第6話 剣大会

 アレクシス陛下の崩御の知らせから季節も変わり夏になった。僕も13歳になった。

 剣大会と登山訓練が終わると長い夏休みに入る。

「剣大会は、一年候補生は、午前。午後は、二年候補生となる。一年は、木刀、二年は、真剣だ。一年の剣大会が終われば解散。午後は、自由見学だ。」

シャルケ先生が説明する。

「先生〜真剣での試合は、怪我したら危ないんじゃあ?」

ピーターがビクビクしながら尋ねると、

「刃引きしてるから問題ないないが防具は、着用するぞー、君達もだ。怪我したら登山訓練できないからな。

 さて、登山訓練についてだ。南にあるサウストップ山に登るのが一年の恒例だ。高さ4000メートル。整備はされているが頂上付近は、鎖を伝いながら登る箇所がある。4人1組で班を作り登る。登らないという選択肢ない。3日間かけて相談しながら登るんだ。天候、あと山の上は、空気が薄いから高山病にもなる。どうすれば仲間と下山できるかを考えるんだ。過去の先輩候補生の報告書もある。参考に見た方がいい。4人組の班をくじで決める。年齢が上の者は、リーダーとなる。じゃあ、くじ引くぞー。」

 僕は、ワクワクしながらくじを引く。しかし、このメンバーで登山することで大変な事件が起こるとは思わなかった。




      剣大会当日

 

今日は、剣大会開催日。天気は、晴天なり。

 訓練場には、剣大会を見ようと多くの騎士が訪れていた。あまりの多さに少し緊張する。シャルケ先生がしっかり柔軟体操をするように言った。

 試合は、トーナメント方式。訓練場に幾つかのスペースを作り試合を行う。始めは、隣のクラスの子と当たる。木刀で打ち合い、相手が剣を落としたり、身体の一部が地面についたら勝利だ。剣大会なので体術を使うのは反則となる。勝つ秘訣は、打撃力そのものだろう。

「楽に行こうぜ〜。午後一緒に見学するだろう?」

アデルか声をかけてきた。

「見る!見る!お互い頑張ろ〜。」

僕は、アデルのおかげでリラックスできた。



 僕は、呼ばれて試合会場に入る。

 周りに歓声が上がる。

 隣のクラスの子は、すごく緊張している。手が震えてる。これは、利用しない手はない。右手を上に木刀を握っているから右利きだろう。左手が全く力入っていないように見える。

