第4話 騎士候補生試験

 今日は、新しく入る騎士候補生の選抜試験の日だ。私達2年は試験の誘導係を任された。


「受付はこちらです。許可書を準備してください。受付で受験番号を服にチョークで書きます。」

親子連れを受付に誘導していく。


「すみません、リーラ嬢?でいいかな?お久しぶりですと言っても覚えていますか?」

赤髪の少し目がつり上がった表情に見覚えがあった。赤髪兄だ。

「あっ、お久しぶりです。」

「君、女の子だったんだね。先日は弟が大変申し訳なかった。さぁ、ラディリアス。」

「リ、リーラ様、お久しぶりです。

先日は、大変申し訳ありませんでした。一からやり直すつもりで試験を受けに来ました。私は、リーラ様の下僕として未来永劫お使えいたします。」 

 ラディリアスは土下座するように頭を下げた。周りがみなこちらを見ている。

「やめろよ、何してるかよくわかんなし。」

 まぁ、確かあの時下僕になれと言ったかもしれない…

「ラディリアス!止めろ!おまえ何してるんだ??」

 私達は、お互い困惑して顔を合わせた。私は、赤髪兄に向き合いお礼を言った。

「公爵家にお詫びの高価なお酒やお菓子(プラス金)も頂いてますので気にしないでください。」

「そう言って頂けると助かるよ。弟が訳わからなくて本当にすまない。じゃあ。」

「リーラ様ぁー。必ず受かりますー。」

ラディリアスは兄に引っ張られて行った。


「あいつ、変になった?なんかに目覚めちゃったのかな?」

ピーターが聞いてきたから

「さぁ。」

と適当に返事をしておいた。


 新しく試験を受ける子達が並んでいる。ふと一年前を思い出した。あの時は何もかも失って何も持っていない私は、この騎士学校への入学切符を必ず手に入れなければならなかった。

 しみじみと今日までがむしゃらに来たなぁと思う。

 今、目を輝かせて試験を受けようとしている子達にエールを送る。

    《頑張れ!!》


 私達は試験の手伝いや片付けをして引き続き明日をシャルケ先生が説明した。

「明日は、木刀での実技試験だ。

皆には2人ほど担当してもらう。10回ほど打ち込み、10回は受ける。順番は任せる。試験を受ける子達の剣さばきを私達に見せれるよううまくやってくれ。あまり痛めつけるなよ。リーラ、アデル。今の話聞いてたな。

おまえ達、特に注意してやれ。」

周りがあははと笑いが飛ぶ。

「先生、ひどいよ。リーラは大人げないから多分ぼこぼこにすると思うけど俺は大丈夫です。」

アデルは、自信ありげにに余裕ぶる。

「先生!私も大丈夫です。アデルこそ短気の癖に。」

ふんと私は言うと、

「おまえ達の短気ぶりは変わらないぞー。」

ロックがさらっと言うとまたもや、あははとクラスに笑いが起こった。

 くそーっ、明日はちゃんとやるんだから!おまえ達見てろよ!


 

 そして、実技審査当日。


 なんだか、緊張する…。どうして、私が緊張しなくては、いけないんだろうか?

「木刀を使っての実技となります。

相手は、騎士候補生となります。審判の合図に従ってください。」


「105番。構え。始め!!」

ひとまず受ける。10回ね。

「やぁー!」

カン、カン、カン、カン、カン

カン、カン、カン、カン、カン。

おしっ。受けたから、次打つ!

「たぁー!」

カン。

「ひぇ〜。」カラーン。

えっ?!男の子、剣落としたの??私、力強すぎた??


『リーラ、素人に本気で打ったらだめだろう。くっくっくっ。』

短剣で大人しくしていたエクストリアが笑いながら呟いた。

なら始める前に助言しろよ!


「105番審査終了ー。」


 シャルケ先生が私に鋭い視線を送る。す、すいません。次、ちゃんとやります。ルマンドが次があるからと励ましてくれた。手加減、手加減。



 また、次の子がきた。ボサボサ薄茶色の髪をした男の子だ。私より年上?なんだか昔の私みたいだ。気になるけど、どこを見てるかわからない瞳だ。なぜか背筋がぞくっとした。


「木刀を使っての実技となります。

相手は騎士候補生となります。審判の合図に従ってください。」


『リーラ、注意しろ』

エクストリアが呟く。

えっ?

「199番。構え。始め!!」

相手の剣が力強く打ち始める、

カン、カン、カン、カン、カン。

この子、なかなかやる。

ならこちらから、打つ。

正面からだ。カン。

簡単に受け止めた。

ならこらならどうだ。

右、左と打ち込む。

カン、カン。

やるな。

あちらも真っ正面から打ってきた。

カン。そう簡単にさせるか。カン。

お互い休む暇なく打つ。

カン、カン、カン、カン。


「そこまで、終了。」


両者頭をさげた。


もう一度、茶色の男の子を見る。

私は、ビクッとした。彼の瞳には、何も映ってないような生気ないように感じたのだ。



『エクストリア、さっきどうして念話送ったの。』

『感じなかったか。殺気を…』

『あぁー。あれが殺気なの。』


「リーラ、さっきの子、すごかったな。結構、本気出してただろう。あいつ、強くなるな。」

アデルが駆けつけて褒めちぎる。確かにかなりの腕だ。でも、なんだか気になるのはどうしてなんだろうか。



 そして、今日の実技審査も無事終了し合格が発表された。

 今頃、新しい1年生達は説明を受けているだろう。

 訓練場を整備していると後ろから声がする。


「リーラさま〜。」

振り返るとラディリアスだった。

「また、きみ?どうしたの?」

「無事、合格しました。

心を入れ替えて、これから頑張ります!」

「まぁ、頑張れ。また、平民をいじめるなよ〜。」

「は、はい。絶対いじめません。」


「絶対だぞー。あっ、ちゃんと俺のこと先輩と呼べよ。」

アデルが横から口を挟んできた。

「ぐぐぐっ。アデルせんぱい。」

ぷっあはははと私は、大笑いした。

「私も、リーラ先輩がいいー。」

「はい!リーラ先輩。」

なんだか偉くなったような気する。

周りにシャルケ組の子達が集まり、ラディリアスは、全員に先輩と呼ぶように言わされていた。ラディリアスも心を入れ替えた様子を見て、私達は和解できたみたいだ。


 私は、ラディリアスにこっそり囁く。

『ラディリアス、ボサボサの茶色の髪の男の子いた?』

『えっ?うーん、いたと思います。』

『なんか、変に感じたらまた教えてね。でも、平民だからいじめちゃだめだよ。』

『はい、リーラ先輩!』

《リーラ先輩と秘密嬉しい!》


こうして新しい新入生も入学し、私達は騎士候補生の2年目を迎えたのだ。

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