第2話 対なる剣 

        皇宮 


 朝から賑やかな皇宮。皇宮に仕える者達は顔がほころび手を動かすより口を動かす方が忙しいようだ。

「陛下の呪いが解けたらしいわ。」

「わかるわ、チラッと拝見したんだけど今日のお顔の表情がすごく良かったというか、なんだか神々しくて素敵で…」

うっとりした侍女が頬を押さえながら話すと何の話?と他の侍女達も集まり話を始める。こんな具合で皇宮はこの話題で持ちきりだったのだ。

 

 

 皇宮のクリストファーの執務室

 

 クリストファーの他に宰相ルドルフ、ハルク、ビル、ダリルが執務室に集まっていた。


「昨日、ビルから聞いた時は驚きました。まさか呪いのが解けたとは半信半疑でしたが陛下のお顔を拝見でき安心致しました。ダリル殿の功績をたたえねば。」

宰相ルドルフは円満の笑顔だ。

「あぁ、昨日は久方ぶりに良く寝れたよ。身体が本当に軽い。」

クリストファーの顔には目の下のクマはなく瞳の色も黒色から灰色に変わっていた。

「まさかダリル殿に親子関係もなく、リヴァリオン国の王女が騎士になってるとは驚きの連続です。」

「宰相の言う通りだ。ダリル殿を疑う訳でないが…ビル、ローズ夫人には確認を取れたか?」

クリストファーが尋ねると代わりにルドルフが語る。

「ローズをはじめ侍女達を集め話を聞きました。リーラ姫は間違いなく第3王女でございます。髪と瞳の色から側室の不貞を疑い赤子である第3王女を側室の生家に送ったそうです。しかし、あの国では見かけない髪と瞳ですな。本当に初代王の先祖返りなのですか?」

ルドルフは確認するように皆を見る。

「はい。あの髪と瞳の色は特別な力の継承者の証です。かつて外部に漏れないように封印されましたが再び力が現れたのは恐らくリヴァリオン国の危機を察し出現したのではと推測しているのですが…」

ダリルが説明をする。

「具体的にはどのような力を?」

ルドルフが尋ねるとダリルは話しづらそうな表情を浮かべたので代わりにクリストファーが話す。

いやしの力と言われ光の精霊から力を授かり傷などを治せるらしい。今回の呪いも癒しの力で解くことが出来たのだ。」

⁈そのようなものが実在するのですか⁇信じ難いですが…では、リーラ王女が呪いを解いたのですか?」

「リーラ王女だけではなくダリル殿の助力もあり解く事ができた。」

「そうですか。しかし、その力を王国は知らなかったのですか?」

「王女の母親である祖父母の家系のみこの力について伝承しており王家は全く知らないようだ。祖父母も伝承内容からリーラ王女を秘匿ひとくして育てた方が良いと判断はしたそうだ。」

「そうなのですか…

 もしや、ゾーンがリヴァリオンを攻めたのはローズではなくリーラ王女を狙っていたかもしれないのですか?」

「いや、その点は全くわからない。しかし、あの国は宗教国だ。もしリーラ王女の存在を知れば神のように讃える象徴として喉から手が出るほど欲しいだろう。」

「我が国に来た事は不幸中の幸いでしたな。あの国に王女が渡れば周辺国の情勢に悪影響を与えそうですな。

 では、ローズ同様リーラ王女の後見人になりましょう。次男の嫁にいかがでしょうか?」

ルドルフの先走る話にダリルは不安そうな表情をクリストファーに向ける。

「早まるな。なぜ、そうなる。リーラ王女はまだ13歳だぞ。ニコラスは20歳だろうが。それに婚約者もいるだろう。」

「あははは、すみません。養女にしましょう…。」

「まだ決断はできない。リーラ王女は赤子の時から城から出されておりローズ夫人とは全く面識がない上ローズ夫人を始め王達を嫌っていたようだ。いきなり姉であると言われても混乱するだろう。昨日もビルが義妹だからお義兄にい様と呼べとかなりしつこく付きまとっていたからな。一層こじらせたぞ。」

「クリス、酷いじゃないか?!僕はずっと妹が欲しかったんだ!」

皆から呆れた視線を向けられるビル。

 ダリルは話題を変えるように、

「リーラ王女は複雑な環境で生きてきたので無理強いは避けて頂きたい。

王女には今はどんな敵が来ても自分で最低限身を守れるよう騎士としてこのまま籍を置かせて頂きたいです。

 あと、今のリヴァリオンの現状を教えて頂くことは可能ですか?」

ルドルフはこれまでの報告を話す。

「今入っている情報では王族は全て殺害…城内にいた騎士も全滅。抵抗した者も殺害されたようです。

 ゾーン国から周辺国にリヴァリオンからの入国者リストを見せるよう要求がありました。国で保護しているならロン・グリットとリーラ王女の引渡し要求もありました。

 まさか、この国に王女がいるとは…あの国とはもともと国交はないのも同然なので黙秘しておりましたが…」

「つまり、あちらもリーラ王女の力に気づいている可能性があるか…」

クリストファーは顎に手を置き考える。

「リーラ王女には極秘に護衛をつけよう。このまま、リーラ・ハントンとして騎士のまま生活を行い自身でも守れる力をつけた方が良い。あの性格だ、部屋に閉じ込めるなど無理だろう。」

クリストファーはふっと笑うとまわりも同調した。

「あれは大変なじゃじゃ馬王女だからな。陛下、配属先はどうします。確か希望は第4番隊だったはず…」

ハルクが難しい顔をする。

「配属部隊はビルの第1番隊へ。皇太后の護衛として付ける。王女は全く貴族の礼儀を学んでないようだから護衛兼学習の場にさせようと思う。母上には事情を話すつもりだ。あのじゃじゃ馬を矯正せねばならぬだろう、ダリル殿。」

ダリルは仰る通りですと頷いた。



 その時、リーラは「はっくしゅーん。」とくしゃみをしていた。

リーラの配属先が第1番隊に決まった瞬間だった。


「では、解散する。ダリル殿、この後少し見てもらいたいものがある。」

「はい。わかりました。どちらにいかれますか?」

「宝物庫だ。ローズ夫人が持参金としてリヴァリオン国から宝を頂いたのだが年代等が知りたい。一緒に見てくれないだろうか?」

クリストファーとダリルはビルを伴い移動する。

「私は宝を見ても詳しいことはわかりませんよ。聖剣様はずっとあの国の宝物庫にいましたからね。あの方に聞けばよろしいのでは?」

 

 宝物庫に3人は入りクリストファーとビルは顔を見合わせる。

「ダリル殿、この短剣だがあなたの剣と対なる剣ではないか?」

 クリストファーは、太陽と月と薔薇の刻印のある短剣をダリルに手渡す。

 ダリルの手が震えた。

「ええ。この剣は王から私とリンダに授与された対なる剣です。」

「あなたの手元にあるべき剣だと思う。お返しする。」

「ありがとうございます…感謝致します。」

 

 300年の時を超え、対なる剣はようやく再び出会えた。

 ダリルは家に戻るとリビングにある暖炉の上に短剣を飾る。

「リンダ、きみの剣と再び出会えたよ…」

 対なる短剣はダリルとリーラの新たな話し相手となるのだった。





 

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