「一回戦開始!」

構えの振りをして、すぐさま男の子の左に周りこみ、思い切り下から剣を打つ。

「はぁー!!」

「うわぁ〜。」

カラーン。

「勝者、シャルケ組ロン!」

ヨシ!とガッツポーズをした。

「「「うわぁー!」」」

同時に他の試合会場でも歓声が湧く。


遠くの方でルマンドが試合を始めるようだ。また再び歓声が聞こえる。勝ったようだ。僕と対戦できるかな?とワクワクしていると、

「勝者組の第二戦を行う。呼ばれたら前にでろ。シャルケ組ロン、シャルケ組ラディリアス。前へ。」

「「はい。」」

あのヒョロ赤髪だ。

あちらもこちらを睨み挑発してきた。

「銀髪め。痛めにあわせてやる!」

「果たして出来るかな!」


 赤髪、ここは、勝たせてもらう。あちらは、思い切り剣を振ってくるだろう。

「二回戦開始!」

「はぁー!」

赤髪は、剣を振る。素早くよける。また大きく振る。横に素早くよける。また大きく振る。素早くよける。

「逃げるな!」

大きく振りかざした瞬間、赤髪の身体がよろけた、その瞬間、よろけた右側に追い討ちをかけるように思い切り打ち込む。

「たぁー!」

「あっ。」どてっ。赤髪のひじが地面につき、そのまま倒れこんだ。

「勝者!ロン!」

「「「うわぁ〜!!」」」


「やったね!!」僕は、再びガッツポーズを決めた。



「甥っ子ちゃん、負けましたね。」

ビルは、ラモントに声をかける。

「ダメだ、ありゃ。全く動きを見てないわ。」

「銀鼠、なかなかやるな。」

「おや、陛下が褒めるなんて珍しい。」

ビルは、クリストファーを物珍しいそうに見る。

「ふっ。なかなか見てて面白いからな。さぁ、我が従兄弟でも見学にいくか。」



「勝者第三回戦を行う。

シャルケ組ロン、同じシャルケ組ロック前に出ろ。

第三回戦開始!」


次は、ロックだ。いつも鍛錬の相手をしてもらっているが、最近、ますます身体が大きくなっている。1番の強敵だ。

「第三回戦開始!」

ロックが打つ!打け止める。すかさず隙を見て打つがロックも受け止める。

お互いにゃりと笑う。お互いの打ち合いが続く。隙を見せたら負けだ。

「おりゃー!」

「うっ。」

ロックが斜め角度から思い切り打ち込む。受け止める力に限界がきている。剣握っている手が緩んでしまった。その隙をロックは見逃さなかった。

「とりゃぁー。」

カラン。僕は、木刀を落とした。

「今回は、俺の勝ち。」

「はぁ、次は、勝つからな!」

僕達は、握手した。

「勝者、シャルケ組ロック!」

歓声が湧き起こった。



「最終決勝線に進めるのは、3名。勝ち数が多い者が優勝だ。

シャルケ組ルマンド。キース組ベンジャミン、シャルケ組ロックだ。」


この最終決勝には、他の隊長クラスらしき人が多く集まっていた。

最終的にはルマンドが全勝で優勝。ベンジャミンが一勝で2位、ロックは、一勝も出来なかったので三位となった。

「さすが黒獅子の血を引く一族ですな、

 陛下。」

ハルク総隊長は、声をかけた。

「あぁ、叔父上もお喜びになるだろう。」


「「「おめでとうー!!」」」

「ルマンド、強かったね!僕も次、頑張ろう。優勝者は何もらえるの?」

「ん?あぁ、金のカフスボタンみたいかな。」

「わぁ、獅子のマークが入ってる」


ーこれ、売ったらお金になるな。来年絶対獲る!

 僕は、カフスをジーッと見つめ決意した。


 午後から候補生2年目の試合に入る。

こちらの観客は、午前に比べて圧倒的に多い。やはり、真剣の音がいい。

「おまえ、真剣は、いいな〜とか思っていただろう。」

アデルがにやりと笑いながら言う。

「自分だって思ってる癖に、でも、試合惜しかったね。もう少しで決勝戦進めたのに。」

「いやぁ、ベンジャミン?強いわ。」

「2人は大丈夫なの?僕は、真剣怖い。来年すぐ負けよう。」ピーターがそう言うと、

「確かに楽しい夏休み過ごしたいからね、一回戦負けでいくよ。」ルディが笑う。

「えー!僕は、頑張るから!」

みんなが一斉に僕を見ると、

「あの、カフスがほしいだろ〜。売って金にしてやるって顔してだぞ。」

みんな、うん、うんと頷く。

「まぁ、来年優勝できたら僕の店で買い取ってあげるから。」

ルディが仕方なしそうに言うと、

「よろしくね!!」


4人は、知らないようだが、皇室が贈呈したものは、売ってはいけないのだ。


「「「おーっ!!!」」」

大きな歓声が上がった。

最終戦が終わったようだ。

優勝者は、水をかけられていた平民出身のデニスさんだ。あの赤髪兄を倒したようだ。2人は、握手を交わしている。

僕達は、2人が笑い合い握手をしている姿をみてわだかまりがなくなった事になんだか嬉しくなった。

そう考えたると、デニスさんが走ってきた。

「ローン!」

「この度は、優勝おめでとうございます。」

「ありがとう!はい、これを君に。

君にあげようと思って頑張ったんだ。」

彼は、金のカフスを出した。

「俺、あの時、騎士を辞めようと思ったんだ。平民と貴族の壁がすごいだろう。1年目からずっと苦しくて、頑張っていた仲間も辞めたから俺ももう限界かと思ってたんだ。でも二つも年下の君に助けられて、あの時、君の透き通った偽りのない瞳に見つめられ、逃げてはいけないと思ったんだ。だから、ここまで頑張ってこれたのは、君のおかげで、この優勝は、君に捧げたいからカフス受け取ってほしい。」

「えっ?!本当にいいんですか?ありがとうございます。ありがたく頂きます」

「俺、4番隊の入隊が決まったんだ、ロンも4番隊希望だろ?来年待ってるからな!」

「はい!」

僕達は、しっかり握手した。



3人は、ロンに無言の圧力を与える。

『『『絶対売ったらダメだからな!』』』


「………。」


「ローン!今日は、お疲れ様。」

「ルマンドー。先輩達の試合も良かったねー。」

「ロン、これ君にあげるよ。さっきこのカフスに見惚れていただろう。」

金のカフスボタンが差し出された。


三人は思うルマンドおまえもかと…。


「私は、今まで人と関わる事の重要性をあまり感じてなかったんだ。君と出会えて私の失っていた何かを君が気づかせてくれたんだ。だから、君に誇れる友人として今日も頑張ったんだ。受け取ってくれるだろう?」

なんだか受け取らないといけないような圧力を感じる…

「ありがとう…大切にするよ。」

「私の家には、カフスたくさんあるからね。気にしないで。

 じゃあ、お疲れ様ー。」

ルマンドが軽やかに去って行った。


僕は、後ろから三人からの視線を感じた。

「わかってるよ、売らないよ!!!」


そして剣大会は、無事終了し、僕達は、登山訓練を迎えたのだ。


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