第10話 過去からの訪問者
僕を中心にして生まれた風が周りの木々を揺らす。
そして敵を見る。
少し離れた場所にボサボサのくすんだ金髪でボロボロで汚れた服を着た熊のような大男が立っていた。間合いを取り、相手の出方をみる。
男は、僕をじっと見つめている。そして驚いた顔をして、少しずつ近づいてくる。
「まさか聖剣様…銀髪、青色の目…。リーリラ様でいらっしゃいますか?
ダリルでございます。小さかったから覚えていらっしゃるかわかりませんが?」
『ダリルは、敵ではない。安心しろ。』
剣から言われ、少しほっとする。
「もしかして、リーリラ様もこの時代を飛ばされました?ダリル、1人寂しゅうございました…ようやく、知り合いに会えるとは…うっ、うっ、うう。」
えっ、なんか汚いおじさん泣いてるんだけど…
『よくわからんが300年前の世界からこちらに飛ばされたようだ。近頃あいつの気がすると思ってたが…
300年後に飛ばされたとは。誰の仕業やら…。あいつは、大丈夫だ。リーリラの姉のリンダの番だ。』
えっ?300年前きた?マジ??
僕のご先祖様のリーリラ様は、300年前の人なの?!
『あっそうだ!番ってなに…?』
『番…とは、夫だ。』
『あ〜。』
「おじさん、僕、リーリラじゃない。名前は…リーラ…エステール?、リーリラさんの子孫じゃないかな?多分。」
「エステール?エステール!アレクの子供か?」
「違う。アレクは、祖父です。」
「バーバラの子か??」
「お母様を知ってるんですか?」
「あぁ。知ってるさ。こっちの時代に飛ばされた時にアレク達に世話になったんだ。そう言えばバーバラに似てるな。バーバラは、元気か?」
「……僕を産んで死んだそうです。」
「えっ??嘘だろ…父親は?」
「……リヴァリオン国王?髪が銀で目がこんなんだからいらないと言われたみたい?」
「はぁ??えっー。17年前からこの国おかしいと思ってたが…国王、クズだな。アレクとロリーは?」
「…うっ、うっ、うぅ〜、わぁーん。」
僕は、おじい様とおばあ様に会えない悲しみが押し寄せ泣いた。
「どうした?!」
おじさん、よしよしと僕を慰めてくれた。僕は、泣き止んで今まであった事を話した。おじさんは、うーんと考えこみ、
「つまり、あのゾーンが攻めてきたのか。その前に君だけ逃されたのか…」
「聞いていいか?君の真名は、リーラ・リヴァリオン・ラクラインで間違いないか。」
僕は、うんと頷いた。そうすると、ちょと待っててと小屋らしき所へ走って行くと、大剣を持って帰ってきた。
そして、僕の前に跪き剣を横にして
「私、ダリル・ハントンは、あなたを守り、忠誠をこの剣にかけて誓います。」
『ふっ。誓いを受けてやれ。』
「……えーっ。なんかわからないけど重いんですけど…忠誠いらない…」
「「……」」
『あはははー。これは、面白い。』
「そんなおもしろいかな?
別に誰かに守ってもらおうなんて今まで考えてなかったし、それに僕は、強くなる為に騎士学校に入っている。だから守ってもらう必要はない!!。」
「…リーラ姫、騎士学校って?」
「ノーザンランドの騎士学校だよ。」
「どうやって入ったんですか?ノーザンランドでは、女性騎士がいるんですか?」
「えっ、入学試験受けて合格して入ったよ。女性騎士…かなり少ない。男として入ってる。おじい様から真名は、危険だから偽名で過ごせと言われた。ロン・グリットという友達の名前を使っている。」
「ありえない…今、何歳?」
「13歳。」
「めまいがしてきた…今まで大丈夫だったんですか?もちろん、まさか、学校は男しかいないとか…」
「うん、男ばかりだよ。別にばれてないよ。」
「はぁー。本当に無事でよかった。」
ーアレク、どういう育て方したんだ。
ダリルは、破天荒な姫君に驚愕する。
「どうしてここに来たんですか?」
僕は、登山訓練で突き落とされ、ここまで辿りついた事を話した。
「突き落とされた?!やっぱり騎士学校は、危険だ。
リヴァリオン国にアレク達を探しに来たんじゃないですね。」
僕は、うんと頷いた。
ーリヴァリオン国は、かなり深刻な状況
だろう。アレクが逃すぐらいだ。
2人が生きているかも怪しい。
俺がここに飛ばされたのは、
もしかして、この小さな姫を守る為
なのかもしれない…
愛しき君、そうだろう。
「姫、学校の方が探しているかもしれないから行きましょう。少しお待ちを。」
「ダリルさん、どうするの?」
「姫と一緒に行きます。」
「えっ!」
待っている間、剣が周りに飛んでいる生き物は、精霊で、僕は、加護あると教えてくれた。この泉は、精霊が生まれ、還る場所だそうだ。確かに空気がおいしい。後で聞いたらダリルさんも光だけ見えるらしい。
ダリルさんの小屋にある荷物の準備が済み、僕達は出発した。
精霊達もバイバイと手を振ってくれた。ノーザンランド側に戻る間、ダリルさんの話を聞いた。17年前にこの時代に来て、おじい様に助けてもらい、しばらくは、騎士勤めをしていたが、今のリヴァリオン国の騎士団の在り方に疑問を感じ、すぐに国を出て周りの国を周遊したらしい。2年前にこの泉に辿り着き、自分の人生を伝記として執筆していたそうだ。
確かに攻められた日に山の動物達が騒いでいたそうだ。何か起こったとは感じたが念のためここに居た方がいいと思いこの場に留まっていたそうだ。
精霊は、守らなくて大丈夫なの?と聞いたら、危機を感じたら逃げるだろうから問題ないらしい。
ひとまずノーザンランドに行き、リヴァリオン国についてやおじい様、おばあ様の安否も調べようと話してくれてた。
あと、女の子は、危険が多いので一緒に暮らして守ると言ってくれた。剣のエクストリアもその方がいいと僕の心に話しかけてくれた。剣と話せるなんて物語みたいでかっこいい!2人の味方ができて胸が暖かくなった。
「ダリルさん、その姫、やめてね。僕、ロンだから…」
「…はい。ひとまずわかってます。」
「あっ!そうだ。ダリルさんは、お父さんって事にしようよ!国では、本当のお父さんはダリルさんって噂あったって聞いたよ。」
「はぁ??俺は、アレクより年上だぞ??」
「だから、娘設定だからリーラって呼んでよ。あっ今はロンだ!
よろしくね、父さん!」
「いつのまにか子持ちになった…」
しばらく歩き、合流地点まで戻ってこれた。人が何人かいるのも見えた。
嬉しくなり僕は、思い切り走る。
「おーい!みんなー!」
僕は、生きて仲間のところに戻れた、帰って来れたんだ!!
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