第11話 鍛錬見学と希望への道標

真っ暗な闇。あぁ、また夢か…


森の中だろうか木々の揺れる音がする。葉がこすれる音がする。


助けてくれー。

剣で切られ音がする。ザクっ。


血が飛び散る音がする。パシッ


殺さないでくれー。グサっ。


やめてくれー。死にたくないー。バサっ。


《もういい加減にしてくれ。》



また、女の叫び声だ。


やめてー。

助けてー。


《助けれるなら私が助けてやりたい…》


助けて、ダリル。


ダリル…



はっと目が覚めた。今日は、特に鮮明に声が聞こえた。

ダリルと…


ダリル。偶然の一致か…


もしかするとダリルに助けを求めろと神からのお告げなのか…



 その日の夕刻、自然と足は騎士学校に向かっていた。


 訓練場ではダリルとリーラが鍛錬中だった。そして周りにいるものはみな手を止め2人の剣さばきを見ていた。

 あぁ、見ずにはいられないだろう。互いが本気で打ち合っている。ダリルは一切妥協せずにリーラの体に打ち込みをいれる。本来なら暫く痛み動けないはずだが呼吸を整えすぐに打ち始める。先程打ち込みを入れられた箇所に再び剣が来ると寸座で受け止めている。あまりに早い2人の打ち合いは騎士候補生の練習の枠を超えている。何かに追い詰められているかのように必死に強くさせたい、強くなりたい、お互いの気持ちを強く感じる。昔の私を見ているようだ。あの時は必死で強くなる為にハルクに鍛えられた。

 2人の剣さばきに圧倒されていた外野は自分達も負けていられないと練習を始めた。なかなか良い相乗効果を出している。私は2人を見つめているとダリルは私に気づき手を止めリーラに休憩を促した。


「陛下、こちらに起こしになられるとは。どうかなされました?」

ダリルが気遣うようにこちらにやって来た。

「稽古、なかなか精が出るな。周りにもいい影響が出ている。

…娘に容赦なく打ち込むんだな。」

「あはは。いやぁ、私も持てる全てを娘に託したくてついつい本気になってしまいました…」

「まぁ、人それぞれ親子関係はあるだろうしな。

今日はダリルに用事があったのだ。

明日ビルと薬草採取に行くと聞いた。私も同行したいのだか…」


「えっ?」

「えー!」

ダリルの娘が気付くと私達の話を聞いていた。

「リーラ!いつのまに!」

「陛下も一緒に来るんですか…」

酷く嫌そうな顔をされる。私が行くのがまずいのだろうか。

「だって、ずっと敬語使わーふがふが

ふがふが」

急に他の騎士候補生達がやって来てリーラの口塞ぎどこかへ連れて行った。

ルマンドが焦ったように目を泳がせて、

「陛下、失礼しました。どうぞ、ダリル先生とお話を続けてください。では私達は反省会があるので失礼します。」

と皆で素早く去って行った。私は避けられているのだろうか。

「陛下、先程の失言お許しください。娘はなかなか礼儀を学べておりません。明日は娘も参ります。恐らく口を開く度に失言の連続になるかと…。」

 あの娘そこまでひどいのか…と思うとくくくっと笑いがこみ上げてくる。

「大丈夫だ。処罰など言わぬから安心してくれ。ダリルも娘がじゃじゃ馬だと大変だな。」

と話すと、

「全くその通りです。しかし、陛下の護衛はどうするのです?娘は足手まといになるかと。今から護衛人数を編成…うん?」

ダリルの肩をトントンと叩きニヤッと笑う男がそこにいた。

「俺が一緒に行こう。それならば少人数で動けるだろう。」

「おまえ、また来たのか。ハルク。」

 本当に総隊長の仕事しているのかと言われガハハと笑いごまかしているな。本気でさぼっているのではないだろうか、このじじい。


「まぁ、良い。隊長2人が護衛として居れば問題ないだろう。」

「陛下のお供など久しぶりですな。よくビルと合わせて3人で戦場を走り抜けましたなぁ。」

「あぁ、本当だ。」

13歳から父や兄のためにずっと走ってきた。よく死なずにこれたのもハルクのおかげでもある。


「ダリル、打ち合いしよう!」

「またか。お前、暇なのか?」

と2人の打ち合いが始まる。話を聞くとよく打ち合いをするらしい。

 隊長クラスの打ち合いなどなかなか見れない。これを目当てに多くの騎士が見学にやってくる。二人は向き合い打ち合いを始める。

シュッ、カン、シュッ、カン、力強く響く速さを伴う剣の音。先程の娘との打ち合いとは全く違う。周りに歓声が沸き始めた。また、騎士が増え始めたので私は残りの執務を片付ける為に訓練場を後にした。


 

 私はいつも通り浅い眠りで翌日を迎えた。しかし、いつも重苦しい朝を迎えるのだか今日はなぜが違った。私は期待してるんだろう。


 彼ならなんとかしてくれるのではないかと…我ら一族の呪いを。

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