第2話 シャワー室の訪問者

 今日は、大変な一日だったなぁ。僕は、日課のシャワー室をブラシでゴシゴシする。冬は、足が、冷たいよ。

 僕がなぜシャワー室を掃除してるかって?ご存知の通り、僕は、ロンで男だからだ。ロンと偽ったまま騎士学校に入ってしまったからね。掃除中は、鍵を閉めることができるから女であることがばれないようその間に入浴している。誰も掃除なんてしたがらないからよかったよ。

 女である事がばれたらやっぱり退団だよね。はぁー。シャワー室にため息が響く。

 女性騎士がいるっておじい様、言ってたじゃないか…今回の入学者に女性はいない。確かに何人か女性騎士はいるらしい。女であることをキャサリン隊長に早く相談したい。


 また、ため息が…はぁー。


トン、トン。扉が叩く音がした。

 

ドキっ。


もしかして赤髪の報復か!ブラシを構え戦闘態勢に入る。

ガラガラと扉を開けると、僕の髪より暗めの灰色髪の少年が立っていた。


「あっ…今清掃中です。使用出来ません。」

「わかってる、手伝いにきた。」

彼は、靴を脱ぎ、ブラシを奪い床を磨き始めた。


彼の名は…なんだっけ、そうそう、

ルマンド・フォールド、13歳。

帝都の北のノース山脈を越えるとフォールド公爵領がある。フォールド公爵の第1子と、ルディが以前教えてくれた。北に住んでいる人達は、僕と同じ色素が薄い髪の色が多いらしい。髪と同じ色の瞳が寂しそう、笑っている所を見たことがない無表情少年だ。

 この子もよく見ると靄が出ているようだ。


「ありがとう〜でも、僕好きでやってるからいいよ。貴族様にやらす訳には…」

彼は、真面目な顔をして僕を見た。

「それ、貴族だからって…いけないと思う。平民だろうと貴族だろうと同じ騎士だろう?」


「うーん?」

僕は、何が言いたいのかわからないので首をかしげるた。


「さっき、君すごいね。私は、ラファエルとラディリアスを止めれなかった。誰か大人に任せればいいと思って先生を呼びにいかせたんだ。実は、あの時迷惑をかける平民が悪いんじゃないかと思ったんた。

 しかし、ラファエルの行いは、気持ち良いものではなかったから止める人を探しに行ったんた。」

あの時、誰かを呼びに行ってくれたのは彼だったのか。

「ありがとう、助かったよ。実は、怖かったから。」

彼は、ううんと首を振り、

「今まで、貴族と平民の壁がある事に気づいていたが、壊すなんて必要ないと思っていた。

 君、言ったよね、実戦なら死んでるって。私は、自分さえよければいいと思っていたんだ。自分さえ強かったら問題ないって。けど仲違いした同士で敵に向かっても勝てないね。こんな簡単な事、私も貴族の候補生達も気づかなかった。

 いつも父にお前には足りないものが有ると言われ…ずっと何かわからなかった。

 今日、君の話を聞いてわかったんだ。自分が恥ずかしくなったよ。

今日は、勇気を出してくれてありがとう。」

僕は、お礼を言われ恥ずかしくなった。


彼は、僕をじっと見つめ、

「君は、北の出身か?」

「あー、そんな所だよ。」

「どこなんだ?」

ちっ、めんどくさくて適当に言うんじゃなかった。

「うそ、うそ、リヴァリオンって国。」

「あの侵略された…すまない」

「大丈夫〜気にしないで。足冷たいだろう。さっさと終わらせよう。」

「あぁ。」

僕達は、黙々と掃除を終わらせた。



「いつも、掃除してくれたんだよね。ありがとう。」

「大丈夫〜風呂掃除好きなんだ。リヴァリオン国って温泉あるからなっ。」

「もう少し、話さないか?」

「えっ?いいよ。」

「私は、ルマンド・フォールド」

「僕は、ロン・グリット」

よろしくとお互い冷たい手で握手した。


 食堂のおばさんが掃除のご褒美にホットミルクをくれた。僕達は、食堂に座りながら互いの住んでいた場所の話をした。すると、今まで話さなかった貴族の子が何人かやってきてたくさん話すことができた。

 今日、僕が勇気を出してしたことは、いいことだったのかなぁと思えたのだ。

 

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