第5話 長年の仇

  黒獅子棟、騎士隊総本部。

 ロビンソン学校長は、ダリルを連れ総隊長の執務室に前に立つ。

「失礼します。先日お話しました、ダリルを連れてまいりました。」

入れと声がかかり中に入る。

「学校長、すまないな。

この後の隊長会議に陛下の臨席を仰いだのでダリル殿を紹介したくてな。」

ダリルはハルク総隊長の前に立つ。「この度、教員として着任しました、ダリル・ハントンでございます。」

「あぁ、私は、騎士総隊長を任されているハルクだ。この後、各騎士隊長と陛下に是非貴殿の話を聞かせてもらいたい。よろしく頼む。」

ハルクは、手を差し出しダリルと握手する。

 2人は互いに親近考えを覚えた。同じ様の風貌の2人、くぐり抜けてた修羅場の数も似たようなものかもしれない。歳も近いこの2人、友人となるのに時間はかからなかった。


 ハルクは、ダリルを連れ会議室に向かった。すでにいつもの顔ぶれは集まっていた。

「では、定例会議を始める。まずは、騎士学校に着任したダリル殿を紹介しよう。」


「はじめまして、総隊長に紹介頂きました、ダリル・ハントンでございます。リヴァリオン国から参りました。我が知識を帝国に捧げることを嬉しく感じております。娘のリーラが先にお世話になり、大変ご迷惑かけました。お許し頂きたい。」


『ずきゅん。』

『今の副声音なんですか???キャサリン隊長。』

キャサリンとビルは、こそこそと話を始める。

『ばかっ!私のハートが射られた瞬間なのよ!!』

呆れ表情のビルは、キャサリンにバシバシ叩かれる。


 手を組み目を輝かせて一言。

「長かったわ、私の32年。ようやく私にも恋が舞い降りたんだわ。」

「おまえ、馬鹿だろう。」

しらけた眼差しでオースティンはキャサリンを見た。

「やかましい、雑草男。黙ってろ。」

「ほらほらオースティン隊長もキャサリン隊長も喧嘩しないでくださいよー。」

 そんなことばかり言っているからキャサリン隊長の心が掴めないんですよとオースティンに残念な表情をビルは送った。


 騒がしい隊長達にハルクは一喝する。

「おまえら、やかましい!!!申し訳ない、ダリル殿」

「ははは、いえいえ。」


『素敵だわ、あの笑顔。隠してけどにじみでてる鍛えているだろう身体つき。堪らないわ。そして男前だわ。』


トン、トン。

案内の騎士が声をかける。

「失礼します。陛下と宰相がいらっしゃいました。」


一斉に立ち上がりクリストファーに騎士の礼をする。


「楽にしろ。」

クリストファーは席に着くと、金髪の大男に目をやる。

「あれは」

「新しく着任した教師のダリル・ハントン殿です。」

ハルクはすぐさま答える。

「あぁ、貴殿か。なかなか有益情報こちらとして助かる。」

 ダリルは、クリストファーを暫く凝視したが、慌てて言葉を発する。

「あっ、いえ、いえ、お役に立ち何よりでございます。ダリル・ハントンでございます。」

 

 挨拶が終わったのを確認し、ハルクは会議を進行する。

「では、会議を始めるぞ。各隊からまず報告はないか?」

「第1番隊はございません。」

「第2番隊からは先日の鼠は、こちらの失態で吐かす前に自害し得れる情報はありませんでした。しかし、また貴族院の棟に鼠が現れ入国を管理している書類を探していたようです。鼠については捕獲済み。詳細分かり次第報告をあげます。以上です。」

「第3番隊は、帝都でなにやら怪したい香が売っていたそうだ。今、回収して分析に当たっている。

 後ウィンターニア領の暴動はなんとか鎮圧出来たと思われる。現在は領内の騎士団に任せている。以上。」

「第4番隊は暫くは要人警護はなく、隊員達にも休暇を与えるつもりです。来年、アンデルクの王子の来訪が決定したようなので人選を考えています。私からは以上です。」

「第5番隊からは特に変わりなし。

まぁ、ゾーンの密偵らしき者が関所を通過した。何かありそうなので捕まえているがなかなか吐かん。オースティンに渡すから後は吐かせてくれ。」

「了解しました。」

ハルクは、難しい表情を浮かべながら、

「先程からゾーンの鼠がやって来ているようだ。ここでダリル殿にゾーンの情報を得ようと考えている。では、ダリル殿。」

「はい。ゾーンですがご存知通り宗教国家です。貴族のような身分制はありません。各領地は、司教が平民の力を持った地主に治めさせています。そうですね、昔も今も貧富の差が激しいです。神殿側は、裕福。支配層にいる平民は貧しい。長年見ていても暮らしが楽になっているように思えないです。不満を解消する為に奴隷制度が根付いています。恐らくリヴァリオンの民は奴隷として送られる可能性があります。今その動きはありますか?」

