第10話 それぞれの進路

 寒い冬が終わりを告げ、春がやってきた。

 

 騎士候補生生活も終わりが近づき候補生達の配属先の発表が行われる。

 発表後は、各々が配属先の授業を受け新しい配属先に向けての最終調整を行う。

 さんざん練習をした皇宮の門の警備も任されることも忘れてはいけない。特にシャルケ組は鬼のオースティンに徹底的に練習させられ皆ばっちりだ。リーラだけは特別にオースティンの補修授業を受け徹夜で騎士の心得を復習させられた。皇宮の実地訓練間はリーラの目の下にはクマができ、友人達はひどく心配した。リーラは緑色の髪をみると悪寒がするほどオースティン恐怖症になってしまったようだ。

ようやくリーラ達は夏前に野営訓練、剣大会で騎士候補生は卒業を迎える。


 


 

 今日、配属先が発表される。クラス中落ち着かない様子だ。

 担任のシャルケ先生から一人一人に配属任命状が手渡される。


「リーラ・ハントン」

「はい!」

 手渡す瞬間、先生の顔がゆがんだような気がする。

席に戻り読んで見る。はぁー!!

    

     配属任命状

   

    リーラ・ハントン

     

   第1番隊に配属任命する。


「はぁー?!」

「リーラ、うるさいぞ、希望通りじゃないって言っただろう。」

シャルケ先生がやっぱり文句を言ったかような顔をしている。

 もしかして(ビル隊長)が関わっているのか?!


「やったー!希望通り3番隊だ!」

アデルが後ろので喜んでいる。

くそ〜っ。学校が終わったらビル隊長に文句言いに行こう。ふと皇宮警備の実地訓練を思い出す。皇太后様がそういえば、「の訓練よ。」と昼食やお茶の時間にその度に言っていた事を思い出し、はっとする。あの時すでに決まっていたんだ…

くそ〜っ〜早く気づけば良かった。

机をバンバン叩く。

「リーラ、すまない、頼むからバンバンするのやめてくれるか…」

シャルケ先生が切なそうに言う。


 授業の休憩中、どこの配属先になったのかみなが聞き合う。

アデルは、第3番隊。

「やったー!」

ルディは、第4番隊となり

「なぜ、僕なんだ…」

つぶやく。

ピーターは、第5番隊に決まり

「家から近くになったかな」

と喜んだ。

 ルマンド、ロック、サザリーは、フォールド領騎士団に配属だ。ほとんどの貴族の子達は、自領の騎士団に戻るそうだ。

 ルマンドは戻るなり副隊長に就任するらしく、すぐに幹部とはすごいと騒ぎになった。

 私が1番隊に配属になったと無表情で言うとクラスのみんなは希望が叶わなかったとはお気の毒にと同情してくれた。


不服そうな顔を見たルマンドが言う。

「リーラ、1番隊が嫌なら私の騎士団に来るかい?」

クラス中が静まり返る。


アデルがボソッと

『ついに告白!』

バコッ。

うずくまる、アデル。

『うっ痛い〜、ロック〜腹にパンチ入れるな〜』


「どうして??」

 ルマンドに問うと悲しそうな表情でなんでもないと言う。

 フォールド領で騎士になる理由がないよ。キャサリン隊長の元で働きたいのにー。プクッと膨れていると父さんに呼ばれた。多分シャルケ先生だなぁ。ぷんぷんしながら教員室に行く。


「リーラ、希望もあったかと思うが今の状況では自由に動く4番隊は危険の可能性もある。ひとまず1番隊も立派な騎士の仕事。先日の活躍も高く評価されている。私もリーラが側にいる方が安心だからな。怒らず配属先で頑張ってくれるか?」

父さんはなだめるように

「配属先は陛下も決めておられる。

覆す事はできない。リーラならどの隊にいても活躍できるからな。」

陛下の決定もあるなら「はい。」と言うしかない。


 教室に戻る時に背の高い少年がわざとらしくぶつかってきた。水色の髪の少年ベンジャミン・ウィンターニアが声をかけてきた。 


「待ちたまえ。リーラ嬢。」

「何?」

ベンジャミンの茶色の瞳が私をにらむ。

「確か君とは野営訓練が一緒だったね。せいぜいシャルケ組を代表する問題児を面倒見るのだから問題を起こさないでくれよ。」

「言われなくても問題なんて起こすつもりなんてないから。そちらこそ貴族だから外で寝れないとか言わないでくださいね。」

「おまえー。」

横で話を聞いていた目つきの悪い黒髪少年が口を開く。

「やめろ。ベンジャミン。

じゃあ、互いに足を引っ張り合わないということでよろしく。」

ロバート・ハイベルクは言いたいことだけ言い去って行った。嫌なことが起こる時は本当に重なるもんだ。

 教室に戻るとアデルの顔に怒りの表情があった。こっそり聞くとベンジャミンに牽制けんせいされたらしい。私達はがっしり手を合わせあいつらなんかに負けないと決めた。

 今日の鍛錬で鬱憤うっぷんを晴らす。アデルと私はカン、カンとただひたすら打ち合った。


「今日、なんだかリーラ様荒れてますね。」

ラディリアスが心配そうに見に来た。

「野営訓練の件でキース組のベンジャミン達に牽制けんせい受けたらしいよ。1年前の君みたいね。」

ピーターは笑いながらラディリアスに話す。

「あぁ…すみません。ベンジャミンもロバートも責務ある貴族ですからね。色々重圧があるでしょう。野営はいつなんですか?」

「リーラ達の班は2週間後じゃなかったかな?」

「終わるまではイライラが続きそうですねぇ。」

「ラディもリーラのことよくわかってるじゃん!」

「もちろんですよ〜」

赤面するラディリアスだった。


 その話を聞く者が傍に居たとは誰も気付いてはいなかった…


********


 パタ、パタ、パタ。

 鳥が空に飛び立つ。

 

 寮裏に伝書鳥を放すにやりと笑う少年がいる。


「サム、もうすぐ会えるからな…。」







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