第7話 実地訓練ー皇宮編ー1

  黒獅子棟 第2番隊隊長執務室

 

 次はシャルケ組の実地訓練のシフトを組まなくてはいけないとオースティンはペンを握りながら表を作っているとハルクがやって来た。

「総隊長…何かご用ですか?」

 忙しいので用件を手短に話せという雰囲気を出しながらたずねると、  

「すまない…重要な話を忘れてた。」

「はぁ。何ですか?」

「シャルケ組のリーラ。知ってるか?」

「キャサリンが自分の隊に入れたい子でしょう。」

「そう!そうだ!その子だが、実はリヴァリオンの王女だから。警護枠は皇太后様にしてくれ。あっ、それと1番隊からリーラ王女にもすでに護衛ついてるから、じゃあよろしく。」

すぐに立ち上がり言いたいことだけ話をすると退出したハルクだった。

「はぁ?待てよ、じじい!なんでそんな重要なこと、さらっと話して逃げるんだよ。おい、じじい!!くそっ。

なんで護衛対象が警護の仕事するんだよ。あいつら馬鹿か?」

オースティンは髪をきながら警護の割り当てをどうすればいいか頭を悩ますのだった。


  


     ********


 リーラがはぁーと息を吐くと白くなる。

 帝都は昨晩、雪が降りすっかり町全体が雪化粧している。街では雪かきや道路に雪を溶かす薬剤をくなど街の住人は忙しそうだ。

 シャルケ組は今日から皇宮警備の実地訓練に入る。皇宮は金獅子宮といわれクリーム色の石造りの建物が中心部にあり左右挟む方で黒獅子棟と白い建物の白獅子棟となる。

 白獅子棟は貴族院や各大臣達の執務室がある。各大臣は公爵、侯爵の各領を任されているものが担当する。

 例えば、リッチモンド侯爵は政治の中枢を担当する宰相、ユーリアム公爵は外交を担当している大臣だ。それぞれの大臣に官史がつき国の政治が動いている。


 

   

    黒獅子棟の会議室


 第3番隊隊長のオースティンがシャルケ組の前に立つ。翠玉色のウェーブした髪に細い眼鏡をつけ眼鏡からは若葉色の瞳が見える。

「みな、よく来てくれた。3番隊のオースティンだ。今までは学ぶだけだったが皇宮では本番だ。しっかり気を引き締めて警護にあたってくれ。

少しでも怪しいと思ったら捕まえろ。

侍女や官史、騎士であってもだ。

 まず指導騎士の元で活動してもらう。勝手な動きはするな!わかったな。皇宮外警備は騎士外套の着用を許可する。もちろん手袋もだ。皇宮門の近衛交代儀式はみな必ず経験してもらう。学校で練習しているので問題ないかと思うが私が不合格と思う者は居残り復習をさせる。では配属先を言い伝える。

ルディ・ロッテンハイム 貴族院

ルマンド・フォールド 鳳凰の間

リーラ・ハントン 睡蓮間

……

それぞれの指導員に話を聞け。

以上。」


 睡蓮の間…どこ?それ?

