第4話 実地訓練ー帝都編ー1

 候補生2年目には、第2,第3番隊で実地訓練を受けることが慣しだ。今日からシャルケ組は第3番隊実地訓練に入る。

 リーラは上下黒の騎士服に身を包み、黒革の編み上げブーツを履く。そして、腰にエクストリアを剣帯をする。

 

 鏡の前でポーズを決める。

「なかなかかっこいいじゃない?!」

 髪も少し高い位置で縛れるようになった。黒色リボンを結び出来上がりだ。

「キャサリン隊長に少しは近づいたかな?」


「リーラ、準備できたか?」

ダリルの声が聞こえ、

「はーい」

と下に降りる。


 リビングに降りていくと見知らぬ簡素な服を着た黒髪の青年がいる。ぺこりと頭を下げると青年も頭を下げる。

「本日よりリーラ王女護衛を任されました第1番隊のレンと申します。よろしくお願いします。」

「はぁ…えっ、私に??護衛?!どういうこと?」

「陛下の判断でリーラに護衛をつけることになった。私も仕事がありリーラを守りきれない。今日から帝都での実地訓練が始まる。危険もあるかもしれないからな。」

「いや、王女って扱われたこと人生で一度もないから護衛もいらないと思うんだけど…。」

「リーラ王女様、護衛はわからないようにしますのでご安心ください。私の他にも第1番隊アンディがお側に控えますので今後ともよろしくお願いします。では。」

レンは必要な事だけ話すと立ち去る。


「リーラ、とりあえず、問題を起こさないように。あと、危険が近づいても自分から絶対首を突っ込むな。団体行動だぞ!」

「あー、朝から全くうるさいなぁ。わかってる、わかってる。行ってきまーす。」

「こらぁ。まだ話が終わってないぞー!」

あれ以上注意されたら耳が痛くなるよ。


『もう少し、ダリルを労われ。』

『はい、はい。』


 第3番隊の詰所は帝都の中心、セントレア通りにあり質屋街の横に隣接していている。騎士候補生2年のシャルケ組は詰所の会議室に集められた。


「シャルケ組の諸君!おはよう!第3番隊副隊長のエドモンド・キングストンだ。名前長いからエドって呼んでくれたらいいから。毎年、候補生が冬の間に来てくれて助かるよ〜。地方から来ている奴は冬に実家に戻って手伝いとかあるからまとまって休みをとるんだよ。実地訓練とかいうけど、まじで仕事してもらうからね。じゃあ、みんなよろしく〜」

エドモンドはウインクして去って行く。シャルケ組は副隊長の軽さに動揺していると小隊長らしき人が説明を始める。

「はーい、副隊長の挨拶でした。では、3番隊は10の班で分かれています。そのうち街の中心部の4班に所属してもらうね。仕事内容は雪が本格的に降る前に街は買い物客で賑わうのでスリとか泥棒とか色々悪さする人が多くなる時期なので取り締まりをします。あと買い客が子連れでくるから迷子も多い。

 雪が降ったら怪我人も多くとにかく色々起こるから臨機応変に対応してくださーい。以上。解散!」


「思ったより軽い感じだな。俺にぴったりだ。」

アデルが満足げに話す。確かにアデルにぴったりの隊のようだ。


「さぁ、君達はこっちだ。私は5班の小隊長のパブロだ。平民街担当となる、毎年助かるよ。10人では、動けないからね。2〜3人に分かれくれる?」


「リーラは私と組もう。」

ルマンドが申し出てくれた。

「あっ、うん。」

リーラが気づくとアデルはサザリーと組んでいた。なんか故意的に組まされたような気がした。

「決まったかな?じゃあ5班の詰所に移動するね。詰所に指導してくれる先輩騎士がいるからね。」

 5班の詰所に移動の道中、街は人で混雑していた。みんな冬籠ふゆごもりのため荷物をたくさん持っていた。ぴゅーっと冷たい風が吹く。もう冬がやってきているかもしれない。


 5班の詰所に着くとリーラ達の担当の先輩騎士を紹介された。イアンは16歳で紺色の短髪の人が優しいそうな青年だ。騎士歴は2年目に入る。

 早速、一行は街にパトロールに出かけた。

「正直なところ町の南側に来たのは初めてなんだ。」

「私もそうだよ。」

ルマンドも同意する。

リーラはキョロキョロと周囲を見た。街の中心と外れではここまで貧富の差があるんだと感じる。

イアンはくすっと笑い、

「君達、貴族だろ。驚いた?でも、このあたりもだいぶましになってきたんだよ。さぁ、行こうか。まず、スリね。年配者が狙われやすいから、年配者の後ろに怪しい人がいたら声かけていくよ。」

「「はい。」」


 しばらく歩いていると子供の鳴き声が聞こえてきた。駆けつけるとお母さんとはぐれてしまったらしい。

「よし、よし、泣くな。ナンシーさんとこの子だな。ママは?」

「買い物行く途中でよそ見したらママいなくなった、え〜ん、え〜ん。」

「よし、よし、抱っこしてやるから店まで見に行くぞー、よいっしょ。」

イアンは、軽々抱き上げ歩き出す。

「先輩、子供の扱いに慣れていらっしゃるですね。」

ルマンドが聞くと

「あはは、5人も兄弟いるからね。

あっ、ナンシーさんだ!見つけた。

ナンシーさーん!」

子供を探している女性が走ってきた。

「イアンさん、ごめんなさい。目を離した隙に、助かったわ。抱っこまでしてもらって〜、ありがとうございます。」

女性は子供を受け取り頭を下げて去って行く。


「泥棒ー。」

オレンジを握った男の子が走って行く。リーラはすぐに人混みをくぐり抜け男の子を抱き上げる。

男の子は、足をジタバタさせた。

「離せー、離せー。」

「勝手に取ったらダメだろう。」

「騎士様ありがとうございます。」

果物屋の店主が追いついてきた。

イアンはオレンジを店主に返し子供はこちらで親に注意するのでと納得してもらった。

「親が共働きで家に一人でいるのが寂しく親を困らせてやろうと盗んだりするんだ。ひとまず、詰所に戻ってこの子にお菓子でも食べさせてから親を探そう。」

リーラ達は詰所の戻り男の子にお菓子をあげると喉が詰まるんじゃないというくらい勢いよく食べていた。落ち着いて話を聞くと家族が帰ってこなくなり何も食べてなかったらしい。

 結局、この男の子はパブロ小隊長が孤児院に連れて行く事になった。

「私達は、本当に恵まれているね。」

ルマンドが辛そうに言った。

「本当だね。」

リーラは自分の人生はかなり不幸だと感じていたがこの男の子と違い食事だって満足に食べて住む所だってある。そして家には父さんがいる…今日の朝のことを思い出し帰って謝ろう決意する。


 

 リーラが家に帰るとダリルがすでに帰って夕食を作っていた。思わず後ろから抱きつくと、

「どうした!何かあったのか!」

とかなり驚く。

 今日あったことを話すと優しい表情でリーラは成長したということだなと頭を撫でた。

 


 

 リーラは、暖炉の上ににかかる短剣を見つめた。迷子になっていた子がママと泣いていたのを思い出す。

「ママかぁ…」

なんとなく短剣にママと呼んでいいよと言われたような気がした。

ふふ、リンダママ、父さんをこの時代に送ってくれてありがとう。そっと短剣を触った。




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