「密偵からの報告は、ビル。」

「今のところ報告はありません。」

うむとダリルは考えこみ、

「もしかしてですが、もうすでにこちらの密偵か消されているかもしれません。」

「なかなかあの国、鼠探しが上手く私も何度も命を狙われましたからね。

匂いの報告は聞いた事はありますか?」

「匂い?」

ビルや隊長一同は、首を傾げる。

「私は、なかなか鼻が効きましてね。

あの国は、色々な匂いがします。もちろん下水完備は出来ていないので大変臭いのですが…

あの国の甘い匂いが1番怖い。恐らく思考力を麻痺させる為。奴隷の思考力を下げさせ扱いやすいようにしています。

 ビル隊長、ゾーンに送っている密偵を引き揚げて頂けますか?ある程度知識を与え解毒薬を渡し対処方法など伝授しましょう。」

ビルは驚く。

「ダリル殿は、薬の知識があるのですか?是非教示よろしくお願いします。」

「もちろんです。」

「あの国の1番上に君臨する教皇はあまり姿を見せない。昔見た時は子供のような小さな姿でした。なぜ教皇を子供にしているのか、枢機卿が影で操り易いように子供なのかまだまだ謎なのです。まだまだ叩けば色々で出来そうな国です。」


「君臨しているのは教皇は子供…」

クリストファーは少し考えこむ。

「遠くから見た時は子供に見えましたね。」

「一度しっかり調査をしよう。ザカルケと言うやつは?一応国の上層部なのだろう。」

「あれは、単なる神殿側の犬です。教職者ではないです。昔から枢機卿と繋がりのある国1番の地主の一族の者で、武芸が達者でもあり将軍を与えられたようです。ご存知かと思いますが妹がリヴァリオン国の王妃サンドラです。武力では奴隷集団の集まりなので統率力は低いと思われます。まともに戦えるのはあいつを含め一部ではないでしょうか?」

「まるでザカルケと戦ったような言い方だな。」

「あははは、何度かあいつとはやり合いましたからね。殺しておけば良かったです。あははは。」


場が一瞬静まりかえった。


ハルクは突然笑い出し、

「あははは。貴殿面白いな!今から飲みに行こう!もっと話したい。お前達もいくぞ。ビルだけは、ゾーンの諜報部隊引き揚げの仕事をしろ。

 ワインでも飲みに行こう!貴殿が授業でナターシャのワインを宣伝したから今帝都はナターシャワインブームだ。」

「いやぁ、嬉しいんですが娘が待ってますから。」

「ダリル様大丈夫ですわ。ネイルにしっかりとリーラの面倒を見るように言付けますわ。」

キャサリンは、ダリルの腕をしっかり掴み部下に伝令を伝えた。

「はぁ、では、今回だけお付き合いさせて頂きます。久しぶりにノーザンランドのリンゴワインも飲みたいですな。」

「「「「リンゴワイン????」」」

「ダリル殿、申し訳ない、リンゴワインなど聞いた事ないのだか。この国の宰相として名産品を知らぬとは…」

ルドルフは、さりげなく目を光らせる。

《あれ?しまった。300年前の話か??》

「あははは、違う国かも知れませぬ。失敬」


「陛下!リンゴワイン、これは我が国の名産品に出来るのでは?リンゴ…確か戦火でほとんど昔燃え尽きましたが、最近りんごの木も増え生産が増えていると聞きましたが…ふっふっふ。」

宰相は目を輝かせて話をした。その後リンゴワインはルドルフの思惑通りにノーザンランドの名産品となる。




 騎士総本部をあとにしたクリストファーは、ダリルに目を向け自身に向ける殺気のような視線、他国の豊富な博識ぶりに気になって仕方がなかった。


     


     * * * * * 


 リンダ。

 300年経った。

 今日見つけたよ。

 君の精霊が呪った男の子孫だ。

 リンダ…

 私は、どうすればいい。

 どうすれば…

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