 リーラが動揺していると短めの綺麗な薄緑色の髪、オースティンと同じ若葉色の瞳を持った男性が現れた。

「君がリーラ・ハントン…だね。私は君の指導員…?になったよな。

私は副隊長のラッセルだ。皇太后の警備担当だ。さぁ、行きましょうか?」

と手を差し出された。私が動揺しているとオースティン隊長がラッセル副隊長に拳骨げんこつを入れた。

「痛い〜。」

「普通でいいんだよ、普通で。キャサリンみたいにすればいい。」

ラッセル副隊長は手をポンとたたきキャサリン隊長ね、了解〜と私を睡蓮の間に行こうとうながした。

 移動の道中、ラッセル副隊長はリーラをじっと見ている。

「あの、何か…。」

「はっ、すみません。王女様をじっと見るなど失礼しました。」

「あのぉ、勘違いされてるかも知れませんが、私は王族で生活してた訳でなくずっと平民として暮らしていましたから一騎士として対応して下さい。」

あきれて言うと、

「失礼しました。

…境遇まで一緒なのか…」

ラッセル副隊長が最後ボソボソ言ったことは聞き取れなかった。


 黒獅子棟から金獅子棟に入り奥まで歩く。花らしきものが彫られた扉についた。

「ラッセル、参りました。皇太后様失礼します。」

と扉を開けた瞬間、花のようないい香りが漂ってきた。

一人の女性がこちらにやって来た。

落ち着いた光沢のある紫色のドレスを着た、つやのある水色の髪を綺麗に結い上げている。

「待っていたわ。この子がそうなのね。」

リーラは挨拶をしなくてはと

「騎士候補生2年 リーラ・ハントンでございます。」

と騎士の礼をすると、

「顔をあげてちょうだい。」

と蜂蜜色の瞳が私を見つめる。目の前の女性は私の頬を優しく触りふふふと笑い、さぁ、行きましょうと手を取られた。優しく手を握ぎられ部屋から違う所へ行くようだ。

皇太后が

「今からお茶の訓練よ。が必ず通らないければならない道よ。」

リーラはラッセルを見るとそうだと頷いた。

別の広間に行くとすでに先客いたようだ。

「母上〜、遅いですよ〜。」

男の子とリーラと同じ歳くらいの女の子がいた。

周りに護衛の近衛騎士の中にはレンとアンディもいた。

「エリザベスとエリオットよ。堅苦しい礼は必要ないわ。さぁ、かけてちょうだい。」

「座る…のですか?」

「そうだよ、の訓練だよ!みんなも通った道だよね。」

エリオットは周りの騎士に同意を求めると騎士達はしぶしぶうなずく。


「はい、わかりました。」

半信半疑だか覚悟を決めて座る。

皇太后と二人の殿下がリーラを見つめている。

「さぁ、お茶の訓練開始よ。」

皇太后は笑いを堪えながら話を始める。

「茶の葉は迎えるゲストを考えながら選ぶのよ。このお茶はリヴァリオンで取れたものよ。」

 ティーカップにきれいな紅色が注がれる。少し薔薇の香りがする。カップにもティーポットには綺麗な薔薇か描かれていた。

「あらっ、気づいてくれた?薔薇も生産していたでしょう。馴染みのある花柄にしたのよ。どうぞ、召し上がれ。

 私はカップを手に取り一口飲む。ふと、おばあ様が入れてくれたお茶の味と一緒だと気づく。走馬灯のようにロンと一緒に城に忍んで遊んだ薔薇ばらの迷路を思い出す。


 瞳から一筋の涙が流れる。はっと気づく。


「申し訳ありません。」

手でぬぐうとエリザベス殿下が私の横に来て涙をハンカチで涙をいてくれた。


「ごめんなさいね、悲しいことを思い出させてしまったわね。」

皇太后様は、申し訳なさそうに仰った。

「いえ、こちらこそ大変失礼しました。今となっては貴重なお茶を振る舞って頂きありがとうございます。祖母がよく入れてくれたお茶でした。」


しんみりした雰囲気を変えようとエリオット殿下が話し出す。

「リーラ王女は騎士候補生なんでしょ。私も来年から入るんだ。」

「エリオット殿下。私は王女ではありません。どうぞリーラとお呼びください。来年から騎士学校に入るんでね。頑張ってください。友人も沢山できて楽しいですよ。」

「そうなの!楽しみだなぁ。騎士学校でどんな勉強するの?」

「周辺国の情報も学べたり鍛錬の練習も色々な人と相手が出来て強くなれますよ。」

「エリオットばかり話をするなんてずるいわ。リーラは私と同じ歳ですってね。私のことはベスと呼んでちょうだい。」

「えっ??…いやぁ、呼べないような…」

ラッセル副隊長を見るとうなずいた。

「では、ベス様。」

「様??まぁ、おいおいね…。」

「リーラ!剣の練習しようよ!」

エリオットは立ち上がりリーラの手を引く。

「はい、喜んで。」

 二人は皇宮の鍛錬室に向かった。


「聞いていたよりマナーは大丈夫のようね。次は昼食ね。ふふふ、楽しみだわ。」

「私も同じ歳の子と話せて嬉しいわ。綺麗な子だし、お兄様の妃候補にいいんじゃないかしら?」

探るような眼差しでシャーロットを見るエリザベス。

「そうね…呪いを消せる力も持ち合わせリヴァリオン国王女。悪くないわね。我が血族には迎えいれなくてはいけないと思うけどクリスの伴侶にするかは判断出来ないわ。この国にはカリスマ性のある人物を求めているわ。彼女は適性があるかしらね…」

「適性ね…皇族の結婚は難しいですわね。」


 ラッセルはリーラ王女が妃候補だなんてとんでもない話を聞いてしまったと小さくため息をつく。





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