第7話 登山訓練

 騎士候補生1年の最後の訓練がやってきた。サウストップ山登山。

 2組同時に出発できないのでキース先生のクラスが先に出発し、5日後に僕達のクラスが出発する。帝都からサウストップ山までは、丸一日馬車で移動して麓から登山開始だ。山には、何ヶ所か小屋があり休みながら登る。僕がくじで引いた班は、リーダーがルマンド、ルディ、僕、あの赤髪ラディリアスだ。ルマンドがみんなを引っ張ってくれてるからなんとか均衡は、保っている…と思う。



 登山訓練が終了したら夏休みに入るため候補生寮を出る準備をしていると、

「ロン、大丈夫なのか?」

 アデルが心配そうに聞いてきた。

「赤髪、ロンのこと睨んでいるように見えるんだけど…

あいつと一緒の班にならなくて良かったよ。」

 ピーターもオロオロ話す。

 ルディも心配そうに話す。

「ロン、僕がいるから大丈夫だと思うけど一応気をつけろよ。」

 うんと僕は、頷いた。


 出発当日が来た。早朝、学校の門に集まり、僕達は、6人ずつ馬車に乗りこむ。サウストップ山へは馬車の旅だ。キース組は、昨日無事戻ってきたと先生が教えてくれた。先生達は、毎年二回、引率で山に行くらしい。先生達の表情が疲れているように見える。途中休憩を挟みながら、夕方にサウストップ山の登山口に到着した。


「集合!本日は、この山小屋で泊まる。明日の明け方に出発だ。皆班で明日の行程を確認したらすぐに就寝だ。忘れずに荷物の確認をしろ。」

 シャルケ先生がみんなに伝えるとそれぞれの班で集まった。


「私がリーダーのルマンドだ。この班は、私が14歳。皆は、13 歳。無理せずみんなのペースで登ろう。もし体調が悪かったらすぐに声をかけてほしい。明日、明け方から登り始める。

 3000メートル辺りに小屋があるらしい。五ヶ所あるらしく着いた班から1日目を過ごす。特に2日目から大変だ。太陽が登り始める頃から出発し、頂上を目指す。空気が薄くなるから体を慣らすようにゆっくり息をして登ろう。何かあった時先生が小屋に待機しているらしい。簡易食事と防寒具、水筒確認してほしい。じゃあ明日頑張ろう。」

「「頑張ろう」」

「ふん。」

 赤髪は、そう言うと去って行った。

 多分僕が剣大会の時、勝ったから余計に怒らしたんだろうな〜と思うと2人に申し訳ないように思えた。心配そうにしている僕を気づいたルマンドが気にするなと言ってくれた。


 翌朝は、晴天となり登山日和だ。1班から順番に出発する。僕達は、最後の10班だ。互いの健康状態の確認、柔軟体操して、ルマンド、ルディ、ラディリアス、僕の順で進む。森の中は、整備されており、どんどん進む事ができた。泊まっていた山小屋が下の方に小さく見える。休憩を挟みながら進むと、8班が休憩していた。確かロック達がいる班だ。

「大丈夫ですか?」

ルマンドが尋ねると、リーダーは、ロックらしく、

「無理したくないからゆっくり登っているので大丈夫です。」

 と笑っていた。ロックは、仲間達の状況をしっかり判断しているようだ。

 木々がなくなり石が多くなってきた。山の方を見ると、小さい屋根の様なものが見えてきた。

「そろそろあの休憩場所で一夜を過ごそうと思う。みんないけるか?」

 ルマンドが問うと

「助かるよ、もう足がパンパン。」

 ルディが疲れた表情で言った。

「まだ、いけるだろ!!さらに上の小屋にしないと明日がきついだろ!」

 ラディリアスが主張すると、僕とルディは、顔を見合わせた。

「あいつなんだよ!ここで文句言ったらルマンドが可哀想だよなぁ。」

 僕は、こっそりルディに言うと

「仕方ない、上まで頑張るかぁ。」

 ルディは、僕の肩を叩き、

「僕は、大丈夫だから、進んでいいよ。」

 とにこりと笑って言ってくれた。

 ルマンドは、心配そうな表情をしながらわかったと答えた。

 ようやく小屋に到着すると、僕達の他にもう1組いた。お互いの労を労い、今日の話や明日について話し合った。

 水筒に湧水を入れに行こうとするとすっかり夜になっていた。ルマンドが一緒に行くと声をかけてくれた。

「ルマンド、見てよ。綺麗な星空だ。」

「本当だ。こんな綺麗な星空久々だ。」

「ルマンドの故郷は、星がきれいなの?

「星も綺麗だけどもっとすごいものが見えるんだ。」

「何?」

「夜、空にね、光のカーテンが見えるんだよ。」

「光のカーテン??綺麗そうだな。見てみたいよ。」

「あぁ、いつか我が領においでよ。

 ロン、

 ラディリアス…大丈夫?無理してないか。」

「そうだな、しんどいとは、思うけど輪を乱さず行くことがこの訓練の意味だと思うんだ。僕はわかっているから大丈夫だよ。ルマンドは、大丈夫?」

「あぁ、リーダーって大変だよ。」

 僕達は笑い合った。

 夜になると思った以上寒く、持参してたブランケットで身を包み、皆で集まり暖を得て休んだ。

 夜が明け太陽が登り始めた。

「ここから、険しくなる。鎖を伝いながら登る箇所もあるから手袋を準備して。空気も薄くなるから先輩達の過去の資料をみたらゆっくり息をしてゆっくり歩く方がいいらしい。無理せずゆっくり行くよ。」

ルマンドが皆を見ながら話すと、ラディリアスはプイと顔を背けた。



 やはり、標高が高いと息が切れる、深呼吸、深呼吸。

 ルディが突然、頭痛と吐き気がするといい出した。高山病だ。

「チッ、これだから平民は!」

「ラディリアス、言葉が過ぎるぞ。僕達は、仲間だ。輪を乱すな!」

 ルマンドが注意するとラディリアスは、悔しそうに顔をプイと向けた。

「ルディ、大丈夫?深呼吸して、吐いて。」

僕は、さりげなく彼の背中をさすりながら不思議な力を使う。

「あれっ?深呼吸したら楽になったよ!行けるよ!」

 彼は、あははと笑いながら出発する。しまった、やりすぎたかも…

 

 ようやく昼すぎだろうか、鎖を伝いながら登り詰め、頂上に着いた。南側は結構絶壁だ。

ーあっちは、僕の国……。

 おじい様、おばあ様、

 元気に過ごしてますか…

 僕は、祖国側を眺めた。


「さぁ、折り返し地点だ、頑張ろう。」

 ルマンドが声を掛け、ルディがやったーと後を追った。そして、ラディリアスと僕が歩き出すと、ラディリアスが

 僕に言った。

「おい、俺の手袋を踏むなよ。拾えよ。」

「えっ?どこ?」

 その瞬間、雲が山にぶつかり、視界が見えなくなる。


 どすん。


「えっ?? あー!!」

 僕は、崖から突き落とされたようだ。

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