」」」
「どうせ、スープを作るんじゃろ。
塩は
私達は食事を作る時にこの塩に感謝する事になる。
村を出発し野営箇所を探す。川が近い方が料理もしやすいので山道から近い川を探した。場所を決めると野営を張ることになり4人で簡易天幕を組み立てた。
夕食はやはり寒いのでスープを作ることになった。山菜を取り、川魚は剣でうまい具合に獲れた。まだ寒いから魚も動きが鈍いのだろう。魚はアデル以外は
アデルが私達に
「川魚は小骨が多いから注意しろよ。」
と教えてくれた。
「本当だ。小骨が多い〜。」
私が文句を言うとベンジャミンとロバートが笑う。
「先日は君達二人に失礼な事を言ってすまなかった。」
ベンジャミンが謝ってきた。
「本当にすまなかった。君達が問題児だと噂がすごくてさぁ。
ロバートも謝ってきた。
「君達が問題児なんてとんでもないな。人の噂に気に取られては駄目だな。私は卒業したら自分の領に戻り幹部候補になるだろう。いい成績を残さなければ、足を引っ張られたくない、そんなことばかり思っていて…自分では見えない重圧に押し潰さていたよ。」
ベンジャミンが辛そうな顔をした。
「しかし、やけに応援騎士が多かったよな。」
ロバートが意外そうにするとアデルが教える。
「知らないのか?サウストップ山頂突き落とし事件?多分事件がまた起こるかもしれないからの予防策だろ。」
「「山頂突き落とし事件!!」」
二人の顔は驚きが隠せないようだ。
「落とされて生還した張本人がこの人。」
と私を指差した。
「「えーっ?!」」
あの事件は、一応極秘になっていたらしく全く知らなかったらしい。
なぜ、ラディリアスが試験を受け直した謎が解けたらしい。
二人は、
「私達、そんなことしないから」
「私達は疑われたかもしれない」
と焦っていた。
この話をきっかけにかなり打ち解け色々な話をできるようになった。
「さぁ、結構話したからそろそろ交代で休もうか。」
ベンジャミンは少し疲れた様子だったのでベンジャミン達に先に休みよう薦めた。
「私とアデルが先に見張るから君達寝ていいよ。」
「ありがとう、助かるよ。ロバート、先に休もう。」
「あぁ。」
森の中は、静けさが残り
「アデル、二人と打ち解けれて良かったね。」
「あぁ。でもさぁ、貴族って大変だな。ルマンドも領に戻り副隊長だろう。子供がベテラン騎士の上に立つんだぜ。俺には無理だわ。」
「確かに。私も人の上に立ちたくないよ。
うん?
なんか甘い匂いしない?
ねぇ、アデル?」
「あう、あう…」
「はっ?寝たら駄目で」
『リーラ、敵に囲まれた。すぐに救援信号を打て。』
ちっ。
鞄の中から救援信号を出し火をつける。
『リーラ、走れ。右手前方にだ。
恐らく狙いはお前だ。
こいつらがいたら戦えない。』
『置いていくの?』
『人質に取られたらこちらが不利だ。おまえの護衛騎士もいる。
すぐ走れ。』
すかさず剣を握り走り出す。
はっはっはっ。
木を避けながら走る。
人の気配がする。
囲まれている。
『リーラ、囲まれた。
くるぞ!
カキーン、カキーン。
遠くから剣の音が聞こえる。
『恐らく敵5人、内2人戦闘中。
後3人だ。
右からだ!』
剣を構える、気配を意識する。
くる!カキーン。剣を受ける。
相手が後ろに下がった。
くそっ。暗くて相手が見えない。
『集中しろ。この場所はすでにおまえの領域だ。』
周りに気を配るように集中する。自らを中心にして光の力を放つと自然に風が生じる。風が何かに当たる音がする。
見えた。そこだ!
くる!左、受ける、カキーン。
右からくる、カキーン。
集中するんだ、剣に思い切り力を込める。
「はあー‼︎」
相手を斬りつける。
更に深く刺しこむ。
バサっ。
ピシャりとリーラの身体に血が飛び散る。
「ぎゃあっぁ、うっ。」
ドサリ。
全身黒い服で覆われた敵が倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ、倒した…か…」
斬りつけた生々しい感触が残り、顔に相手の返り血が
『我の土の力を剣を通し感じろ。』
落ち着くんだ、落ち着け。
剣を通しエクストリアの力を使う。
土を踏みしめる6人の存在を感じる。遠くに感じるのは敵2人とレンさんとアンディさん。
あと2人が私の元へくる。
右上!木の上にいる!!
剣に力を込める。白銀色の光が剣を包み込む。
剣を振る衝撃で風を起こす。
男に風があたれー!!
「はああー。」
衝撃波が男に激しくぶっかり、飛ばされた男は身体が木にぶつかる音がする。
ドカッ。
「ぐはっ。」
高い位置に叩きつけられた男がそのままずるずると下に落ちた。
「ぐあっ…」
はぁ、はぁ、はぁ。
『あと1人、近いぞ。正面からだ。』
カキーン、正面から受ける。
月明かりが照らされ顔が見えた。
「きみは…」
「くっくっく。リーラせんぱい、
いや、リーラ王女かな?一緒に来てもらいますよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます