第3話 そばにいる敵
授業が終わり鍛錬の時間がやってきた。
「リーラ様〜」
ラディリアスがリーラのもとへ走ってくる。
「明日から実地訓練ですね。気をつけて頑張ってくださいね。」
「ありがとうー!頑張ってくるね。久しぶりに打ち合いしようよ!」
「リーラ様と打ち合いできるなんて〜
たくさん打ちのめしてください〜。」
「えっ?はぁ。まぁ、よくわからないけどするか。」
カン、カン、カン。
「ラディ、やっぱり男の子だね。一撃が重くなってきたね。」
愛称でよんでもらい呆然とするラディリアス。
「あれっ?隙あるよ。」
勢いよく木刀を打ち込む、カーン。木刀が落ちた。
『ラディって愛称で呼ばれた…ふふふ。』
にやにや笑うラディリアスにみな冷たい眼差しを送る。リーラは、ラディリアスの顔の前に手を振る。おーい、おーい、剣落としてるよ。
突然後ろから声をかけられた。あの茶色の髪の子が無表情で話す。
「リーラ先輩、私とも手合わせお願いします。」
「あっ、はい。」
お互い向き合う。
訓練場の脇に置いた上着の中にいたエクストリアが警戒の念話を送ってきた。
あちらが素早く一歩を踏み出し打って来た。受け止める。打つ。早い、打って来た。止める。私だって、毎日遊んでいる訳ではない。相手が動く前に打ち込みを入れる。カーン、カーン、カーン。
「はぁー。」気合いの一打だ。
カーン。ジェフという子は剣を落とした。
「ありがとうございます。」
剣を拾い無表情で彼は言った。
去り際に
『リヴァリオン』
と言われたような気がした。
私は気になり彼を見たがジェフという子は振り返る事なく寮へと戻って言った。
********
ふん、ふん、ふん、鍛錬の練習を終えたラディリアスはご機嫌で寮へ戻る。パサ、パサ、パサ。鳥の翼の音が寮の裏手から聞こえ足を運ぶとジェフが空を見上げている。
「おい!」
彼は僕を見るとビクッと体を揺らした。
「なぜ、ここに。」
「いや、別に、なんか音がしたから。」
ジェフはいつも一人だ。ラディリアスは昔の孤立をしていた自分自身を思い出し、なんとなくほっておけなく感じた。
「おまえ、鍛錬せずにさっさと寮に戻っただろう〜。先生にバレたら怒られるからな。夕食まだだろう。一緒に行こう。」
「あぁ。」
食堂は人で賑わっていた。みな、ラディリアスが連れている人物が珍しいのかチラ、チラと見る。
リーラ様にしっかり平民の世話をするように言われたからなぁとラディリアスは考えながから席を決める。
「ここに座ろう。さぁ、きみは細いんだからしっかり食べないと。ちゃんと食べてる?」
ジェフはラディリアスをじっと見つめた。
「じっと見てすまない。弟を思い出した。弟は世話焼きでいつも食事をしっかりたべているか聞いてくるんだ。」
「へぇー。弟がいるのか。僕もさ、君と同じくらいの年の兄がいるのさ。」
二人で顔を見合わせラディリアスは彼に笑いかけた。ジェフの表情は少し崩れ、緩んだ顔を初めて見た。
「弟さんの名前は?」
「弟の名はサムだ。」
「そうだ自己紹介もまだだったな。僕の名はラディリアス。」
「俺は…ジェフだ。」
「よろしく。」
「あぁ。」
「弟は何才?」
「まだ、10才なんだ。」
「街にいるのか?」
「……遠くにいる。」
「そっか、寂しいな。」
「おまえ、あの女性騎士と知り合い?」
「知り合いというか〜去年一緒のクラスだったんだ。僕、問題起こしてさぁ、退団になって受け直したんだよ。」
「あの騎士の出身は北の方か?」
「確かお父様からリヴァリオンからの亡命者と聞いたよ。」
「リヴァリオン…」
『リーラ…一致した。見つけた…
やはりあいつだったか。』
ラディリアスは何かジェフがふと笑ったような、何かを呟いたような気がした。
「食べ終わったら、汗流しに行こう、
さっぱりしたいよな。」
「あぁ。」
2人はシャワー室に行く。昔、リーラがここを使っていたことを思い出し、ラディリアスは思わず赤面しながら想像はする。
《僕は、なんてふしだらなんだ…》
ふと、風が吹き一つのシャワー室のカーテンが揺れた。ジェフの背中が見えた。
ラディリアスは、はっと驚いた。
彼の背中に無数の傷があり、すぐに目を逸らした。
『僕は後悔した。このことをすぐにリーラ様に伝えなかったのか。そして、僕が漏らした情報でリーラ様を窮地に陥れてしまうなんて思わなかったた…』
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