第7話 昔の母
「起きて、休憩よ。」
ベラが起こしてくれた。
「う、うん、ありがとう。」
結構寝ていたかもしれない。頭がすっきりした。
僕は、馬車を降りてうーんと背伸びして、すぐに王女の馬車に並ぶ。
再び藍色短髪の騎士の男性がやってきて、ローズをエスコートして建物の中に入って行くのを確認して、チリルさんが、
「ここでお昼よ。簡単な食事がもらえるから行くわよ。食事を取ったらすぐ出発よ。」
案内された場所は、ノーザンランドの騎士達も食事を取っていた。
「無事戻れて良かったなぁ〜。」
何人かの騎士達に1人の騎士が肩をバシバシ叩かれている。よく見るとリヴァリオン国にいた騎士なんじゃないか??今気づいた!
「いやぁ、いつゾーンが来るかと思うと結構スリルありましたよ〜」
「帰ったら休暇!休暇。」
と喜びあっていた。ノーザンランドの密偵だったのか…さすがでかい国だけある。僕は、騎士の姿を見てカッコいい!と思った。
僕は、食事を終えて、すぐに馬車に戻った。何人かの騎士はすでに待機していた。皆黒服の立襟を開き、白シャツを見せているアクセントのある金色のボタンは、獅子のデザインだ。袖に金色の線が1本の人、3本の人、色々いる。
僕がジーッと見ていると
「坊や、どうしたのかな?」
横を見ると騎士が立っていた。
黒色のリボンで長いオレンジ色の髪をを後ろに高く縛り、目は、キリリとし細く、瞳は、琥珀色で顔立ちが綺麗な人が顔の近くに来たからびっくりした。
「女性騎士…」
「ふふ。女性が騎士してたら変?」
「い、いえ、綺麗でカッコよくて見惚れてました。」
「あら〜っ。小さな子なのに、私を口説くなんて、将来有望ね。」
「えー、隊長を口説いたの?ありえねぇー、
ぐはっ!隊長!蹴りいれるなんでひどい!」
「はぁ〜、誰がありえないって言った〜もう一発いれるぞ!」
「はっ、申し訳ありません!」
「カッコいい〜」
「「どこが?!」」
周りにいた若い騎士達がツッコミをいれる。
「あ〜なんて見所ある少年!
手を見せてごらん。」
僕の手を見た隊長さんは、
「頑張ってるのね、名前は?」
「えっ…ロン…です。」
ー偽名を名乗らないといけないよね。
「ふふふ。私、キャサリン。騎士学校募集してるから挑戦しなさいな。難民枠あるから有利よ。じゃあね。」
キャサリン隊長は、僕の頬にキスをして去って行った。
僕は、真っ赤になってしまった。
「うわー。下僕枠決定だね。」
「下僕って何?」
「ばか!でかい声だすなよ!聞こえたら蹴りいれられるだろうが!
おじさんは、ネイルと言います。騎士なりたいの??」
「うん!!」
「まぁ、なるなら頑張れよ。めちゃくちゃしんどいけど…」
ネイルさん目が死んでるよ〜
「出発ー。」
号令がかけられて、僕は、失礼しますと頭を下げ急いで馬車に乗る。
「早く戻らず、すみません。」
「いいのよ、騎士様達と仲良くなったわね。朝は、よく寝てたから出来なかったけど、みんなの自己紹介しておくわね。私は、チリルよ。娘のベラ。ベラとは、知り合いかしら?」
「はい、町の駄菓子屋さんでよく会ってました。」
「そうなの〜。私は、姫様付きの侍女で、もう1人は、ジャスミンと言うの。今ジャスミンは、姫様に付いてるわ。ジャスミンの娘のケイトとケリーよ。ジャスミンと私の夫は、騎士でね。馬車の御者の横に座っているわ。」
「僕、ラリーだけど、ロンと名乗れと言われてます。よろしくお願いします。」
「「「よろしくね。」」」
「名前、ロンで通した方がいいわ。
みんなも呼び方気をつけてね。」
「みなさんは、偽名では、ないのですか?」
「そうよ。でも、あなたは、駄目よ。
私ね、あなたのお母さんの友達だったのよ、歳が離れてたから妹みたいなものかなぁ。」
「えっ!」
「だからあなたの本当の名前も知ってるわ。」
「そうなんですか…」
「そうね、バーバラとは、よく遊んだわ。お花の冠とか作るのがうまいのよ。刺繍もね、なかなかいい腕持ってだなぁー。あとね、私の作る焼き菓子が好きで、作り方も教えてあげたわよ。
確か、私が15歳、バーバラが12歳ぐらいの時だったかしらバーバラの家に居候の騎士さんが来てね、金色の髪ふさふさで獅子みたいな男前よ〜、バーバラと私の初恋よ。
恋話で盛り上がったわ〜」
「お母様、お父様が聞いたら泣くわよ。」ベラが呆れている。
「あらっ。ごめんなさい。
騎士さんが居なくなって、デビュタント迎える前に側室に召されてしまって。だからバーバラとゆっくり話す事も出来ずに別れてしまって…
あなた…バーバラにそっくりね…
ごめんなさいね、気にはかけてだけど自分の生活もあって忙しくてね。
こんな事話してはいけないけど、あなたは、あの騎士さんとの子じゃないかとも話してたのよ。あっ、ごめんなさい。」
「いえ、正直あの方が本当の父とは、思いたくありません。その騎士さんは、今どこに?名前は?」
「今は、どこにいるかは知らないわ。
騎士生活が合わないとか話してたらしいわ。名前…うーん、思い出せない。
…あっ、ダリルさん!ダリルさんよ。」
「ダリル…」
窓を見ていたベルが声を上げた。
「見て。見て!遠くに建物が沢山見えて来た。」
窓を見ると山の麓に沢山の建物があるのが見えてきた。
「あれが帝都じゃない?ここは、高度が高いから見下ろす様に見えるのよ。でもまだまだよ。今はまだマウンテンプレイス領内よ。まだかかると聞いたわ。」
窓の景色をベラと見ていたら、
「母様が無神経な話してごめんね、話長いでしょう。しゃべりだしたら止まらないのよ。」
「大丈夫。面白い話聞けたから。」
チリルさん、他の子達を見るとみなさん寝ているようだ。疲れているんだろ。
ダリルさんか…どんな人だったんだろうな…僕も思いながら眠気に勝てず目を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます