第7話 金獅子の賢者

 ダリルは、黒獅子棟に隣接する回廊に渡りクリーム色の石造りの建物(通称金獅子宮)の中に入る。陛下に呼ばれ皇宮にある執務室に向かう。


「ダリル殿、おはようございます。」

警備の騎士が声を掛ける。鍛錬で顔馴染みの騎士だ。

「おはよう、陛下に呼ばれているので通してもらえるか?」

「はっ。どうぞ。」


 獅子の彫刻がされている荘厳な扉を叩く。

「ダリル、参上しました。」

「入れ。」

 扉を開け中に入ると、クリストファーの他にソファーに腰掛けるハルクとビルの姿があった。


「ダリル、座れ。」

クリストファーは声をかけるとビルに合図を送った。

「ゾーン国に送った諜報部隊に帰還命令を出したんですが返答がありませんでした。再度送ってみましたが、やはり返答ないか状態です。ダリル殿の仰る通り消された可能性があります。」

「何人送ったんですか?」

「3人です。リヴァリオン国にいた者は連絡がつきました。」

うむと顎に手をやりながら考えていると横にいたハルクが話を始めた。

「ダリルが言っていた甘い匂いの思考力を下げるのはこの様なものか?」

 ハルクは、厳重に封をされていた袋をあける。ダリルはそれを手に取り、匂いを嗅ぎふっと笑う。

「ハルク、これだ。」

 クリストファーとビルに渡し2人にも確認させた。

「そろそろあの国、重い腰を上げ始めたんでしょうかね。」

 ダリルは、腕を組み天井を見上げ、何か考えているようだ。


「陛下、諜報部隊全ての者に帰還命令を出し再編をかけるのは可能ですか?」

「あぁ、問題がないわけではないが。」

クリストファーはその真意が知りたくダリルを見る。

「前回も話しましたが知識と対抗策が得てから活動させた方がいいですね

。この香には、名前がありまして「魅惑の実」です。あの国にある特殊な果樹から取れる実なのです。あの国は毒薬系の生産が強いと思われます。新たに開発している可能性も高い。私が確認するところ我が国の毒薬知識が少ない。解毒方法もお教えてから活動させましょう。諜報部隊以外にこれを機に全領内騎士にも教示お願いします。」

関心したようにクリストファーは頷き、

「わかった。早急に対応しよう。」

と答えた。


「市場に出回っているのは回収させましょう。新聞に載せ使用するとやがて廃人になり死亡すると警告を出したらいかがですか?

 犬を訓練させて調教して匂いを判別させるのです。関所や町に警備している時に同伴するのはどうでしょうか?狼と犬の混血犬なら匂いに敏感で役に立つのでは?」


「おまえ、天才か?!もう俺の代わりに総隊長やってくれ。」

ハルクは、ダリルに懇願するように見つめると、

「嫌に決まっているだろうが!ただでさえ仕事も山のようにあるのにじゃじゃ馬娘の世話もあるだぞ!」

「じゃあ、愚痴でも聞くから飲み行くか?」

あははと笑いながら、ダリルの肩を叩くとハルク手を払い、

「駄目だ。リーラが酒の匂いが臭いと嫌がる…」

「娘には、嫌われたくないなぁ。」

2人は、しみじみと同意しあった。

ちなみにハルクには、2人の娘と1人の息子がいる。子供達は皆騎士だ。ちなみに息子のエドモンドは第3番隊副隊長だ。皆結婚しており孫のいる。


「おまえ達、いい加減話を戻すがいいだろうか?」

クリストファーは呆れながら話に割り込んだ。


「ダリルの案を早速遂行させよう。宰相を呼べ。あと周辺国にも警告を出したい。ダリル大丈夫だろうか。」

「もちろんでございます。」

「解毒薬だか見せてほしい。」

「もちろんでございます。休日に娘と薬草取りに行っておりますので準備しておきます。」

「この国で取れるのか?」

「数多くの解毒薬の元は山で取れます。魅惑の桃の解毒剤は、ルミナスリーフ草は見た目は雑草ですな。空気が綺麗で水が綺麗な場所に生息しています。月の光に浴びる所に生息するからその名が付きました。乾燥させてお茶にしたり、爽やか匂いがするので香袋にしたり、私は、絞って身体に塗りつけてましたがね。」

クリストファーはふむと関心し、幾つも修羅場を潜り抜けて得た知識だろうと想像していると、

「私も薬草取りにご一緒していいですか?」

ビルが懇願した。

「えぇ、しかし少し馬を走らせ、ノース山脈まで行きますが大丈夫ですか?」

「大丈夫です。先生よろしくお願いします。」

ビルは、紺青色の目を輝かせダリルを見つめた。

「先生…って。」


「確かにダリルは、かなり昔の知識を持っているからな、賢者みたいだな。官史達が金獅子の賢者と呼んでるぞ。」

ハルクは、にやり笑いながら揶揄からかう。

「なぜ、金?」

ダリルは、首を傾げると、

ハルクは、トン、トンと頭を指して

「おまえの髪、金色だろう。あやつらは、何かと金獅子の名を使いたいのだ。金獅子の賢者殿。」

とダリルに向かってウインクしたのだった。

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